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sangwoo社長の息抜きダイアリー

引き続き、黄砂の話題

2006-04-09 | おきらく
今朝の日経新聞「読書」の紙面(書評)より、抜粋。

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『黄砂 その謎を追う』

 春になると日本に到来する黄砂。車や洗濯物が汚れる、と迷惑扱いされるが、黄砂研究の第一人者による本書は、悠久なる地球史における黄砂の役割を教えてくれる。黄砂は「謎」多き物体で、研究も途上にあるが、現段階での成果はまとまっている。

 黄砂は中国のタクラマカン砂漠、ゴビ砂漠などの砂が偏西風に乗り、中国大陸、朝鮮半島を経て日本上空を通過する。著者は、中国や韓国では黄砂は黄色い砂という認識ではなく危険なもの、とまず説く。激烈な状態では砂嵐を呈し、家屋の倒壊や死者すら出す。しかしながら、黄砂の恵みは大きい。それが黄砂の役割となる。

 黄砂は偏西風に乗って東に移動する。その間に重力で次々と落下するが、日本上空を通過した後は太平洋も渡る。発生地の砂漠で採集された黄砂と、日本で採集された黄砂の粒子組成は同じではない。空中で黄砂は、温暖化の原因となる二酸化硫黄や酸性雨の原因となる硫酸(空中では亜硫酸ガス)、硝酸(同、亜硝酸ガス)と化学変化を起こす。

 黄砂はアルカリ性物質である炭酸カルシウムの成分を含み、前述の酸性物質を中和する。黄砂は有史以来、温暖化防止の一助を果たし、酸性雨の抑制に貢献してきたのはまず間違いない、と著者はじめ世界の黄砂の研究者らは考えている。黄砂の通り道は雨の酸性の程度が予想以上に低い、という事実もある。中国、韓国の工場地帯(亜硫酸ガスが排出されている)の上空を黄砂が通過していることは、この点でも興味深い。国内外で空中の黄砂を採集、精査してきた経験も本書で語る著者は「黄砂は空飛ぶ化学工場」と命名した。

 さらに、米国の学者により、太平洋のど真ん中に落ちた黄砂がプランクトンの餌となり、好漁場となっていることも紹介される。プランクトンの成長には炭素が不可欠。プランクトンは黄砂を食べ、炭酸カルシウム成分から炭素を補給する。黄砂が上空を通過する海域はプランクトンの好発生域、とも著者は語る。魚を重要な蛋白源としてきた日本人にとって黄砂は恩人か。自然は実によくできている。
(ノンフィクション作家 小林照幸)
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