70の瞳

笑いあり涙あり、36人の子どもたちが生活する児童養護施設「さんあい」の出来事や子どもと職員の声をお聞きください。

高価で尊い

2018-09-03 01:00:00 | 愛すべき子どもたち

偉大な心理学者アドラーは、人は他の人へ貢献することによってのみ真の幸福感を得られると言っている。そしてその貢献は行動を通してだけでなく、その人の存在そのもののが人を幸せにしていることを認め合うことだという。哲学者の三木清は、「幸福とは鳥が何の意識もなくさえずり、それを聴いた人が幸福感を感じるようなものだ。」と記している。 ここで大切なのは、さえずる鳥が幸福であって聴いた人ではない。つまり鳥のように意識せず、その鳥の自然体(存在そのもの)が幸福を与えている状態が真の幸福だと言っているのだ。

さんあいでは、子どもの泣き笑いが毎日の生活で繰り返させられる。それは子どもにとって存在そのものだ。泣かれれば大変だが、笑顔で無邪気に遊ぶ姿に癒され、職員に幸福感を与えてくれる。

俯瞰的に考えれば、子どもの泣き笑いのない地域社会はなんとも暗く、将来の不安を思わずにはいられない。少子高齢化の今の日本全体はまさにこの状態だのだと思う。泣いてもいい、周りに迷惑と思われてもいい、子どもの存在そのものが必要だし貢献しているのだ。

では高齢者は、障碍者は? 子どもと同じに存在そのものが貢献しているのだ。生きている人たちは、誰かにその存在で貢献している。さらに突き詰めれば、すべての人は神により命を与えられ、高価で尊いものとされた。神自身がすべての人の存在を喜んでおられる。

肝心なのは、自分自身を含めてすべての人は高価で尊いと認め合うことではないか。

中庭に暫く立っていると、今日も子どもたちの泣き笑いが部屋から聞こえてくる。

 

 


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