虐待による痛ましい事件がまた起こってしまった。児童相談所間の連携と情報共有の不備、学校間の連携と情報共有、様々ことが検証されている。その中で大きな批判の矛先を向けられているのが、父親からの虐待を訴えた児童のアンケートのコピーを渡してしまった市の教育委員会の対応である。
勿論、ありえない行為であり、単なるミスでは済まされない事案だ。しかし児童の死を無駄にしないために、冷静になって児童養護施設の現場から批判されている当事者目線で考えてみたい。児童養護施設は保護者に居ない児童 虐待を受けている児童その他環境上保護を要する児童を入所させて、これを擁護し、、、、と児童福祉法41条に規定されている。施設は寄る辺のない児童に安心安全を提供し養育する場である。
さて今回のケースのように、さんあい職員が子どもが記した親の虐待に関するアンケートを出せと親から何度も恫喝されたらどうだろうか? 職員は恐怖を感じるだろう、そしてそれは人によっては極限状態までになってしまうかもしれない。では書類を出すのも止む無しと行動するのか?絶対にそのようなことはあり得ない。それは子どもの安心安全を守るプロ組織としてあり得ない。一方で最前線に立つ職員と組織の極限状況も冷静になって考えなければならない。
それらを考えたときに、このようなケースはさんあいでは警察への通報という選択肢を取るだろう。相手を恫喝する行為は、脅迫罪の疑いもあり警察への相談事項だからだ。我々児童福祉の現場に立つものはプロとは言え恫喝や脅迫の対応は専門外だ、頑張る必要はない。いやむしろ対応できないケースは専門機関、この場合は警察と連携して子どもの安心安全をまもるべきだ。
一方で、すべてのケースで警察と連携あるいは情報共有すべきというご意見もあるが児童の個人情報やその他の理由から行き過ぎていると考える。そこでさんあいでは、新年から具体的にどのようなケースの時に警察に通報し助けを求めるかというガイドラインを設けて運用している。今回の野田市のケースから学び、ガイドラインに加筆・修正する予定である。
地味な作業と日常への運用であるが、児童福祉と関わる様々な現場が一つ一つの悲しい出来事を我が事として受け止め、二度とこのようなことが起こらないように行動することが天に召された幼い命に敬意を払う事だと信じている。

昨年の夏休み前に、深谷警察と連携して行った子どもたちのための防犯講習会。