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腸内細菌で病気をなおす 細菌カクテルの治療薬を開発へ

2021-08-26 08:30:00 | 日記

下記の記事は朝日新聞Reライフからの借用(コピー)です

腸内細菌で病気をなおす。そんな試みがいま、活発になってきています。健康なひとの腸内細菌を丸ごと移植したり、不足した細菌群を薬の候補として研究したり。腸内細菌が「原因」で起きた病気なら、腸内細菌を変えれば病気はなおせるはず。新たな模索が始まっています。
肥満、アレルギー、うつ・不安障害とも関わり
 2000年代半ばから始まった腸内細菌のゲノム解析で、私たちは、一人ひとりの腸内細菌の菌種や構成を簡単に調べられるようになりました。
 この技術を活用して始まったのが、病気や健康と腸内細菌の関係を解き明かすこと。健康な人と病気の人で、菌の種類や構成はどう違うのか。年齢による変化はなにか。欧州で2008年に始まった腸内細菌研究の大規模プロジェクトが病気・健康との関わりをテーマにしたこともあり、比較研究が広範囲で行われ、様々な病気との関わりが調べられてきました。
 関連が示唆された病気は、多岐にわたります。大腸がんや炎症性の腸疾患など、腸にまつわる病気は、イメージしやすいのですが、肥満や糖尿病、脂肪肝・肝がん、動脈硬化症など、エネルギー代謝関連でも、関連を指摘された病気が少なくありません。
 また、アレルギーや自己免疫疾患といった免疫に関係する病気や、多発性硬化症、うつ・不安障害、アルツハイマー病など神経・精神疾患なども腸内細菌の関わりが指摘されています。
 大枠としていえるのは、病気のひとの腸内細菌は、健康なら約1千種いるといわれる細菌の種類が減少し、腸内フローラとしての多様性が失われてしまっていること。(1)うつ病の患者ではビフィズス菌の割合が減少している(2)炎症性腸疾患(IBD)の患者はファーミキューテス門の細菌の割合が少なくバクテロイデス門が多いといった報告など、病気の種類ごとに、どんな変化が腸内細菌に起きているかもわかってきました。 
細菌が病気の「原因」、マウス実験で確認
 ゲノム解析による腸内細菌研究に当初からかかわる東京大学名誉教授の服部正平さんによると、研究を加速する原動力のひとつとなったのは、米ワシントン大学(セントルイス)のジェフリー・ゴードン博士らの研究チームが、肥満と腸内細菌の関わりを無菌マウスで実験し、腸内細菌が肥満を起こす「原因」であることを突き止めたことでした。
 それまでは、病気の人の腸内細菌が健康な人と異なることはわかっても、それが病気の結果なのか、その逆に病気を起こす原因なのか、はっきりとはしませんでした。「ゴードン博士の実験で、腸内細菌は原因という証拠が示され、研究者の目の色が変わりました」と服部さん。病気の原因なのだとしたら、原因である腸内細菌を変えれば、病気をなおすことができる。そんな機運が高まったといいます。
 腸内フローラのゲノム解析が始まって10年余、健康な人の腸内細菌を丸ごと移植する治療法はすでに開発・実用化されています。ここにきて欧米のバイオベンチャー企業や製薬会社の間で盛んになっているのが、病気をなおすのに不可欠な細菌群(細菌カクテル)を効率よく選びだし、治療薬とする試みです。欧米では、炎症性の腸の疾患などを治療する薬として、臨床試験(治験)を行っている候補がでてきています。
 腸内細菌を治療薬にするためには、腸内細菌の遺伝子を調べるゲノム解析の技術だけでなく、どういった細菌群がチームを組み、実際にどんな役目を果たしているかを解き明かすことも必要です。細菌チームが生み出す物質はどんなものかや、宿主である人体とのやりとりはどんな仕組みなのか。そうした点を含めて調べあげ、そこから最も効率的な細菌群の組み合わせを探っていきます。
 「このへん、実は、日本が強い分野です。大規模プロジェクトでは後れをとってきたけれど、ここでは存在感を示せるのではないか」と服部さんは指摘します。実際、欧米の製薬企業が治験を進める細菌カクテルのなかには、服部さんも加わった研究チームで発見した17菌種の細菌カクテルも含まれています。
日本の主要テーマ、糖尿病と認知症
 腸内細菌のゲノム解析が始まってから、国による大型プロジェクトがなかった日本では、各研究機関が個別で実施してきた研究データを結びつけ、ビッグデータとして使えるようにする基盤事業が本格化したところです。
 主要テーマとして挙がるのが、糖尿病関連と認知症に関するデータ蓄積や分析手法の開発です。糖尿病に関連しそうな生活習慣や食生活、生活環境などを腸内細菌のデータとともに収集し、ビッグデータ化。生活習慣から糖尿病のリスクを判定したり、糖尿病の予防効果のある腸内細菌関係の産生物質をさぐったりする人工知能(AI)の開発を進めます。
 認知症の分野では、早期発見につながる生体的な指標(バイオマーカー)はなにかを探ったり、予防食品の開発などをサポートしたりしていく予定です。服部さんのチームは、この認知症分野の研究開発に加わっています。「高齢化社会ですから、なるべく元気に長生きしたい。その意味で、高齢者の日本人の細菌叢(そう)の解析をやっています」と服部さん。「腸内細菌をからめて、認知症を抑えたり、改善させたりすることは、可能じゃないかなと思っています。腸内細菌のなかに、関連する細菌群が間違いなくあるはずです」
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【メモ】肥満と腸内細菌との関わりのマウス実験
 やせ形と肥満型、体形が異なる一卵性双生児の人間の双子姉妹から腸内細菌をそれぞれ採取。それを無菌状態のマウスに移植し、同じエサ、同じ運動量で、どんな変化が起きるかを調べました。すると、やせた子の腸内細菌を与えたマウスは、1カ月ほどたっても体脂肪が増えなかったのに対し、肥満の子の腸内細菌を与えたマウスは、体脂肪が2割増加しました。腸内細菌が「原因」で肥満が起きたわけです。
 さらに、この2グループのマウスを同じケージに移し、互いのフンが食べられる状態にすると、今度はやせ形腸内細菌マウスの体重は変わらず、肥満マウスがやせ形腸内細菌マウスの体形に変化する一方向の結果になりました。腸内細菌は「薬」として使えることを示した形です。
 なぜ腸内細菌はやせ形のほうが優勢だったのでしょうか。肥満型の細菌叢は、多様性が乏しく菌の種類が少ない。このため、菌種の多いやせ形タイプにとってかわられることになったとみられます。
 (取材・文 田中郁也)



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