https://www.sankei.com/world/news/190329/wor1903290014-n1.html
トランプ氏が反転攻勢 集会で露疑惑潔白宣言
2019.3.29
【ワシントン=黒瀬悦成】いわゆるロシア疑惑をめぐるモラー報告書が
2016年米大統領選でのロシアとトランプ陣営との共謀の疑いを否定したのを受け、
トランプ大統領は来年の大統領選での再選に向け、これまでの民主党や主要メディアからの攻撃を
「政治的魔女狩りだ」として主要争点に位置づけ、反転攻勢を本格化させた。
作り話は死滅
「3年間にもわたる嘘や中傷、非難の末に、ロシア(疑惑)の作り話はようやく死滅した。
共謀などという妄想は、済んだ話だ」
トランプ氏は28日、中西部ミシガン州グランドラピッズでモラー報告書の提出後としては
初となる支持者集会を開き、数千人の聴衆を前に高らかに「潔白宣言」を行った。
グランドラピッズは、16年大統領選でのトランプ氏の最後の遊説地。選挙の行方を左右する
重要州に位置づけられていたミシガン州を僅差で制したことで、トランプ氏は大統領の座をつかむことができた。
そんな因縁深い地を今回、集会の場所として選んだのは、同氏の再選への決意の表れでもあるといえる。
トランプ氏はまた、集会での演説で、民主党や主要メディアについて
「16年大統領選の結果を受け入れられないという理由で国の分断を図り、民主政治の仕組みを
破壊しようとした」などと口を極めて罵(ののし)った。
トランプ陣営の広報担当者は「大統領は、民主党によるロシアとの共謀や司法妨害に関する嘘と、
自身のこれまでの主張がいかに正しかったかについて、投票日まで訴えることになるだろう」と強調する。
とはいえ、報告書がトランプ氏の期待するような追い風効果を生み出すかは、現時点で読み切れない。
民主党からは、既に名乗りを上げている十数人に加え、モラー報告書でトランプ氏が窮地に
陥ることを見越し、最終的に30人以上が同党の大統領候補指名争いに名乗りを上げると取り沙汰されてきた。
このうち、かなりの人数が出馬を断念する可能性がある。
一方で、選挙予測専門家のネート・シルバー氏は、「民主党の指名争いに出馬表明済みの候補は、
いずれもモラー報告書を主要争点に掲げてこなかった」と指摘し、報告書をめぐるトランプ氏の攻撃が
民主党候補を直撃する公算は小さいとの見方を示す。
民主党も見切り?
ペロシ下院議長とシューマー上院院内総務が率いる議会民主党でも、
ロシア疑惑は「法的手続きとして決着した」として見切りをつけ、医療保険制度改革や気候変動など、
本格的な政策論争でトランプ氏と正面から勝負すべきだとの機運が広がりつつあるという。
報告書の概要が明らかになった23日にFOXニュースが公表した世論調査では、
「今なら民主党で一番人気のバイデン前副大統領とトランプ氏のどちらに投票するか」の問いに対し、
47%が「バイデン氏」と答え、トランプ氏を7ポイント上回っており、
トランプ氏が今後、どう支持を積み増していくかが最大の注目点となりそうだ。
露疑惑モラー報告書、戦略立て直し迫られる民主党
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190329-00000584-san-n_ame
【ワシントン=黒瀬悦成、住井亨介】
ロシア疑惑の捜査報告書でトランプ陣営とロシアとの共謀が否定されたことで、
米議会で疑惑を追及してきた野党・民主党は、これからトランプ大統領と共和党にどう対抗していくのか、
戦略の立て直しを迫られている。
トランプ氏は28日、疑惑追及の先頭に立ってきた下院情報特別委員会のシフ委員長(民主党)を
ツイッターで「2年間も意図的かつ不法な嘘をつき、情報を漏らしてきた」と非難し、議員辞職に値すると訴えた。
同委員会の共和党議員9人も同日、シフ氏に委員長辞任を要求した。
これに対し、シフ氏は、疑惑捜査の過程で共謀の裏付けとなり得る「証拠」はいくつも出てきており、
それらを無視することは「道義、倫理に反し、愛国心にも欠ける」と述べて、委員会で追及を続ける考えを表明した。
だが、刑事事件としては実質的に決着したロシア疑惑にこだわり続ければ、ワシントンでの政争と取られ、
有権者の支持離れにつながる可能性もある。
昨年の中間選挙で当選した新人の下院議員らは27日、トランプ氏の弾劾を求める決議案を提出するなどして
対決姿勢を打ち出したが、モラー氏の捜査でトランプ氏の司法妨害が明確に認定されなかったため
正当性を欠くことになる。
民主党のペロシ下院議長も弾劾については「国を分裂させる」として消極的で、
まずは同党内の足並みをそろえることが急務となる。
坂元一哉大阪大教授「トランプ氏再選へ好材料」
http://news.livedoor.com/article/detail/16238292/
ロシアの2016年米大統領選干渉疑惑に関する一部民主党議員の姿勢は、米国民の選挙で選ばれた
トランプ大統領が、「米国の大統領にふさわしくないから弾劾する」といわんばかりのものだった。
これは民主主義を否定しかねない。
むろん「大統領が罪を犯したから弾劾する」というのはわかる。だが、約2年に及ぶ捜査は
「大統領の犯罪はない」という結論に終わった。
民主党の追及はトランプ氏の支持者をますます固めるだけの結果になり、大統領は20年の再選に向けて好材料を得た。
そもそもロシアの干渉が選挙結果を左右するような大きなものだったかは疑問だが、
米主流メディアは、いかにもトランプ氏はロシアとの共謀で選挙に勝ったという感じで報道していて、不思議だった。
当選するはずがない人が当選し、その理由を直視したくなくて、“ずる”をしたから当選したと
信じたがっているようにも思えた。
こうした態度は、グローバリズムへの嫌悪、格差社会に対する不満、エリート層への反感などが
「トランプ大統領」を誕生させた事実から目をそらさせる。次期大統領選に向けた民主党の課題は、
トランプ氏を大統領にするまでに高まっている米国民の既存政治への不満をどう吸収し、支持につなげていくかだろう。
捜査結果を受け、トランプ氏は今後(2期目が終わるまでの)6年間、大統領を続ける可能性が出てきた。
トランプ氏に手を焼く米国外の勢力を失望させるものになったに違いない。(聞き手 平田雄介)