為替介入をどうみるか
[HRPニュースファイル78]転載
2011年11月2日
日本政府は10月30日、今年に入って3回目の
為替介入を行いました
(介入規模は7兆円規模と推定される。WSJを参照)。
安住淳財務相は、「納得いくまで介入する」と
発言していることから、政府の「本気さ」を
評価する向きもあります。腰の重い日銀も、
5兆円規模の追加金融緩和を行い、
一時は円・ドルレートは79円まで下がりました。
日本経済には、大企業から中小企業まで輸出企業が
多いため、行き過ぎた円高は短期的に企業収益を
圧迫します。業界にもよりますが、自動車業界では
1円の円高が数十億円の損失につながるとも言われ、
為替相場が高くなることに相当の神経を使って
いるのは事実です。震災や原発事故に加えて円高が
追い打ちをかけている以上、為替介入をすることに
よって企業を救うという気持ちは十分に理解できます。
さて、今回の為替介入に関しては、世界の投資家や
金融関係者はどのようにみているのでしょうか。
残念ながら、今回のように日本単独で行う為替介入は
評価されていません。
為替介入は、よほどの経済的混乱が生じない限り
行われません。実施するとしたら、協調介入が定石です。
その証拠に、日本政府の為替介入に関して、世界銀行の
ゼーリック総裁は、協調介入を原則とする旨を強調し、
今回の日本政府の対応に「失望した」と批判しています。
また、米財務省のブレイナード次官は、「為替相場は
無秩序な状況と過度な変動がない場合においては、
市場で決定するべきだ」と言及しており、やはり
為替介入に否定的です。
アメリカのWSJでは、一部の投資家は為替介入の効果
を疑問視して円を買戻したことと過去2回の為替介入後
に円相場が円高に振れていることを指摘。
介入の効果がいまいちだということは市場の動向を
みてもわかります。
もう一点、為替介入に関する問題点を挙げておきましょう。
実は、為替介入は国民の税金によって行われています。
償還が半年以下の政府短期証券を発行して資金調達し、
円を売ってドルを買うわけです。これが為替介入の
メカニズムです。政府短期証券は、為替介入を繰り返した
ために60兆円も増え、171兆円を超えました。
震災以降続いている円高を阻止するために、1年分の
税収を超える借金をして為替介入をしていたのですが、
効果は全く現れずに円高が継続しました。
金融緩和を怠るとすぐに為替は元の水準に
戻るか一層円高が進みかねません。
そうなれば、購入したドル建て債券は目減りして
しまいます。だからこそ、金融緩和をして円が高く
ならないようにする必要があるのです。
為替相場が下落したことをもって安心してはいけないのです。
もう一度繰り返しますが、為替介入は国民の税金に
よって行われています。介入をした以上、金融政策を
もっと大胆にしなければ効果なしです。
血税を無駄にしないためにも、政府は日銀を動かして
金融緩和を迫るべきでしょう。
(文責:中野雄太)
http://www.hr-party.jp/new/2011/13371.html
執筆者:中野 雄太 (16)
幸福実現党静岡県本部幹事長
公式サイト: http://yutasteve.blog.fc2.com/
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