トヨタ問題「まるで他人事」
鳩山内閣の無策ぶりにア然
トヨタ自動車の大規模リコール問題は、豊田章男社長が米下院公聴会で証言する非常事態にまで発展した。日本を代表するトップ企業の不祥事は、日本経済に甚大な悪影響を与えそうだ。こうした中、元レバノン大使で、米国の「自動車の街」として知られるデトロイトの日本国総領事も務めた作家の天木直人氏が、鳩山由紀夫内閣の無為無策について直言した。
「私は民主党政権を支持する立場だが、(鳩山内閣は)基本的な対米外交ができていない。首相が、日本の立場をきちんと伝えていない。対米政策が無策だったから、トヨタ問題がここまで攻められた」
天木氏はこう語る。
厳しい追及が3時間余りも続いた公聴会。天木氏は「生中継で見たが、豊田社長はよく答えていた。誰が出席しても厳しい批判は受けたはずだ」といい、鳩山首相についてこう続けた。
「首相は公聴会前日の24日、『(トヨタは)真摯に誠実に対応すべきだ。真摯に対応すれば大きな日米の経済問題には発展しない。トヨタの信頼が徐々に回復すると期待している』などと記者団に語っていたが、他人事のような突き放した発言に失望した」
日本経済をけん引するトップ企業の問題は、わが国経済に多大な打撃を与える。自動車以外の日本製品全体の信頼性にもかかわる。現に、大和総研は、今回の問題はGDPを0.12%押し下げ、雇用者数も4万9000人減ると分析している。
「米国でフロアマット問題が取りざたされたのは昨年夏で、大規模リコールが相次いだのは昨年秋。内閣として強い危機感を持ち、早い時点で、政府とトヨタが官民一体となって技術的な調査をしたり、米国への対応に当たるべきだった。自民党政権時代なら、大臣クラスが米国に飛んで、ホワイトハウスや米議会関係者と協議しただろう」
今回の公聴会について、米議会やメディアでは「社長本人が出席したことは評価できる」「資料の棒読みだった」「1つの公聴会だけでは判断できない」など多様な評価が噴出。問題は長期化の様相も見せている。
天木氏は「今からでも遅くない。官民一体となって問題に取り組むべきだ。鳩山内閣が誕生して5カ月。もう言い訳はできない。対米外交は、普天間問題だけではない。政府には、日本を良い方向に向かわせる責任がある」と語っている。