生涯現役社会と自由社会
2013-04-29 生涯現役社会と自由社会
川辺賢一氏 ブログ転載
http://ameblo.jp/kawabe87/entry-11520293293.html
今回の参議院選挙では、幸福実現党の3つの柱として、国防強化と
増税阻止に加えて、「生涯現役社会の実現」というのがあります。
理念として、生涯現役で仕事をし続けて、国に頼らず生きていく人を増やす
というのは、素晴らしい考え方だと思いますが、実際に、政策的に、政治的
にどのように実現していくのかを考えると難しい課題があります。
産経ビジネスアイで掲載された記事
(http://www.sankeibiz.jp/macro/news/130412/mca1304120500000-n1.htm )
には「高齢者雇用を進める企業の税制優遇などにより雇用拡大を促進する
という方法」が指摘されております。
確かに優遇税制は一つの手ではあると思います。
しかし優遇税制による高齢者雇用の促進は、「生涯現役社会」や
「自由からの繁栄」という理念からやや乖離していく面があります。
というのは、若者の雇用が犠牲になる可能性があるからです。
5点にまとめました。
(1)優遇税制というのは、雇用者全体のパイ、つまり企業が確保したい
雇用の総量(労働需要)を拡大させる政策ではありません。
(2)「若者を採用するか、高齢者を雇用するか」どちらかで迷っていた
経営者は、優遇税制導入で高齢者を雇用を選択する可能性が高まります。
つまり優遇税制は、一定のパイの枠内で、企業経営者の「高齢者を雇用しよう」
というインセンティブを高め、その一方で「若者を雇用しよう」という
インセンティブを下げる政策です。
(3)個々人(企業も含めて)の自己責任に基づく、自由な選択は社会全体
の利益を最大化させます。しかし、優遇税制は個々人の自由な選択に歪みを
与えるため、社会全体の利益を減少させます。
(4)にもかかわらず、エコカー減税のように優遇税制が良しとされるのは、
大気汚染のように「みんなの責任は無責任」となりがちな問題に対処する
ためです。
大気汚染の問題は、個々人の自由と自己責任に基づく選択に任せていては
解決に向かわないということです。だから社会全体で負担していこうと
いうのが、エコカー減税、優遇税制の考え方です。
(5)果たして高齢者雇用というのは、企業の自由意思に任せてはならない
問題なのでしょうか。高齢者雇用は、社会全体で負担していくべき問題なの
でしょうか。それは「生涯現役社会」や「自由からの繁栄」という理念に
かなったものなのでしょうか。
まとめると、「高齢者雇用を進める企業への税制優遇は、高齢者雇用の促進
には効果的かもしれないが、それと同じだけ、若者の雇用機会を減らす」
ということです。
そして「優遇税制によって、高齢者雇用を吸収していこう」というのは、
社会全体(税金)で高齢者雇用のコストを一部、負担していくということ
ですので、考え方として、本末転倒になりかねません。
要するに政府が(税金で)、企業を通して、高齢者の所得を一部負担すると
いうことです。減税なら何でもいいというわけではないと思います。
例えば定額給付金や子ども手当などのバラマキ政策も、払いすぎた税金の
キックバックと考えれば一種の減税です。
高齢者雇用の問題は、必ずしも高齢者だけの問題ではなく、若者がもっと
政治参加することで、しっかりと考えていかなければならない問題で
あると思います。
若者の雇用環境というのは、今後の10年後、20年後の日本の未来を形成
するうえで決定的に重要です。
解決策としてはオーソドックですが、金融緩和を継続することです。インフレ
になれば、企業の労働需要そのものが拡大してきます。
政府主導で賃上げを要求しているのも、結局、金融緩和が実体経済に効果を
表すのが待てない、あるいはそもそも金融緩和の意味が良くわかっていない、
ということではないでしょうか。
ちなみに無理やり賃上げを実施すれば、今度は雇用が減る可能性があります。
賃上げにしても、高齢者雇用にしても、法律家的(官僚的)な視点で経済を
コントロールしようとしてもろくなことがないというが、幸福実現党の基本的
な考え方ではないでしょうか。
高齢者を雇用するにしろ、若者を雇用するにしろ、あくまでも企業の自発的な
雇用が大切だと思います。
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転載、させていただいた記事です
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