雇用の創出こそ優先させよ
【立木秀学のMirai Vision】雇用の創出こそ優先させよ http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100903/mca1009030503006-n1.htm 2010.9.3
■幸福実現党党首
昨年から問題になっているギリシャ危機以降、世界の経済政策の潮流が「財政再建を最優先課題にすべきだ」という方向に向かっています。
確かにギリシャの粉飾決算まがいの財政赤字は問題ですし、投資効果のないバラマキ政策による放漫財政は厳に戒める必要があります。
しかし、だからといって、「財政赤字の大きな日本も、いずれギリシャの二の舞いになる」という“脅し”に乗って、いま財政再建に舵(かじ)を切るのは早計に過ぎます。そんなことをすれば、ただでさえ急激な円高と株安で先行きの不安が高まる中で、さらなる不況を呼び込むことになりかねません。
◆緊縮財政に向かう欧州
財政再建論者は、政府の赤字を減らせば、社会保障の持続性が高まり、国民の将来への不安が解消され、経済も上向きになると主張しますが、その具体的な方法はといえば、増税するか歳出をカットするかです。
増税は国民の消費を冷え込ませます。歳出カットも、公共投資や公務員の削減であれば失業者を増やしますし、社会保障に手をつければ生活の不安が高じます。いずれも不況要因となるものばかりです。
すでに欧州では、ギリシャ危機を機に、各国が緊縮財政路線に入りつつありますが、少なからず混乱が始まっているようです。例えば、ルーマニアでは政府が年金や公務員給与の削減案を発表したところ、全国でデモやストライキが頻発。その後、年金削減については憲法裁判所が「違憲」の判断を下し、政府は付加価値税(消費税)率のアップに踏み切りました。フランスやスペイン、イギリスでも財政再建のために、結局、年金などの社会保障の見直しを進めるという話になり、かえって国民の将来の不安を高めてしまっているのが現実です。
◆政府の財政よりも国民の生活
政府の財政のことだけを考えれば、赤字や債務は解消されてしかるべきでしょう。しかし、経済政策を考える上で大切なのは、その時々の経済の現実に合わせて政策の優先順位を判断し、必要な処方箋(せん)を与えるという姿勢です。
「国民の生活の不安」と「政府の財政の不安」をはかりにかけて、どちらか一方を取らなければならないとしたら、政治家が下すべき決断は明らかです。
現在、日本の失業率は5%を超えて高止まりし、この12年間で平均所得が約150万円も減っています。米国経済の二番底の懸念もいまだ強いものがあります。こうした状況では、何よりもまず国民の雇用と生活を守ることを優先しなければなりません。
ノーベル賞経済学者のポール・クルーグマン氏は8月、米紙に寄せた論考の中で、失業率が悲惨なまでに高かったにもかかわらず、財政赤字削減を主張する欧米の政策エリートたちを「まるで古代のカルトの聖職者のようだ」と評しています。そして「ギリシャやアイルランドでの緊縮財政計画の悲惨な結果を見るべきだ」と主張します。
政府は足元の円高・株安に対応した経済対策や補正予算編成に動いていますが、財務官僚の言いなりになっている菅政権では「小出し」の対応に終始し、大きな成果は見込めません。
今必要なのは骨太な成長戦略に基づく大胆な景気浮揚策です。雇用と所得が上向いてこそ、税収が上がって財政再建も果たせるのです。国民経済を無視した財政優先の考え方は、政策的にも倫理的にも間違っていることを知らなくてはなりません。
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【プロフィル】立木秀学
ついき・しゅうがく 1971年、大阪府生まれ。東京大学法学部政治コースを卒業後、宗教法人幸福の科学に入局。財務局長、専務理事などを歴任。2009年、幸福実現党に入党。10年7月、幸福実現党党首に就任。妻と2男の4人家族。趣味は読書と散歩。
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