百万にのぼるわが皇国の軍が、強大な敵を征討した
荒野に戦い城塞を攻めるなか、わが将兵の屍は山を成した
私は恥じる、どの面さげて故郷に待つ人々にまみえることができようか
戦勝の凱歌が響く今日、果たして何人の者が無事に帰還することができただろうか
桑原嶽『乃木希典と日露戦争の真実』(PHP新書)を読みました。そして、改めて乃木大将の果断な指揮と第三軍将兵の無双の奮戦ぶりに感銘を受けるとともに、今なお人口に膾炙する「無能論」になんともやるせない気持ちになり、ふたたび乃木大将をテーマに絵を描こうと思いたった次第です。
引用した『凱旋』の詩は、乃木大将の作の中で個人的に最も好きなものです。凱旋という晴れやかな題名が、人間乃木希典の悲痛な心の叫びをかえって際立たせる、本当に凄まじい詩だと思います。乃木神社の資料館で、乃木大将自筆によるこの詩の掛軸を初めて見たとき、心にズンと衝撃を感じてしばし立ちつくしたのを、今でもよくおぼえています。