~saito sekai presents~奇妙な漫画&小話ブログ

AI画像生成漫画&短編小説&を日常投稿します。不定期更新です。

あるタクシー運転手の正体

2022-08-31 23:00:00 | 超短編小説
私は、タクシーを待っていた。お世話になった先輩が亡くなり、葬儀の帰りだった。突然の出来事で、今でも彼がもうこの世にいないなんて信じられない気持ちだ。

一台の空車が近づいて来たので、私は手を上げて乗り込んだ。

私は彼の事を考えていたので、タクシー運転手に思いをこぼす。

「お世話になった先輩が亡くなってね…サヨナラも言えなかったよ」

そうしたら、そのタクシーの運転手はこういうのだ。

「それじゃあ、お客さん。わたしがその先輩に伝えておきますよ」
車は家に付き、料金を払って下車した。

風呂に入り、ビールを飲んだ。

私は、彼の一言が気になっている。        完

ある夕方の出来事

2022-08-30 23:00:00 | 超短編小説
水曜日の夕方、俺は仕事を終えて帰宅しようとしていた。
「後、2日頑張れば休みだ…」
すると夕日の彼方からなにやら飛んで来る。それは人の足だった。びっくりしていると、もう一本の足、腕、胴体、頭…次々に飛んで来て、それは空中で一つの身体になった。

それをよく見ると、俺のおふくろであった。ニコニコ笑っている。唖然としているうちに、その身体は俺になった。いや、親父の若かりし日の姿なんだ。じっと見ていると、それはだんだん老いて行き、今の親父となった。

その親父は言う。

「お前は一人なんだよ」


俺は段々可笑しくなった。するとその親父のような幻想はいつの間にか消えていた。

「そうだ、俺は一人じゃない、でも一人でしっかり立って行かなければならないのだ」

気がつくと、すっかり日は落ちていた。歩く足取りはさっきより、少し軽くなった。

耐えきれない存在の軽さ

2022-08-29 23:00:00 | 超短編小説
ここにあるスパイがいる。彼は敵国に乗り込みある情報を盗もうとしていた。しかし運悪く、捕まり、虎と一緒の檻に入れられてしまった。
「なんだ…猫と一緒か…」
看守が近づいて彼に、こう呟いた。
「Hey、どんな気分?」
スパイは答える。
「どうもこうもない、こんな床じゃあ昼寝も出来ない」
看守は提案する。「じゃあ、じゃんけんして勝ったら、出してやる」
そして二人は、「最初はグー」と始めたのだった。   完


兎と亀変な童話①

2022-08-28 23:00:00 | 超短編小説
兎と亀はスタートラインに並んだ。今から、世界的に有名なレースが始まるのだ。
よ~い…ドン!
二匹は同時に走り出す。兎は予め、昼寝をしない覚悟だった。
ある程度、走った兎。しかし亀は一向に付いてくる気配はなかった。どうしたんだと後ろの景色を見てみると、海辺で黄昏ている亀を発見するのだった。
注意しようと、兎は亀に近づいた。亀は何やら、呟いている。兎は耳を澄ませた。
「海辺に立っていると、昔別れた女達のことを思い出すなぁ…」
それを聞いた兎は思わず叫んだ。
「俺たちが始めるのは童話であって、作り話ではない!」 完

ネコふんじゃった

2022-08-27 23:00:00 | 超短編小説
私は三匹の人食い鬼に追いかけられていた。
「匂うぞ」「この近くにあいつはいる」「覚悟していろ」
私は無我夢中で逃げる。そしてウッカリ、ネコの尾っぽを踏んでしまうのだ。
「ミャア~オ!!」とネコは飛び上がった。私は「痛かったね、ゴメンよ」と謝った。
ネコふんじゃった…ネコふんじゃった…ネコふんじゃった…自責の念で私は動けない。
人食い鬼三匹は、もう間近に迫っている。    完