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還暦おやじの洋楽日記

Voice Mail / John Wetton

ジョン・ウェットンを語るときにエイジアのことに触れない訳にはいかないだろう。70年代プログレファンにとって、エイジアは目の上のタンコブ、ちょっと扱いに困る存在ではないか。なにしろプログレ界の錚々たるメンバーを揃えていながら、出てきた音楽は売れ線丸出しのパワーポップ。そんなスーパーグループのデビューは圧倒的な支持を得て迎えられたが、ハウとウェットンの確執や、途中、ウェットンの一時的な解雇もあって、そんなビジネス主導の産業ロックぶりにファンも嫌気がさしたのだろう、飽きられるのも早かった。ポップロックとしての完成度は高かったけど、別にこの面子でなくても良かったんじゃないのか、というのが大方の評価じゃないかな。
エイジアは通算3枚のアルバムをリリースした後に自然消滅したが1990年に再結成。だが、ジョン・ウェットンはほどなく脱退し、しばらくはソロの道を歩むことになる。このアルバムは1994年に発表された彼の2枚目のソロアルバム。

1. Right Where I Wanted to Be
2. Battle Lines
3. Jane
4. Crime of Passion
5. Sand in My Hand
6. Sea of Mercy
7. Hold Me Now
8. Space and Time
9. Walking on Air
10.You're Not the Only One

契約したヴァージンレコードが身売りしたことにより欧米ではしばらく販売ができず、数年後に「Battle Lines」というタイトルでマイナーレーベルから販売された。だから「Voice Mail」というタイトルは先行販売した日本盤のみに付与されたもの。また、これ以降も彼の作品はメジャーなレーベルから出ることがなかったため、ここ20年ぐらいのウェットンはちょっと不遇な印象がある。
曲作りのパートナーはボブ・マーレットというキーボード奏者でこの人のことは知らないが、ポール・バックマスターがオーケストラアレンジを行ない、スティーブ・ルカサーやサイモン・フィリップスといったミュージシャンも参加している。
「Battle Lines」に代表されるメロディアスなバラードが多いが、「Right Where I Wanted to Be」や「Jane」といったダンサブルなナンバーも要所に配してアルバムとしてのまとまりは非常に良い。「Hold Me Now」ではゲスト参加のロバート・フリップのアコースティックギターが聴かれるが、いかにもの音色がまるでセルフパロディみたいで面白かった。
1990年のエイジアのベスト「Then And Now」にはいくつか新曲が収録されていて、これらも佳作揃いだったが、本作の曲もその延長線上にある。但し、エイジアよりは少々渋め。彼の圧倒的なボーカルに幻惑されるけど、もし別の人が歌っていたらど真ん中のAORアルバムとして扱われていたのじゃないか。
ウェットン本人は実はポップ大好き人間らしいが、クリムゾン時代の彼を知るファンならば、どうしてもそれ以上のものを求めてしまうのは仕方がない。結局、クリムゾンの魅力はロバート・フリップの攻撃性とマクドナルド、レイク、ウェットンらの叙情性との対比の妙。様式美とそれが破壊されるカタルシス。80年代以降のクリムゾンが決定的につまらないのはフリップに対峙できる叙情性を持ったメンバーがいなかったことだ。クリムゾンがデビューアルバムだけの一発屋から逃れて伝説のバンドになれたのは「太陽と戦慄」からの三部作の成功があったおかげ。だからウェットンこそクリムゾンの中興の祖とされるべきなんじゃないかな。

(かみ)
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