彼等のスタイルは特異で、後にも先にもこんなバンドはいない。
まずボーカリストが3人もいてプレイヤー4人と完全に歌と演奏を分離したバンド形態だったこと。
次に、彼等の作ったオリジナルは殆どなく、無名のミュージシャンの曲を発掘して巧みなアレンジで世に出したこと。
前者に関しては、当時、来日コンサートを観に行ったが、あの頃のロックバンドがレコードとは全然違うヘタクソな演奏をしていたのに比べ、彼等のライブは非常に完成度が高かった。
後者に関しては、彼等が取り上げたことによって脚光を浴びたミュージシャンは、ニルソン、ローラ・ニーロ、エルトン・ジョン、ランディ・ニューマン、ポール・ウイリアムス、レオ・セイヤー・・・と枚挙に暇がない。(何しろ彼等の全盛期には「あのスリー・ドッグ・ナイトに取り上げられた」というのが売り文句になっていたぐらい)
70年代前半は彼等の黄金時代だったが、オリジナル曲が乏しいのが災いしたのか、単なるヒットソングメイカーみたいに誤解され、今は不当とも思えるぐらい黙殺されてしまい、義憤すら感じる。たぶん、当時を知らない人からは「Joy To The World(喜びの世界)」の一発屋ぐらいにしか思われていないのじゃないか。
そんなことは決してない。僕は今でもスリー・ドッグ・ナイトは不世出のバンドだったと思っている。
このアルバムは、彼等の絶頂期が過ぎ、メンバーの不祥事等もあってバンドが衰退し始めた1975年の作品。
Side A
1. Til The World Ends
2. You Can Leave Your Hat On
3. Good Old Feeling
4. Mind Over Matter
5. Midnight Flyer ("Eli Wheeler")
Side B
1. Kite Man
2. Coming Down Your Way
3. When It's Over
4. Lean Back, Hold Steady
5. Yo Te Quiero Hablar
特に「Midnight Flyer」「Yo Te Quiero Hablar」が素晴らしい。
「Midnight Flyer」は前作「Hard Laybor」から加入したキーボードプレイヤー、スキップ・コンテのオリジナル曲。魔法使いみたいな衣装を着て「何だコイツ」と思っていたが。この曲を書いたので許す。シンセイサイザーを多用しているので今聴くと多少古臭いが、当時は斬新でキャッチーなポップソングだった。こういう曲をシングルでリリースすれば良かったのにと思うのだが、実際にリリースされたのは、マンネリもいいところのバラード「Til The World Ends 」であった。
「Yo Te Quiero Hablar」はタイトル通り、全編スペイン語の曲。いかにもラテン音楽で、哀しげでありながら涼しげな曲調が夏の終わりに聴くのにピッタリ。
このアルバム制作過程で、バックメンバーの離反と入替があったようで、曲ごとのクレジットを見ると誰がどういう順番で脱退したのか、何となくわかる仕組みになっており、つまり蝋燭の最後の揺らめきと言うか、肉は腐りかけが美味いと言うか、最後に頑張ってくれた作品である。
実際には彼等は、もう1枚「American Pastime」というアルバムを発表して解散するのだが、そのアルバムには、もはや全盛時の面影は感じられなかった。
彼等のアルバムは前作「Hard Laybor」まではCD化されているが、このアルバムはまだ。乞CD化。そして彼等が正当に再評価されることを願う。
(かみ)
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susan01
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