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還暦おやじの洋楽日記

You're Only Lonely / J. D. Souther

70年代後半にJ・D・サウザーの名前を知ったのは、ご多分に洩れずイーグルスを通じて。彼が共作者としてイーグルスに提供した曲は「Doolin-Dalton」「James Dean」「The Best of My Love」「New Kid in Town」等々、数多くあり、特に「The Best of My Love」のセンチメンタルで美しいメロディはおそらくサウザーの寄与が大きいと思えた。当時の彼の紹介のされ方は「イーグルスやリンダ・ロンシュタットに数々の曲を提供」した「ウエストコーストロックシーンの知らざれし大物」で、しかも「リンダの恋人」なんてオマケもついて、彼自身の曲を耳にしたことはなかった頃は「どうやら才能もあって女にもモテて、ちゃらけて嫌味な野郎かも」と色眼鏡で見ていた記憶がある。
だが、実際に聴いてみると最初の印象はとても地味~なものだった。それはあまり華のない彼の歌声に拠るところが大きかったのではなかろうか。アサイラムで発表した2枚のソロも、サウザー・ヒルマン・フューレイ・バンドもセールス面ではパッとしなかった。

そんな彼が一念発起したのがCBSに移籍して1979年に発表したこのアルバム。プロデュースも自身で行なった本作は参加ミュージシャンも超豪華。イーグルスからはグレン・フライとドン・ヘンリーとドン・フェルダー、ジャクソン・ブラウン、デヴィッド・サンボーン、ダニー・コーチマー、ジョン・セバスチャン等々、当時のウエストコーストシーンを代表するメンバーが顔を揃えていた。
”俺だってその気になれば”と思ったのかどうか知らないが気合の入った内容で、アルバムタイトル曲「You're Only Lonely」はスマッシュヒット。アルバムも売れて、現在でも”AORの名作”として語り継がれる作品となった。

1. You're Only Lonely
2. If You Don't Want My Love
3. The Last in Love
4. White Rhythm and Blues
5. 'Til the Bars Burn Down
6. The Moon Just Turned Blue
7. Songs of Love
8. Fifteen Bucks
9. Trouble in Paradise

「You're Only Lonely」はオールディーズ調の名曲。大瀧詠一の「ロング・バケイション」はこのアルバムに触発されて制作されたらしいが、それが事実ならばこの曲に魅了されたからに違いない。
「The Last in Love」はサウザーの抒情性が最大限に発揮された実にセンチメンタルな曲。盟友グレン・フライとの共作で、もともとは鳴物入りでデビューしたニコレッタ・ラーソンのファーストアルバムのために書き下ろされたという。ニコレッタ版は彼女のハリのある歌声で聴かせるけど、こういう曲調はサウザーの華のない、少しけだるい歌声のほうが似つかわしいな。それにしても叙情的なバラードはサウザーの作品には数多くあるが、彼単独の曲よりもフライ達と組んだ曲のほうが映えるみたいだ。「'Til the Bars Burn Down」も同じくフライとの共作だが、こちらはファンキーなロックンロール。
最後を締め括る「Trouble in Paradise」はサウザー・ヒルマン・フューレイ・バンド時代のセルフカバーだが、ホーンをフィーチャーしてSHF版よりも大人の感じに仕上げてある。

それ以前のソロアルバムも出来が悪い訳ではないが、どうにも平坦な印象を受けてしまう。それに比べてこのアルバムは「You're Only Lonely」という目玉曲もあり、収録曲もバリエーションに富んでメリハリが効いている。だからこのアルバムこそは彼にとって商業的に成功した唯一のアルバムであると同時に、内容的にも最も優れたアルバムだと思う。

このアルバムののヒットで溜飲を下げたのか、この後サウザーはまた深く潜行する。80年代にソロアルバムを1枚出した後は長い間アルバムリリースはなく、十数年前からまた活動を再開してコンスタントにアルバムを発表している。

(かみ)

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