いきなり貶めるようなことを書いてしまったけれど、最初に聴いたときにそう思ってしまい数回聴いた程度でお蔵入りしてしまった。それから幾星霜、このまま放置するのももったいないので改めて聴き直してみるとその感想は大筋では変わらなかったが、後の成功に繋がる萌芽もアルバムの随所に感じられた。
1972年発表。メンバーはアンディ・ラティーマー(g,vo)、ピーター・バーデンス(key,vo)、ダグ・ファーガソン(b,vo)、アンディ・ワード(ds)の4人。
1. Slow Yourself Down (Latimer,Ward)
2. Mystic Queen (Bardens)
3. Six Ate (Latimer)
4. Separation (Latimer)
5. Never Let Go (Latimer)
6. Curiosity (Bardens)
7. Arubaluba (Bardens)
このアルバムはMCAからリリースされたが全然売れなかったらしい。そのため契約更新してもらえず2枚目以降はデッカ傘下のレーベルから出されている。
キャメルの曲作りは主にラティーマーとバーデンスが担っており、次作からは共作が多くなるがこのアルバムではそれぞれが単独でクレジットされている曲が多く、二人の作風の違いがよくわかる。これまでなんとなく「ラティーマーはメロディアス指向で、バーデンスはジャージー指向」という思い込みを持っていたが、このアルバムを聴く限りそれほど単純な構図でもなかった。
この中で初期の代表曲となっているのは「Mystic Queen」と「Never Let Go」だろう。どちらも曲の素材は良いものの、もっさりしたアレンジはいただけない。特に「Never Let Go」は後年「A Live Record」での白熱して緊張感溢れるライブバージョンを先に聴いてしまったから余計にそう思った。「Slow Yourself Down」なんかもアレンジ次第でかなり良い曲になったろうし、他の曲も概ねそうなのだが、そんな中で出色の出来だったのは「Six Ate」。切れ味の良いインストゥルメンタルナンバーで、このアルバムでも群を抜く隠れた名曲だ。この曲に限らず、総じてラティーマー作品のほうがバーデンス作品よりもアヴァンギャルドな作風である。
「デビューアルバムにはそのバンドのエッセンスが全て詰まっている」とはよく言われることだが、確かにそうだな。キャメルの魅力である、ギターとキーボードの掛け合いバトルも既にこの頃から展開されている。このアルバムと比較してのその後の進化は、まずアレンジが洗練されて冗長さがなくなったことと、ボーカルの処理が上手くなったことだろう。ボーカルに関してはメンバーの歌唱力はさほど向上した訳ではないが、非力なボーカルを上手にオブラートする術を習得したことだろうか。
今回聴き直しても「コアなファン向けのアルバム」という評価は変わらなかったけれど、改めて居住まいを正し、このバンドの原点に触れたことは良かったわ。
(かみ)
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