第四十九話
コーライ民主主義人民共和国、通称・北コーライの首都・プーヤン。
第三代将軍こと国家主席のキムボール・ジョンソン(わがままボディ)が今日も北コーライの民を偉大なる勝利へ導くべく、執務に励んでいた。
「なんだか南の連中が景気良いみたいなのねん!」
「はっ。なんでも航空機という新しい兵器の開発に成功し、その輸出が好調のようです。その他、魔伝話という音声を伝える機械も発売して普及させているようです。」
政治局敵工部の長官が答える。
「その航空機とかいうのは入手できないかしらん?」
「図面や部品などは、南の逆徒共に浸透させた工作員が大量に入手しておりますが完成品は難しいかと。図面を元に試作していますが…。あと燃料のケロタンというのも入手できません。ダイシン帝國でも原油確保に走り始めたばかりのようで我が国に回すほどの余裕が無いようです。」
「むふー、経済制裁にも困ったものなのねん!ダイシン帝國もツイステの傀儡との戦争の最前線たる我が国への支援をもっと真面目にやって貰わないと困るのねん!」
乞食のくせに態度だけは厚かましい北コーライ人である。
「ただ、南コーライ・傀儡のムーン政権は、しきりに我が国に対して秋波を送ってきております。魔伝話の専用回線をあっち持ちで敷設したいという申し込みもあります。工業特区・南北鉄道開通は、ツイステの圧力で頓挫しましたが、魔伝話回線は制裁対象になっておりませんから。」
「穀物・飼料の輸入も制限されていますが、制限項目に入っていなかった柑橘類の輸入で、ミカン箱の二重底に、金の延べ棒が仕込まれておりました。」
「そこまで卑屈に阿るようなら、その魔伝話くらいは認めてやるのもやぶさかではないのねん。よろしく計らっておくのねん!」
「ハッ!」
☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯
今日も、ダイシン帝國の朝議が始まる…。
ちなみにパワーブレックファストというツイステの習慣は、”朝議”が朝の会議という翻訳間違いから発生したものであるという説が有力です。
ジャアアアーーン。大きな銅鑼が鳴らされると、御簾がしずしずと上げられ、玉座に座った皇帝陛下が、開口する。
「ダイシン帝國皇帝、マオ・タイラ・カーイー(ねこかわいい)でアル」
「そういえば除四害運動はどうなっているアルか?」
農務省の士大夫が
「ハハッ、皇帝陛下の御指導のもと、駆逐した雀の数は300億匹に達しました!今年はきっと大豊作になることでしょう!ハハハハ!」
「でアルか…」
文化省の士大夫カン(康)・チォウ(秋)クァイ(元)が発言する。
「我が国から選りすぐられた美少女にモトヒノや南方の後進国、ツイステ人を加えた”女少林寺三十六房”というユニットを結成しましたぞ!キレッキレッのダンスが売りです。これでまた、きやつらの若者の懐から金を搾取してやります!」
「でアルか…(正直どうでも良い…)。ところで、コーライ・モトヒノ・ツイステなどで、航空機なる革命的な兵器が導入されつつあると聞いたが、我が軍ではどうなっているのか?」
「ハハッ!関連企業には我が国の長い手が及んでおり、製図図面や部品などの入手は何の問題もありません。ただし、その技術理解は未だ不十分なところで、概念実証機体の作成から、着手しているところであります。」
「これは、諜報によって戦略級極大魔法を我が国に齎した以来の重要案件でアル!全力で取り組むように!」
一同
「ハハァーー」
☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯☯
ここは新設されたダイシン帝國航空工業集団公司の研究所。
モトヒノやツイステの工科大で学位を取得したスパ…元留学生の英才が集められていた。
「姫様から、我が国製の航空機の開発が下命されたアルよ!」
「後輩から送られてきた資料はたくさんありすぎて困るくらいネ!」
「まあマネした機体は作るのは当然として、なにかオリジナルな要素も加えないとダイシン帝國4000年の意地がすたるというものヨ。」
「この鋼鉄製の機体というのがネックだと思うヨ!重い機体を飛ばすために重いエンジンを積んで、重いエンジンを積むために機体を頑丈にしないといけないという悪循環。」
「ジェットエンジンはたしかに強力だけど、魔動機を使った飛行機にもまだ可能性が残っていると思うアルよ。重い爆弾を積む攻撃機はしょうがないけど、それを迎撃する防衛用の機体なら、機銃だけ積めば良いのだし、基地から長距離飛ぶ必要も少ないから蓄魔槽駆動でも運用可能なのでは?。」
「思い切って機体を軽量化しないと無理ネ。ところで、機体は木とか竹ではいけないのアルか?最近の合板加工技術はバカに出来ないアルよ。天然木に見せかけた合板・樹脂製品は我が国の得意分野ネ。竹筋コンクリート製の高層ビルも我が国の得意技術アル!」
偽物商品を作る能力では多国の追従を許さないダイシン帝國の斜め上の技術が思わぬ兵器を生みそうな塩梅だった。