以前から読みたいと思っていた、黒田投手の「決めて断つ」が文庫化されたのを書店で見かけたので、迷わず購入。
この本、タイトルが凄く良いですよね。決断の意味がたった5文字でわかってしまうシンプルさ。個人的に、本のタイトルはなるべくシンプルなのが好みです(なので、ビジネス本のタイトルはどうも好きになれません)。
さて、内容はカープへの想いが溢れる一冊、かと思いきや、意外とそれだけではありません(もちろんカープの話も多いのですが)。
最初にFA権を取得した際の残留について、カープファンが掲げた横断幕を見て決断した、というエピソードばかりクローズアップされています。確かにそれはそれで良い話ですが、実はこのとき残留した背景には、カープ愛とは全く別の理由もあったのです。
そのあたり、テレビではやりませんよね(少なくとも自分は見ていません)。そもそも、ファンからのメッセージを読んで感動したから、という理由だけで残留したのであれば、翌年にドジャースへ移籍した理由を読み取れません。
20億のメジャーを蹴って4億のカープを選んだという表現も含め、黒田投手の「男気」ばかりに目を向けてしまうと、大事なところを見逃してしまう、と いうのが一番の感想です。
余談ですが、自分がサッカーや野球が好きなのに贔屓のチームを持たないのは、盲目的に応援すると見えづらくなる部分があって、それを避けたいという理由があります。「そんなんじゃあ、面白みがない」と言われたこともありますけど。
ところで、カープとメジャー以外の選択肢として、引退があったことも見逃せません。力は衰えていないのに、どうして引退が選択肢に入っていたのか。この本を読むと、よくわかります。端的に言えば、「野球が楽しめない」からだそうです。
黒田投手の「カープ愛」や「男気」よりも、楽しめない野球への向き合い方に感銘を受けた一冊でした。