4月4日にマンションの廊下でハエを見つけ、顕微鏡写真も撮ったのですが、そのままになっていました。
調べたのはこのハエです。一目見てオドリバエの仲間だなと思ったのですが、何となくいつもと違うような感じがしたので、採集しました。オドリバエについては、「双翅目(ハエ目)昆虫の検索システムに関する研究」という三枝豊平氏の科研費の報告書(この題目で検索するとpdfがダウンロードできます)に詳しい説明と検索表が載っています。それを使って調べてみました。
検索の結果、Syneches属になりました。実は初め、④のところで、「口吻は下方を向き、常に短い」という方を選び、Ocydromia属になったのですが、いつもお世話になっている「一寸のハエにも五分の大和魂・改」という掲示板を見て、口吻の向きを間違っていたことが分かりました(詳細はこちら)。いつも口吻の向きのところで間違ってしまいます。
次に種の検索表は「新訂原色昆虫大図鑑III」に載っていました。この検索表ではgrandis, shirozui, rufitibiaの3種を扱っているのですが、「日本昆虫目録第8巻」で調べると、本州産はgrandis, maculatus (≈mascarius), rufitibiaとなっていました。maculatusはヨーロッパからアジアにかけて分布するmascariusと同一だろうということでしたが、これが検索表には載っていませんでした。でも、先ほどの掲示板に写真が載っていたので比べると、明らかに異なるので、たぶん、この検索表で大丈夫だろうと思って試してみました。その結果、スネアカオオヒロバセダカバエ rufitibiaになりました。これら属と種の検索過程を写真で確かめていきたいと思います。
まずは全体像です。体長は8.7mmありました。①の項目は明らかでしょう。
②以降は翅脈に関するものなので、翅全体と基部辺りを拡大した写真を載せておきます。翅脈の名称は「大図鑑」風に書いています。これらの項目のいずれも写真を見るとすぐに分かります。この仲間の特徴は中室から出る脈が2本だけだというところです。
次は頭部を横から見たところです。この写真を見ると、口吻が前方に向いているか、下方に向いているかがよく分からなくなります。写真の左側に単眼がわずかに見えますが、その辺りが頭頂になります。つまりこれを上だとすると、口吻は下方に向いているのように見えるのですが・・・。でも、とにかく、口吻は長い方だとすれば④はOKだということになるのでしょう。
次は後脚腿節と脛節を写したものです。ついでに、前・中脚の腿節も写っています。⑧の後腿節の太さは測ってみました。ほぼ1/7になりました。他は各部の色についてですが、ほぼ書いてある通りです。
ということで、すべての項目を確かめることができたので、スネアカオオヒロバセダカバエ Syneches rufitibiaということになりました。Syneches属は最初オドリバエ科に入れられていたのですが、現在はセダカバエ科に入っています。とりあえず種までは到達したのですが、次の論文によると、日本産セダカバエ科の解明度はわずか20%だということなので、種レベルでは怪しいかもしれません。
中村剛之、「『日本昆虫目録 第8巻 双翅目』の出版と日本産双翅目相の解明度について」、昆蟲(ニューシリーズ) 19, 22 (2016).
スネアカオオヒロバセダカバエについては「大図鑑」に再記載されているので、その特徴と比較してみることにしました。上のリストがその特徴なのですが、写真と比較してみるとほぼ書いてある通りでした。ただ、若干違うところも見られました。
Ⓔ中室は長く、M1+2脈の約1.5倍、
Ⓖ後腿節腹面に腿節幅の1/4~1/3長の黒色棘を密生する
この2点については少し違いました。前者については実測すると1.2倍にしかなりません。また、後者については棘らしきものが見当たりません。「大図鑑」の記述が♂なのか♀なのかが分からなかったのですが、ひょっとしたら♂♀の違いなのかもしれません。また、別種なのかもしれません。とりあえず、第1候補がスネアカオオヒロバセダカバエ Syneches rufitibiaだということにしておきます。
検索に用いなかった写真がたくさんあるので、一応、出しておきます。
これは背面からの写真。
さらに、胸部背面の写真。
これは触角。
これは口吻の基部と先端。
胸部側面。
それに腹部末端の側面と背面からの写真です。ここでだいぶ悩んでしまいました。というのは、こんな形状の腹部末端を持つのはいかにも♀なのですが、頭部を見ると、両側の複眼が中央で接しています(合眼的)。通常、オドリバエでは♂は合眼的、♀は離眼的が多いので悩んでしまったのです。でも、次の論文はSyneches flavitibia♀の記載論文になっていたので読んでみると、♀でも合眼的だと書かれていたので、やはりよいのではと思いました。
G. Wang, N. Wang, and D. Yang, "Species of the genus Syneches Macquart from Tibet, China (Diptera: Empididae)", Trans. Am. Entomol. Soc. 140, 145 (2014). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)
調べたのはこのハエです。一目見てオドリバエの仲間だなと思ったのですが、何となくいつもと違うような感じがしたので、採集しました。オドリバエについては、「双翅目(ハエ目)昆虫の検索システムに関する研究」という三枝豊平氏の科研費の報告書(この題目で検索するとpdfがダウンロードできます)に詳しい説明と検索表が載っています。それを使って調べてみました。
検索の結果、Syneches属になりました。実は初め、④のところで、「口吻は下方を向き、常に短い」という方を選び、Ocydromia属になったのですが、いつもお世話になっている「一寸のハエにも五分の大和魂・改」という掲示板を見て、口吻の向きを間違っていたことが分かりました(詳細はこちら)。いつも口吻の向きのところで間違ってしまいます。
次に種の検索表は「新訂原色昆虫大図鑑III」に載っていました。この検索表ではgrandis, shirozui, rufitibiaの3種を扱っているのですが、「日本昆虫目録第8巻」で調べると、本州産はgrandis, maculatus (≈mascarius), rufitibiaとなっていました。maculatusはヨーロッパからアジアにかけて分布するmascariusと同一だろうということでしたが、これが検索表には載っていませんでした。でも、先ほどの掲示板に写真が載っていたので比べると、明らかに異なるので、たぶん、この検索表で大丈夫だろうと思って試してみました。その結果、スネアカオオヒロバセダカバエ rufitibiaになりました。これら属と種の検索過程を写真で確かめていきたいと思います。
まずは全体像です。体長は8.7mmありました。①の項目は明らかでしょう。
②以降は翅脈に関するものなので、翅全体と基部辺りを拡大した写真を載せておきます。翅脈の名称は「大図鑑」風に書いています。これらの項目のいずれも写真を見るとすぐに分かります。この仲間の特徴は中室から出る脈が2本だけだというところです。
次は頭部を横から見たところです。この写真を見ると、口吻が前方に向いているか、下方に向いているかがよく分からなくなります。写真の左側に単眼がわずかに見えますが、その辺りが頭頂になります。つまりこれを上だとすると、口吻は下方に向いているのように見えるのですが・・・。でも、とにかく、口吻は長い方だとすれば④はOKだということになるのでしょう。
次は後脚腿節と脛節を写したものです。ついでに、前・中脚の腿節も写っています。⑧の後腿節の太さは測ってみました。ほぼ1/7になりました。他は各部の色についてですが、ほぼ書いてある通りです。
ということで、すべての項目を確かめることができたので、スネアカオオヒロバセダカバエ Syneches rufitibiaということになりました。Syneches属は最初オドリバエ科に入れられていたのですが、現在はセダカバエ科に入っています。とりあえず種までは到達したのですが、次の論文によると、日本産セダカバエ科の解明度はわずか20%だということなので、種レベルでは怪しいかもしれません。
中村剛之、「『日本昆虫目録 第8巻 双翅目』の出版と日本産双翅目相の解明度について」、昆蟲(ニューシリーズ) 19, 22 (2016).
スネアカオオヒロバセダカバエについては「大図鑑」に再記載されているので、その特徴と比較してみることにしました。上のリストがその特徴なのですが、写真と比較してみるとほぼ書いてある通りでした。ただ、若干違うところも見られました。
Ⓔ中室は長く、M1+2脈の約1.5倍、
Ⓖ後腿節腹面に腿節幅の1/4~1/3長の黒色棘を密生する
この2点については少し違いました。前者については実測すると1.2倍にしかなりません。また、後者については棘らしきものが見当たりません。「大図鑑」の記述が♂なのか♀なのかが分からなかったのですが、ひょっとしたら♂♀の違いなのかもしれません。また、別種なのかもしれません。とりあえず、第1候補がスネアカオオヒロバセダカバエ Syneches rufitibiaだということにしておきます。
検索に用いなかった写真がたくさんあるので、一応、出しておきます。
これは背面からの写真。
さらに、胸部背面の写真。
これは触角。
これは口吻の基部と先端。
胸部側面。
それに腹部末端の側面と背面からの写真です。ここでだいぶ悩んでしまいました。というのは、こんな形状の腹部末端を持つのはいかにも♀なのですが、頭部を見ると、両側の複眼が中央で接しています(合眼的)。通常、オドリバエでは♂は合眼的、♀は離眼的が多いので悩んでしまったのです。でも、次の論文はSyneches flavitibia♀の記載論文になっていたので読んでみると、♀でも合眼的だと書かれていたので、やはりよいのではと思いました。
G. Wang, N. Wang, and D. Yang, "Species of the genus Syneches Macquart from Tibet, China (Diptera: Empididae)", Trans. Am. Entomol. Soc. 140, 145 (2014). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)
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