「やっぱり 1流の 役者やなあ」
緞帳が 降り 拍手も鳴り止み、会場が明るくなったとき、
その声は、うしろから はっきり聴こえました。
振り返ると、夫婦で 観てらっしゃった おじさんからでた言葉でした。
わたしは うれしかったあ。
楽屋へ飛んでって、飛びついて 今の言葉を 知らせてあげたいくらいだった。
これから、ばらしですので そんな暇はないんですけどね。
結局今日は、きのうの約束の 楽屋へは行きませんでした。
わたしは、アナウンスをすることになっていたので 風間さんの音あわせのあと、
わたしの、音あわせで、すぐそこで 本番の歌声が 聴こえてきてました。
演劇鑑賞会の事務局長が 「きのう言ってたから、楽屋行く?」って 聴かれたけど、
「行かない」と答えました。
なぜって??

この日は 朝9時からの搬入です。
「ひとり芝居なのに、どうしてこんなにセットがあるのーーー??」と私は叫びます。(笑)
搬入が終わると、ススキを活けます。
「葉っぱがさあ、風になびいてるように 活けようよ。
これじゃ、枯れてるみたいやなあ!!」
「どの場面で出てくるんやろう!!このすすき!!」
そんな話をしながら、葉っぱをつめでシューーと そり返すと、あーーら不思議!
生き生きしてくるじゃあありませんか。
「なんかうれしい!!ちょっと、カメラ取ってくる!!」
パシャ!!

「こっちへ、二人お願いしまーーす」照明さんから声がかかります。
「これやってください!!」
「・・・・こんなんやったことなーーい」
照明のフィルムを赤からオレンジへ、黄色から青へ はめ替えます。
昔、演劇部だったおばちゃんが、「これはね、ゼリーを作るときのゼラチンなのよ」
って教えてくれます。
「きれいに張らなきゃね、風間さんが、気持ちよく舞台やれるように!!」
そういいながら、私の手が、この舞台に 少しづつ加わっていきます。
「終わりましたあ!!」 おっ!まるで風間スタッフです。
「じゃあ、掃除機かけて下さい!」
「はい!!」返事はいいけど、家でもこんなに掃除はしないぞと思うくらい、
細かい木屑が つまってる 舞台上を 吸わない掃除機で
ごしごし力を入れて磨くように すみからすみまでやっていきます。
(あーーー、腰が痛い・・・)
風間さん。ここにも立つだろうなあ、ほこりが舞わないように 蛍光シールと間違わないように
きれいに とってしまうぞーー!! どんどんきれいになります。
「じゃあ次は、脚立持ち二人おねがいしまーーす!」と、照明の親分。
(なあんだ、脚立もっとくだけか。)
ところがどっこい、まあ、脚立の上に立つ人が見えないくらいに 高い脚立です。
その上で、2時間以上、すべてのライトを 風間さんの シーンごとの立ち居地に
1個1個 合わせていきます。
こんなに長い時間、上に立って、手を伸ばし やってる照明さんもすごい!
(よかった、掃除機ですったから 光があたっても ばっちり!きれい!)
「りおんちゃん、花束お願いね。あとで、制作さんとどの場面で渡すか
打ち合わせしてね。」
こうして作り上げた この舞台。
本番前、わざわざ楽屋に写真撮りに行かなくっても、風間側の人間として動いてます。
「5分押しね!!」「はい!」 開演、6時35分。
アナウンスの私は、10分前に 舞台下手の そでにスタンバイしました。
本番5分前!!
楽屋から 風間さん。そでに入ります。
いま、下手のそでには 風間さんと私だけ。 ピーーーンと緊張が走ります。
目で、「うん!!(がんばれ!!)」と 送ります。
風間さんも すかさず 目に力が入り うん!!とうなづき 中へ。
舞台監督さんがやってきます。
本番3分前!!
舞監「1ベルはいります!」「ヴィーーーーーーーーーーーー」
照明さん、音響さん、舞台監督さん、みんながそれぞれのポジションにつきます。
「どうぞ!!」
深く深呼吸をして、みんなの気を全身に感じ
この舞台の 始まりの喜びを 告げる役目に感謝して、
みほ「 本日は トム・プロジェクト プロデュース「風間 杜夫 ひとり芝居
三部作に ご来場いただきまして 誠にありがとうございます。
開演に先立ちまして、お客様にご案内申し上げます・・・ ・・・」
舞台では シーンごとにスポットライトの中で 風間杜夫なのだけれど、
団塊の世代の どこにでもいそうな 三枚目の 一人の男の人生が
描かれる。
奥さんのあきれた顔も見えるし、父親を馬鹿にした 遊び歩く予備校に通う息子も、
夜遊びばかりで、だらしのない大学生のお姉ちゃんも見えるし、病院の先生も、
浮気相手のれいちゃんの 態度も顔も、
大きな足を丸出しした女子大生も、ママの言いつけで塾に通う男の子も
公園の全景も、実家の風景も、やさしかったお母さんの面影も、初年時代も、
昔の、なつかしい日本も、いまの、ゆがんだ日本も、
すべて、映像でみているかのように 見える。見える。
そして、主人公のサラリーマンのお父さんの素顔、気持ちの中が 見えてくる。
社会全体の仕組みが見えてくる。
一番大切なことが見えてくる。
あーーー、あなたはすばらしい。
きのう、言った ことばは、大げさでも、うそでも、はったりでもなかった。
3時間は あっという間だった。
3時間は 一人の男の人生を 描いた。
3時間が 終わったけれど、 もっとみていたいと思った。
今こうして、観客の心をとらえ、自分におきかえ、人生を振り返る。
風間杜夫という、本物の役者を通して。
「やっぱり 1流の役者やなあ!!」
後の席のおじさんがつぶやいた。
おじさんの言葉が おじさんの人生を通して、わたしのからだに 突き刺さった。
緞帳が 降り 拍手も鳴り止み、会場が明るくなったとき、
その声は、うしろから はっきり聴こえました。
振り返ると、夫婦で 観てらっしゃった おじさんからでた言葉でした。
わたしは うれしかったあ。
楽屋へ飛んでって、飛びついて 今の言葉を 知らせてあげたいくらいだった。
これから、ばらしですので そんな暇はないんですけどね。
結局今日は、きのうの約束の 楽屋へは行きませんでした。
わたしは、アナウンスをすることになっていたので 風間さんの音あわせのあと、
わたしの、音あわせで、すぐそこで 本番の歌声が 聴こえてきてました。
演劇鑑賞会の事務局長が 「きのう言ってたから、楽屋行く?」って 聴かれたけど、
「行かない」と答えました。
なぜって??

この日は 朝9時からの搬入です。
「ひとり芝居なのに、どうしてこんなにセットがあるのーーー??」と私は叫びます。(笑)
搬入が終わると、ススキを活けます。
「葉っぱがさあ、風になびいてるように 活けようよ。
これじゃ、枯れてるみたいやなあ!!」
「どの場面で出てくるんやろう!!このすすき!!」
そんな話をしながら、葉っぱをつめでシューーと そり返すと、あーーら不思議!
生き生きしてくるじゃあありませんか。
「なんかうれしい!!ちょっと、カメラ取ってくる!!」
パシャ!!

「こっちへ、二人お願いしまーーす」照明さんから声がかかります。
「これやってください!!」
「・・・・こんなんやったことなーーい」
照明のフィルムを赤からオレンジへ、黄色から青へ はめ替えます。
昔、演劇部だったおばちゃんが、「これはね、ゼリーを作るときのゼラチンなのよ」
って教えてくれます。
「きれいに張らなきゃね、風間さんが、気持ちよく舞台やれるように!!」
そういいながら、私の手が、この舞台に 少しづつ加わっていきます。
「終わりましたあ!!」 おっ!まるで風間スタッフです。
「じゃあ、掃除機かけて下さい!」
「はい!!」返事はいいけど、家でもこんなに掃除はしないぞと思うくらい、
細かい木屑が つまってる 舞台上を 吸わない掃除機で
ごしごし力を入れて磨くように すみからすみまでやっていきます。
(あーーー、腰が痛い・・・)
風間さん。ここにも立つだろうなあ、ほこりが舞わないように 蛍光シールと間違わないように
きれいに とってしまうぞーー!! どんどんきれいになります。
「じゃあ次は、脚立持ち二人おねがいしまーーす!」と、照明の親分。
(なあんだ、脚立もっとくだけか。)
ところがどっこい、まあ、脚立の上に立つ人が見えないくらいに 高い脚立です。
その上で、2時間以上、すべてのライトを 風間さんの シーンごとの立ち居地に
1個1個 合わせていきます。
こんなに長い時間、上に立って、手を伸ばし やってる照明さんもすごい!
(よかった、掃除機ですったから 光があたっても ばっちり!きれい!)
「りおんちゃん、花束お願いね。あとで、制作さんとどの場面で渡すか
打ち合わせしてね。」
こうして作り上げた この舞台。
本番前、わざわざ楽屋に写真撮りに行かなくっても、風間側の人間として動いてます。
「5分押しね!!」「はい!」 開演、6時35分。
アナウンスの私は、10分前に 舞台下手の そでにスタンバイしました。
本番5分前!!
楽屋から 風間さん。そでに入ります。
いま、下手のそでには 風間さんと私だけ。 ピーーーンと緊張が走ります。
目で、「うん!!(がんばれ!!)」と 送ります。
風間さんも すかさず 目に力が入り うん!!とうなづき 中へ。
舞台監督さんがやってきます。
本番3分前!!
舞監「1ベルはいります!」「ヴィーーーーーーーーーーーー」
照明さん、音響さん、舞台監督さん、みんながそれぞれのポジションにつきます。
「どうぞ!!」
深く深呼吸をして、みんなの気を全身に感じ
この舞台の 始まりの喜びを 告げる役目に感謝して、
みほ「 本日は トム・プロジェクト プロデュース「風間 杜夫 ひとり芝居
三部作に ご来場いただきまして 誠にありがとうございます。
開演に先立ちまして、お客様にご案内申し上げます・・・ ・・・」
舞台では シーンごとにスポットライトの中で 風間杜夫なのだけれど、
団塊の世代の どこにでもいそうな 三枚目の 一人の男の人生が
描かれる。
奥さんのあきれた顔も見えるし、父親を馬鹿にした 遊び歩く予備校に通う息子も、
夜遊びばかりで、だらしのない大学生のお姉ちゃんも見えるし、病院の先生も、
浮気相手のれいちゃんの 態度も顔も、
大きな足を丸出しした女子大生も、ママの言いつけで塾に通う男の子も
公園の全景も、実家の風景も、やさしかったお母さんの面影も、初年時代も、
昔の、なつかしい日本も、いまの、ゆがんだ日本も、
すべて、映像でみているかのように 見える。見える。
そして、主人公のサラリーマンのお父さんの素顔、気持ちの中が 見えてくる。
社会全体の仕組みが見えてくる。
一番大切なことが見えてくる。
あーーー、あなたはすばらしい。
きのう、言った ことばは、大げさでも、うそでも、はったりでもなかった。
3時間は あっという間だった。
3時間は 一人の男の人生を 描いた。
3時間が 終わったけれど、 もっとみていたいと思った。
今こうして、観客の心をとらえ、自分におきかえ、人生を振り返る。
風間杜夫という、本物の役者を通して。
「やっぱり 1流の役者やなあ!!」
後の席のおじさんがつぶやいた。
おじさんの言葉が おじさんの人生を通して、わたしのからだに 突き刺さった。
