ある税理士のつぶやき(旧:とある明石の弁護士、つれづれ日記)

弁護士(りんどう法律事務所)を廃業し、現在、姫路市で税理士をやっています。折に触れ、生活情報等をつぶやきたいと思います。

小規模の副業(一般の営業等所得)の白色申告 収支内訳書作成ツール

2022-02-25 15:08:48 | 日記

会計ソフトを買うまででもないが、小規模の副業(一般の営業等所得(=農業、不動産所得でない))で収入があったので、とりあえず白色申告をしておきたい…という人の為のエクセルツール

(使えそうならお使いください。)

確定申告時期ですので確定申告が必要な方は、忙しい時期ですね。

税理士に依頼している方や毎年自分でやっているのでもう慣れている…という方は焦っておられないと思いますが、「今年初めて」という方は、どれだけ時間があっても不安なものです。

そういう方は、国税庁のサイト「確定申告書等作成コーナー」を使って、確定申告書や収支内訳書などを作成するのが便利で確実です申告額や還付額を計算し、提出用の正式な書式に記載してくれますので、あとはそれを印刷して紙で提出するか、電子データを提出(電子申告=e-Tax)します電子申告するには、事前申請が必要です(cf.ご利用の流れ)。また、紙での提出は郵送でも可能です。)。

ただ、「確定申告書等作成コーナー」を利用するとしても、収入や経費の金額は自分で計算して入力しないといけません。初めてとか経験の少ない方は、収入や経費の種類(勘定科目といいます)をどのようにまとめて計算するのか分からなかったり、自分のまとめ方でいいのか不安になったり、収入支出を家計簿式に付けているが、計算の為に同じ種類の出入りを拾い出し、まとめて計算していくのは面倒…という方が多いのではないかと思います。

それで、少しでもその手助けにならないか、と思いエクセルの計算ツールを作ってみました。ただし、「収入や取引が多く青色申告するんだ」という方は複式簿記形式で入力できる高性能・高機能の会計ソフト、申告ソフトを利用されるか、税理士に依頼されて下さい。

当方のソフトは、あくまで「副業的なものをやって多少の収入があったので、簡単といわれている白色申告したいが、その手助けになる無料のツールは無いか?」という方向けの、小規模白色申告に特化したソフト(ツール)です。

 

本エクセル計算ソフトの特徴

一般用(営業等所得=農業所得、不動産所得でない)の白色申告用の収支内訳書に入力する金額を計算するソフトです。エクセルシート1枚で構成しています。

家計簿式で収入支出の出入りを記帳している方が、そのままエクセルに転記(金額と摘要の入力(「摘要」とは、家計簿付けていれば、通常、収入、支出について、その内容を示すメモをしていると思います。そのことです。)していきます。収入支出を一緒に記載している人用のシートと、分けて記載している人用のシートがありますので、自分の付け方に合う方のシートを利用されて下さい。

 

本エクセル計算ソフトを利用される方に注意していただきたいこと。

1.利用したい方がいらっしゃれば、ご自由に利用して頂いて結構です。当方には連絡等は不要です。

挿入した関数が壊れないように保護を掛けていますが、パスワード等は設定しておりませんので、必要に応じて改良(変更)して頂いても結構です。

(但し、目的外使用等の場合に備えて、著作権が当方にあることを一応申し添えておきます。)

2.個別の質問等にはお答えできません。

本ソフトについての個別のご質問にはお答えできません。コメントでのご質問にもお答えいたしかねます。当方の事務所は、全くの一人事務所なのでマンパワーが足りません。その点、何卒ご了承ください。

会計自体や確定申告自体に関する疑問等は、税理士の先生が作成や監修されていたり、会計ソフトの会社が作成されている、図入りの分かり易いサイトが沢山出ています。そちらを参照されると参考になると思います。

3.ソフト(エクセルツール)のダウンロードURL

以下にアップしていますので、そこよりダウンロードして下さい(本日より4月26日までダウンロード可能です。)。 当ブログで説明したデータが入っていますので、そのデータを削除してご利用ください。

ダウンロード用URL:https://13.gigafile.nu/0426-ccd313e508e5a09b30e9cdb453a7da2cb

 

本ソフト(エクセルツール)の使い方(入力例で示します。)

では、以上を前提に、ここからは使用方法を説明していきたいと思います。

1.申告例の内容(自宅で習字教室を開いている人が申告するケースを想定)

今、自宅で副業的に習字教室を開き、少人数ながら近所の人が習いに来ているという人の確定申告を想定します。

習字教室について、以下のような家計簿式の出納帳をつけています(当方の時間の都合で、5月1日までしか入れていません。個人の確定申告の年度は、1月1日~12月31日までですが、ご了承ください。)

以上を、今年初めて国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用して、確定申告書を作成することにしたとします。

2.まず、前記の(家計簿式の)出納帳をエクセルに転記

本ソフトですることは、基本的に前記の(家計簿式の)出納帳をエクセルに転記するだけですが(下記)、その際、この次の作業である、「確定申告書等作成コーナー」の収支内訳書に、計算結果をスムーズに転記できるよう、各収支に収支内訳書と同じ「科目番号」振って行きます(下記)。その作業が単なる転機ではなく、ちょっとした判断が必要です。ただし、そんなに難しくはありません。本格的な事業をやって大きな売り上げがある、取引が頻繁にあって出入りが多い等なら別ですが、収入と支出をしっかり分けられてさえいれば、科目が間違ったからと言って、申告が無効になったり、税務署から怒られたりしません。それより面倒だからと言って、申告をしないことの方が、追徴税を取られたり、税金の還付を逃す等、不利益を被る可能性があります。

そして、上記、エクセルの「収支内訳書(一般用) (e-Tax入力額計算用)」の部分に計算結果として表示されている、各科目の金額を、「確定申告書等作成コーナー」の、「収支内訳書」にそのまま転記していきます(下図)。

なお、確定申告書等作成コーナー」の収支内訳書の、例えば「売上(収入)金額」(1)のように青字になっている箇所は、その横に直接金額を入力することはできず、青文字をクリックすると、入力画面が出てきます

 

各科目は、名前から大体想像できると思います。それで番号付与(分類)していってもらえば良いのです。

以下に、ちょと注意が必要な科目だけ説明します。

(1)収入部門

(1)収入部門

科 目 名

番号

意 味

家事消費

販売用に仕入れていたものを、私的に消費した場合にこの番号を付けます。

本例では、生徒が必要になった時に買っていた半紙を、習字教室とは関係なく自分用に使った時に収入の一つ「家事消費」としています。

収入?と不思議に思われるかも知れませんが、生徒用の半紙を買った時に、全額を費用として計上していますので、その中で費用とならなかった分を「収入」として戻しているイメージです。

その他の収入

本業以外だが関連性ある収入の場合に、この科目にします(普通は少額)。ですので、事業とは全く関係ない収入は記載する必要はありません(お年玉やお誕生日祝い金等は、もちろん記載する必要はありません。しかし、開店のお祝い金は計上する必要があります。)。

本例では、習字教室の生徒月謝でなく、所属している習字教室が、長年所属しているということで、たまたま功労金を支給してくれたものを、その他収入としました。ただ、これも習字教室が習字協会と密接に関係があり、生徒数に応じて定期的に配当がある等の場合は、単に「売上」になります。

ただ、あまり神経質になる必要はありません。

 

(2)売上原価部門

   売上原価は、「期首」とか「期末」とか聞き慣れない言葉が出てきますし、「商品(製品)」と「製品製造原価」の関係等、つきつめて考えると、ちゃんと会計を勉強しないと難しいですが、自宅副業で白色申告レベルでは以下のように考えれば良いと思います。

科 目 名

番号

意 味

仕入金額               (製品製造原価)

販売用に仕入れていた商品があれば、その仕入額を、材料を使って自分で作ったものを売っているのなら、その作ったものに使った材料費のことです。ここで注意するのは、材料として買ったものでも、まだ使っていないもの、作成途中でまだ売り物にならないものに使っている分の材料費は計上できないということです。

本例では、生徒が必要になった時の為として買った半紙の金額全額を仕入金額としています。

もし、自分でぬいぐるみを作って、気に入った人がいたら売っている…という副業だとしたら、ぬいぐるみ作成に使った布、糸、綿等の合計額のうち、実際に完成しているぬいぐるみに使った分を計上する…ということになります。「そんなの分からないよ!」と思われる人も多いと思いますが、材料の残っている分から、大体の目安で金額を出せば良いと思います。完璧、正確じゃなくても結構です。

期首商品(製品)

前年度仕入れた商品で売れ残っていた分。または製造が完了していた商品で売れ残っていた分(あくまでも売ることができる分なので、作りかけのものは入りません)。

今年度も引き続き販売するものなので、計上します。これは原則、前年度の「期末商品(製品)(7)」の金額と一致します。

本例では、前年度、余った半紙は無かったのでゼロです。

期末商品(製品)

今年度仕入れた商品で売れ残っていた分。または製造が完了していた商品で売れ残っていた分(あくまでも売ることができる分なので、作りかけのものは入りません)。

本例では、半紙が1000円分残っているので、それを計上しています。

なお、収支を分けて入力される方(「白色申告金額計算(経費収入分けて記載用)」のシートを使う方)は、この科目は、“(収入関係)”の方の表に記入して下さい。イメージとしては、「家事消費」(2)の場合と同様で、今期の原価に入らない分を収入として戻しています。

 

(3)経費部門  

 

科 目 名

番号

意 味

給与賃金

11

名前のとおりですが、一緒に暮らしている家族に手伝ってもらっている場合は、給与を支払っても経費になりません。ただし、「事業専従者」と言う制度があります。ただ「専従者」というぐらいなので、たまに手伝ってもらっている…という場合は、専従者にあたりません。

専従者であれば、白色申告の場合、給与の実際額に関係なく、配偶者なら86万円等の「専従者控除」という計算上の定額控除ができます

白色申告で専従者となるための法律上の要件は、一応、以下の通り。

1 白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。

2 その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。

3 その年を通じて6か月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること。

に全て該当すること。

外注工賃

12

自分のやっている事業に関して、外部の事業者に依頼した時(請負契約や委託契約などと言います)です。例えば、自分の業務の紹介HPの作成を依頼した場合などです。

1回きりや何回か繰り返し依頼する場合もあると思いますが、アルバイトや期間従業員と違うのは、独立した業者に依頼するところです。給与との区別を明確にするために、請負契約や委託契約をしておくのが良いでしょう(小規模ではあまり神経質になる必要はありませんが。)。

接待交際費

意味はお分かりと思いますし、想像もし易いと思います。直接の営業でなくても、間接的に事業に関係がある場合でも計上できます。

飲み会三昧で交際費が多額とか、1回でも海外旅行でウン十万使った…と言うことでなければ、例えば本例で、習字教室の生徒さんは町内の近所の人ばかり。今度町内でクリスマス会をやることになって呼ばれている…というような場合、町内の付き合いをした方が、習字教室に好感を持ってくれる…というような程度でも、そのクリスマス会参加の費用を交際費にしても問題ないと思います。

(あくまで個人を想定しています。法人は交際費についていろいろ縛りがあります。)

福利厚生費

全く一人で事業をしている人、一緒暮らしている(専従者となるような)家族とだけで事業をやっている人の場合は、福利厚生費を費用計上できません。

福利厚生費は、あくまで従業員のためのものなのです。ですので、本例なら、習字教室の生徒さんにお茶菓子を出したとしても、それは「消耗品」、「交際費」、「雑費」等で処理してください。

雑費

雑費も意味は明白でしょう。少額で、どれに分類していいかよく分からないものは雑費で良いと思います。

 

3.お得意先、特定の仕入れ先がある方は、もう一手間

本ソフトを利用する事業規模の人は、あまり関係ないと思うのですが、頻繁に取引する、販売先や仕入先がある場合は、白色申告の内訳書の2ページに、販売先、仕入先別に1年間の取引金額を記入する箇所がありますので(下記)、そこに記入するために、エクセルシートの“「売上(収入)金額の明細の入力」(裏面)記入用”や“「仕入金額の明細の入力」(裏面)記入用”の所に、販売先、仕入先の摘要部分を転記します(下記)

前記した国税局の「確定申告書作成コーナー」の、「売上(収入)金額の明細の入力」や「仕入金額の明細の入力」に記入する金額を計算するために、本エクセルシートの、「収支内訳書(一般用) (e-Tax入力額計算用)」の下部にある、“「売上(収入)金額の明細の入力」(裏面)記入用”及び“「仕入金額の明細の入力」(裏面)記入用”に、摘要に記載した販売先や仕入先の名前を記載してください。

このように、摘要に記載されている名前をターゲットにして集計を出すのですが、検索する名前と摘要の記載が完全一致していないといけません。ですので、みなさんが作成した出納帳からエクセルに転記する時、摘要には販売先や仕入先は名前だけ記載し、同じ取引先は同じ名前(文字&字数)する等の手当をしておいて下さい。なお、エクセルに詳しい方は、このような作業をしなくても、フィルター機能で同じ名前の店を抽出し、その金額の合計を出すことはできると思います。どうするかは、利用される方でご判断下さい。

 

※ 生徒さんの月謝等を、販売先として入力した例

以上のように、得意先や、頻繁に取引する特定の仕入先があれば、上記のように明細に、得意先、仕入先の事業者名毎に、1年間の取引額を集計した金額を記入します。

ただ、本エクセルを使おうと思われる方は、そこまで特定の販売先や仕入先が無い方だと思いますし、特定人からの毎月の売上でも、本例の「月謝」のような一般個人の支払いなら、「売上先名」に住所まで記入しなくても良いと思いますし、名前も苗字程度で十分だと思います。また規模からすれば、「2.まず、前記の(家計簿式の)出納帳をエクセルに転記」の項目の、“売上(収入)金額”の入力の説明の箇所で示したように、“「上記以外の売上先の計」の入力欄”に、1年間の全売上金額を一括入力すれば大丈夫と思います。

 

4.家計簿式の)出納帳を転記する、エクセルのエリアが足りなくなった時

転記するエリアの「行」をコピーし、転記エリアの途中に挿入してください。

5.最後に、「確定申告書等作成コーナー」の使い方の概要(順番)

以上で、本ソフトの使い方は終わりです。

最後に、「確定申告書等作成コーナー」の使い方の概要を少し。

ホントに概要です。詳細は、いろいろなサイトで紹介されていますし、国税局の当該サイトのメニューも分かり易いので、その指示通りに進んで頂ければ良いと思います。

もちろん、最初は、試行錯誤しながら進むと思いますが、一度入力すると、大体感じが掴めて、次からはかなりスムーズに使えると思います。

以下、印刷して提出する場合を想定し、確定申告書等作成コーナー利用の大まかな流れを…

(1)国税庁の「確定申告書等作成コーナー」のサイトにアクセスし、

(2)最初に作成するのは、収支内訳書

(3)作成した収支内訳書を印刷

   収支内訳書への入力が終了し、メニューに沿って進むと、申告者の氏名や住所を入力する画面等が出てきます。その作業も終了すると、印刷画面が出てくるので、収支内訳書を印刷してください。

(4)作成した収支内訳書のデータを、メニューに従って保存

   また作成した収支内訳書のデータを、修正等の為に保存します。

(途中まで作成した場合も、保存して後で再開できるように、現状データを保存できます。)

(4)続いて、確定申告書を作成するなら、続いて申告の作成を行います。

以上です。


労働時間の計算と割増賃金額の計算

2022-02-08 12:28:52 | 日記

残業代(割増賃金)計算エクセルの再アップ

 残業しているのに残業代が支払われていない…という方で、タイムカードはないけど、労働した時間は分かるんだけどなあ…という方の残業代の計算に活用できるのではないかと思います。必要であればお使いください。
(自由にダウロードして頂けます。ダウンロードURLは後記します。)

 まず、簡単な使用例を以下に記載しますので、自分のケースに適しているかどうか判断されて下さい。

 下図のように、作業(労働)の始まりの時刻と終わりの時刻を入力すると、残業代(法定の割増賃金となる部分)が自動計算されます(下図)。

 

 したがって、本ソフトはタイムカードが無いため、時刻を入力して労働時間を計算しなければならない場合に向いています。例えば、トラックのタコグラフやパソコンの作業ログから労働時間を算出するような場合です。
 以下、本未払賃金計算用エクセルについて、詳しく説明して行きます。

残業代(割増賃金)計算エクセル

以前、未払賃金請求事件(割増賃金分等の請求)の時に使った賃金額を計算するソフトです。エクセル関数を使って作成しています。

タイムカードではなく、勤務の開始/終了時間が分かるような資料(タコグラフ等)から労働時間を計算したい場合に適しています。利用できそうであればご利用ください。

(1カ月分用と予め1月~12月まで準備、合算計算するようになっている1年分用があります。1年分用は、結構容量が大きいので、ダウンロードや保存の場合、時間がかかるかも知れません。ご注意下さい。)

本エクセル計算ソフトの特徴

本エクセル計算ソフトの特徴は、

1.労働の始まり、休憩の始まり(=労働の終了)の時刻を入力するだけで、

 - 1日8時間超、週40時間超、深夜早朝、法定休日、の各割増賃金を計算します。

  (月60時間超の割増には対応しておりません。

 - 1日の終了時刻(定時)を超えて、日付を跨いで労働した場合も、労働基準局の通達に従って、継続日労働と翌日の労働に入る分を分けて自動計算します。

2.1年分用のエクセルを利用した場合は、当月から翌月へ引継ぐべきデータがあれば(週労働時間等)を。自動的に翌月に引き継ぎます。

本エクセル計算ソフトの利用が適していると思われる業務形態

以上の特徴から、冒頭でも述べましたがタイムカードが無いような、不規則な労働形態の業種の賃金計算に合っていると思います。

例えば、長距離トラックの運転業務等です(実際に私が担当した事件も、長距離トラックの運転業務でした。)。運転業務は、タイムカードでの労働時間管理が難しく、また到着時間が決まっているのに、交通の状況は一定ではなく、事故渋滞等があれば、しばしば就業時間外の運転となり、さらに夜通し運転するということもあるからです。したがって、タイムカードに打刻して労働時間を管理する…というような方法は業務形態に合わず、タイムカードが労働実態を反映していない、そもそもタイムカードが打てない…という場合も多く存在します。

ただ、長距離運送用のトラック等には、タコグラフ(運転記録計)が装着されていることが多く、その記録を見れば走行と停止の時刻が分かり、走行=運転業務=労働時間と考えることができるので、タコグラフがあれば労働時間がかなり正確に把握できることになります。

ただ、「走行開始-走行-停止」という行程は多数繰り返されるので、そこから運転時間を抽出し、それを合計し労働時間を計算するのは、かなり煩雑な作業になります。

その労力をできるだけ軽くしようと思い、本計算エクセルを作成しました。

本エクセル計算ソフトを利用される方に注意していただきたいこと。

利用したい方がいらっしゃれば、ご自由に利用して頂いて結構なのですが、以下の点はご了承、ご注意ください。

1.自己責任で使用して下さい。

一応実際の訴訟で使用し、賃金訴訟では良く利用されていると思われる、『残業代計算ソフト(エクセルシート)「給与第一」』(京都第一法律事務所 弁護士 渡辺 輝人先生の作品)の計算結果と基本的に同じ結果でしたので、利用した範囲では計算間違い等のバグは無いと思います。しかし、本業の傍らで、私一人で作ったものなので、いろいろなテストをしておりません。ですので、潜在するバグが無いとは言えません。それを了承して、利用者の自己責任でご利用下さい。当方は一切の責任を負いかねます。

(私は、以前富士通のソフト開発部門にいました。その時は、ソフトができれば、条件に合わせてテスト項目を作成し、個人・チームでテストし、また別途検査課がテストしたりしてましたが、そのような十分なテストは、およそできておりません。その点ご注意下さい。)

2.著作権について

賃金計算する為に、当方には連絡不要です。ご自由にコピーしてご利用なさって下さい。
また、ソースもオープンにしておきますので(保護しておりません(=エクセルソフトがあれば編集が可能)。)、関数の内容は自由に見ることが可能です。また、非表示部分の再表示も自由にできます。)、必要に応じて改良(変更)して頂いても結構です(但し、提供しているエクセル表の行、列を、コピー、挿入、削除等で単純に増減させると労働時間の計算は出来なくなりますのでご注意ください。その点、自己編集する場合は、単なる表ではなくアプリのようにプログラム内容を理解して扱ってください。)。

ただ、そのような需要は無いと思いますが、このソフトを販売したりする等、当該ソフト自体を対象とした営業(利益)行為をする場合は、当方の承諾を得て下さい。無断でそのような行為をなされますと、著作権侵害となる可能性があります。ソースを多少の改良(変更)をしたとしても、同一性が認められる限り、著作権の対象となります。

3.個別の質問等にはお答えできません。

分からないことや問題が発生したとしても、個別のご質問にはお答えできません。

コメントでのご質問にもお答えいたしかねます。

当方、現在、個人的な事情で弁護士業を廃業したこともあって、マンパワーが足りません。その点、何卒ご了承ください。

残業代(割増賃金)計算エクセルのダウンロードURL

  以下にアップしていますので、そこよりダウンロードして下さい。
  1カ月分用は、当ブログで説明したのと同じデータ(10月6日~9日)が入っています。ご注意ください。

ダウンロード用URL:https://34.gigafile.nu/1109-b693015d53ebd4d2f7bfa0e981f8fafab

本エクセル計算ソフトの使い方(入力例で示します。)

では、以上を前提に、ここからは使用方法を説明していきたいと思います。

運転業務を想定し、デジタコ(デジタルタコグラフ)の入力を例に、具体的例で説明したいと思います(細かい使い方は、マニュアル(現在、作成中)をダウンロードして参照下さい。)。

1カ月分用と1年分用がありますが、入力方法は同じなので、1カ月分用(「割増賃金計算(1カ月分用)」)への入力例を説明していきます。

1.入力するデジタコ(デジタルタコグラフ)

佐藤太郎という運転手さんの、2021年10月6日~9日の、以下のようなデジタコ(デジタルタコグラフ)があったとして、それを入力していきます。

2.未払賃金を請求する会社の勤務、給与関係の条件等

佐藤さんが所属し、未払賃金を請求する会社の、勤務および給与関係で、本エクセルでの計算に必要な条件は以下のとおりです。

1.始業:午前8時30分・終業17時30分の1日8時間労働(昼休み1時間)

2.法定休日:毎週日曜日

3.給与の支払い:毎月20日締めで、翌月10日支払い

4.佐藤さんの基礎賃金(時給換算):1132円/時 (給与規定・就業規則から、月給20万円/月、令和3年度所定労働日数265日…で計算)

また、

5.運転中断があっても休憩とせず、「労働している」とする中断時間を 30分

6.午前0時を過ぎて運転した場合に、運転を中断しても翌日の労働とならない中断時間の上限を 4時間 とします(→ “午前0時を越えてから4時間を超える休憩をとると、その後の運転は次の日の労働分となる”という意味です = 8時間超となる場合が減る。)。

最後の2つ(5と6)は、絶対必要なものではなく、設定しなくても構いません。本例では、「実際の妥当性」という観点から、設定したということにします。

3.入力作業その1 エクセルの「計算用必要事項入力」シートへの入力

上記1.の条件を、エクセルの最初のシートである「計算用必要事項入力」に入力します(以下)。

割増賃金を計算する元となる基本条件のデータの設定です。

(上記で、法定休日は、日~土を選択できるようにしているのですが、週の労働時間の起算点は、“日”固定です。その点、選択できるになっていません。すみません。)

4.入力作業その2 エクセルの「労働時間計算」シートへの入力

(1)時間の基本的入力方法

10月6日のデジタルタコメ(デジタコ)の入力を例に、時間(時刻)データの基本的入力方法を説明します。

先にも示しましたが、10月6日のデータは以下でした。このデジタコには、速度、 回転数、距離等のグラフが載っていますが、一番変化の分かり易い「速度」のグラフから、「運転=労働」、「停止=休み」と考えて、その時刻を入力していくことにします。

もちろん、停止中でも、運送業務なら、荷物の積み下ろしや、給油等の労働があります。その場合は、速度がゼロに関わらず労働時間として、労働時間項目のエリアに入力します。 しかし今回は、分かり易いように「運転」と「停止」だけにしています(その方が後のチェックはし易いです。)。

上記を、「労働時間計算」シートの、時間(時刻)入力エリアに入力したものが、次ページのものです。

なお、時刻の入力は、極力テンキーだけでできるように、時間と分の区切りは「:」(コロン)ではなく「.」(ピリオド)で行いますこの点、前述した「計算用必要事項入力」シートへの時間入力と異なります。) 例えば、“10時13分”なら「10.13」です。

なお、最後尾のゼロは省略できます。よって、10時10分なら「10.1」で大丈夫です。

今回は入力方法を説明するために、かなり細かく時間(時刻)を入力しています。例えば1~2分程度で運転―停止している時刻も入力しています。

実際の作業では、どこまで細かく入力するかは、入力者の裁量です。あまり大雑把だと、相手方との交渉に差し支えが出たり、訴訟では計算の信用性に響く可能性もあります。一方で、あまり細かいと作業が煩雑になるばかりでなく、チェックも大変ですし、ミスも多くなり、かえって不正確になります。また、1~2分の走行が突然ちょこっと現れているだけなら、使用者側から「業務の走行じゃない」等と主張されることもあるでしょう。もちろん、目的地について荷降ろしの間に、ちょっと車両を移動することもあるので、1~2分の走行だって業務中ということは全然あると思います。

ですので、入力者の方は、予めどういう方針で時刻を入力していくかを考えて入力し、相手方や裁判官から質問があれば、方針を説明して説得するということが重要です。

なお、時刻を入力する時、昇順に並べたり、詰めて入力する必要はありません。その項目のエリア内なら自由に入力してもらって結構です。時間計算時に自動的にソートして計算します。

ですので、入力後のチェックで、抜けや間違いが見つかったとしても、全体を並べ直す必要はありません。後ろに追加したり、余分なものを削除するだけで結構です。

例えば、10月6日のデータも以下のようにバラバラに入力しても大丈夫です。

最後に、残りの10月7日~9日の速度チャートからの時刻の入力は下記です。

10月7日

10月8日

10月9

5.割増賃金の計算結果

以上で、時間(時刻)の入力は終了です。

上記4日分の入力および割増賃金の計算結果は、「賃金計算(最終議考慮)」シートに表示されます(以下)。

1カ月用であろうと、1年用であろうと、時間のデータがある部分だけ入力すれば計算します。

※ 上記、労働時間の表記で、週40時間超と1日8時間超が重複するときは、40時間超のみ表示され、8時間超は表示されません。

もし、残業代等として支払われている金額があれば、既払金を入力する部分に、その金額を入力して下さい。手当名(例えば、深夜手当とか休日手当等)は記載してもしなくても結構です(以下)。

6.チェック時に役立つ計算過程の表示について

入力部分や計算結果ではないですが、入力後に時刻の入力が正しいか確認するのに、役に立つかもしれない情報がありますので紹介しておきます。

それは、上記4日分の計算過程を表した部分です。

「労働時間計算」シートの、時刻入力部分(黄色エリア)の右側の部分です(下図)。

通常は気にする必要はありませんが、上部の「労働」(又は「休み」の)項目部分と開始時刻の表示は、後で入力時刻が正しいか、抜けが無いか等をチェックする時に使えると思います。

7.「1年分用」利用時の注意点

今まで説明してきた、「1カ月分用」の入力方法と、「1年分用」は、まったく同じ入力方法ですが、1年分を利用して、複数月を一度に入力する場合に、下記を実践して頂ければ、より正確な賃金計算ができます(1カ月分を利用して、連続する月を処理する場合も同じです。)

以下、説明いたします。

(1)各月の「労働時間計算」シートへの時間データは、当月分+翌月分の初日(=賃金締切日の翌日分)まで入力する。

最初に説明したように、「1年分用のエクセルを利用した場合は、当月から翌月へ引継ぐべきデータがあれば(週労働時間等)を。自動的に翌月に引き継ぎます。」

その為には、各月の入力時、賃金締切日の翌日分(=次の賃金期間の開始日)を、当月の「労働時間計算」シートに入力して下さい。

(なお、そして、翌月の「労働時間計算」シートの初日には、その入力データ部分をコピーして下さい。そうすれば、再度一から入力する手間が省けます。)

(2)理由

賃金期間が次の月に変わっても、週の労働時間、また午前0時を跨いで1日の労働が翌日まで継続する場合の1日の労働時間は、賃金締切日を跨いで継続します。

したがって、それを反映しないと、正確な超過勤務(40時間超、8時間超)が賃金計算に反映されません。

そこで、賃金締切日(当月の賃金計算対象期間の最終日)と、賃金開始日(翌月の賃金計算対象期間の初日)を、同じシートに入力することで、引継ぎ時間を計算しています

(以下、「労働時間計算」シートの引継ぎ時間計算部分を参照されたい。)