名人戦第4局、すごかったですね。
すぐ前の白の割り込みに対して、芝野さんの打った37手目は上辺のキリ。
取るか、あるいは我慢して外側から押さえるか。取れば白からの出で味悪だし、という対応がこの手。
黒:芝野八段 白:張名人(黒コミ出し:6目半)
並みいるプロ高段者が誰一人として思いつかなかったこの手を予想したのは、AIのみ。勢い要石の2目と上辺の一目とのフリカワリ。
十数手進んで、黒53手目のケイマに白54と上辺を囲った局面
さて、次の一手は?
ここでも当たったのはAIだけでした(笑)
要(カナメ)の2目は既に取られているので、3目はただ地だけの問題。他にいくらでも大きいところはある、というのが普通の感覚なんですが(村川十段も同じ感覚でしたが)芝野八段とAIだけはここが盤上最大と考えたんですね。
このあと手どころはいろいろありますが、上辺を囲いに来た瞬間をとらえて、
黒167手目のハザマ、これで決まりました。
途中、封じ手から右辺を活かす代償に、下辺と左辺の絡み攻め。結果は中央の大きいポン抜きを許してまで、得た左辺はコウ残り。普通ならとても勘定に合わないはずなんですが、それでも十分との形成判断は、この手をずっと早い段階で読んでいたからなんですね。
19歳という若さが、ヨミの鋭さの源なのかもしれません。依田元名人がNHK杯戦の感想で「若いころなら一目で見えたんだけどねェ・・・」の一言が頭に残っています。
一力さんや伊田さん、芝野さんが活躍されだした頃で、当時は芝野三段だったように記憶しています。
その他細かいことは総譜で参考にしてください。
総譜 233手 黒中押勝
それにしても芝野さん凄いですね。現役のトッププロが想像もできないなような手を次々打っていく発想は、今回の結果がどうなろうと間違いなく頂点に立つ方だと思います。(今年のNHK杯にもありましたので、機会があれば書くことにします)
さて、土壇場に追い込まれた張名人、昨年は同じ1勝3敗から井山7冠に大逆転したのでしたね。まだまだ目が離せません。