花火が上がっても消えなかっためんま。
この予想外の結果にとまどいを隠せない超平和バスターズの面々は、打ち上げ作業を手伝ってくれためんまの弟・聡志の「姉ちゃんのために頑張ってくれて、ありがとうございました!」という素朴な感謝の言葉にも、五人五様の後ろめたさを覚えるばかり。
その日の深夜、「めんまには気づかれないように」という断り付きで呼び出されたじんたんがいつもの神社に向かうと、そこには何故か電話をしてきたゆきあつに加えて、あなる・つるこ・ぽっぽの姿が。
誰もが深刻な表情でうなだれる中、みんなの気持ちを代弁するかのように、あなるが語気も荒く吐き捨てます。
「めんまが成仏しなかったのは、願いが違ったからなんかじゃない。……ねえ、私たち、本当にめんまのこと考えてた? ちゃんとめんまのお願いが叶いますようにって!」
そう、振り返ってみれば、誰もがめんまのためではなく、自分のためにめんまを成仏させようとしていたのです。
めんまのことを考え続けるじんたんを見ていたくなかったあなる。
今もびっくりするくらい昔と変わらずめんまが好きなのに、そのめんまの姿を見ることができるのがじんたんだけという“状態”が耐えられなかったゆきあつ。
ゆきあつをずっと想い続けながら、その気持ちに固く蓋をして、死してなおゆきあつの心を捉えて離さないめんまへの敗北感と、常にゆきあつの理解者だったあなるに対する羨望にまみれた人生を、黙々と歩んできたつるこ。
そしてあの日、めんまが彼岸へと旅立つまでの一部始終を目撃しながら、結局何もできなかった不甲斐ない自分への許しを求めて、誰よりもめんまの成仏にこだわっていたぽっぽ――。
めんまの成仏に自分勝手な思いを重ねていたのが自分だけではなかったと悟ったじんたんは、ゆきあつの言う通り自分だけがめんまが見えることが嬉しかったこと、本音を言えばめんまを成仏させたくないこと、けれどもめんま自身は超平和バスターズの全員とちゃんと話がしたくて、だからきちんと成仏して生まれ変わりたいと考えていることを、淡々と告白します。
これを聞いて発奮する一同。
めんまと一緒に、今度こそ全員が本気でめんまの本当の願いを叶えようと気勢を上げます。
私たち6人で超平和バスターズなんだものね――つるこの、涙声ながらもしっかりとした総括の言葉に背中を押されるように、勢いよく駆け出すじんたん。
「すぐめんま連れてくる! 秘密基地で集合だ!」
やっと動き出せたことへの興奮と充実感につき動かされ、息せき切ってたどりついた我が家で、しかしじんたんは辛い“現実”と直面することになります。
ぐったりと力なく畳に横たわっためんま。
慌てて駆け寄ったじんたんにめんまは告げます、めんまのお願い、もう叶っちゃってたみたい、と――。
そんなわけで、ついに終わってしまいましたあの花。
正確には終わりの始まりというか、この先もじんたん達の人生は続いていくことが、Cパートの中でささやかに提示されます。
けれども、ひと夏の得難い経験が彼らの心を、生き方を、そして関係を、ほんの少しだけ変えたことはまぎれもない事実。
塔子が死の間際に抱いた願いは「じんたんを泣かせたい」でしたが、それは自身が病床に伏して以降感情を内に内にこもらせるようになってしまった愛息子を解放するための“呪文”に他ならず、託された側のめんまもまた、一見無邪気なようでいて、その実塔子の遺志を実現すべく必死に心を砕いていたことが判明したラストには、大いに胸を打たれました。
なぜこのタイミングでめんまが期限付き復活を果たすことになったのかという根本的な謎については、結局最後まで種明かしされませんでしたが、恐らく作り手にとってそこは瑣末な問題にすぎず、地に足のついたどこにでもいる普通の人達の物語に、たったひとつファンタジー要素を盛り込むことによって、わけあって淀んでいた空気が涼やかに晴れ渡っていく様を描ければ、それで良かったのだろうと考えている次第です。
……うむ、だんだん自分が何を書いているのかわからなくなってきたぞ(笑)。
個人的に、ぽっぽの抱えていた闇が、あの日めんまの死の瞬間を目撃してしまった――そして、もしかしたら助けることができたかもしれなかったのに、自分が怖気づいてしまったせいでみすみす見殺しにしてしまった(と少なくとも彼自身は考えている)というエピソードについては、おおよそ想定の範囲内でしたが、一方でつるこが本当に嫉妬し、同時に羨望の念を抱いてやまなかったのが、めんまではなくあなるだったという告白は非常に衝撃的でした。
というより、めんまに関しては端から勝負にならないとあきらめていて、ならばせめてゆきあつにとって必要不可欠な相談役になろうと目論んでいたら、そのポジションすらもあなるに奪われてしまった(もちろんあなる本人にその自覚はゼロ)ために、人知れず深く絶望していたとつるこ。
その卑屈さが、つるこをして一流の皮肉屋に仕立て上げ、十年一日の思い人であるところのゆきあつにも胸の内を気取らせなかったと思うと、しみじみ涙を禁じ得ません。
そして、このつるこという、単なるクールビューティの一言で片づけるにはあまりにも複雑怪奇にして面倒くさい(苦笑)性格のキャラクターを体当たりで演じて下さったのが、個人的にデビューの頃からずっとファンをしている早見沙織さん。
そんな早見さんの、私が把握している範囲では十二分に新境地といっていい抑制のきいた熱演ぶりを堪能できたこともまた、このあの花に出会えて良かったと思える要因のひとつです。
この後、つるこの気持ちを知った――知ってしまったゆきあつと、彼女はいったいどんな関係を築いていくのでしょうか。
すべての発端であり、また全11話の脚本を書いた岡田麿里さんの頭の中に、この慎ましやかな物語の“今後”があるのかどうかは神のみぞ知るですが、もし存在しているならば、いつか何かの機会に開陳していただきたいと心の底から願ってやみません。
そして月並みな表現で恐縮ですが、岡田さん、長井監督、キャラクターデザインの田中将賀さんを始め、本作に携わったすべてのスタッフの方々に、改めてこの言葉を贈りたいと思います。
近年まれに見る緻密な群像劇を描き切って下さって、本当にありがとうございました&お疲れ様でした!!
この予想外の結果にとまどいを隠せない超平和バスターズの面々は、打ち上げ作業を手伝ってくれためんまの弟・聡志の「姉ちゃんのために頑張ってくれて、ありがとうございました!」という素朴な感謝の言葉にも、五人五様の後ろめたさを覚えるばかり。
その日の深夜、「めんまには気づかれないように」という断り付きで呼び出されたじんたんがいつもの神社に向かうと、そこには何故か電話をしてきたゆきあつに加えて、あなる・つるこ・ぽっぽの姿が。
誰もが深刻な表情でうなだれる中、みんなの気持ちを代弁するかのように、あなるが語気も荒く吐き捨てます。
「めんまが成仏しなかったのは、願いが違ったからなんかじゃない。……ねえ、私たち、本当にめんまのこと考えてた? ちゃんとめんまのお願いが叶いますようにって!」
そう、振り返ってみれば、誰もがめんまのためではなく、自分のためにめんまを成仏させようとしていたのです。
めんまのことを考え続けるじんたんを見ていたくなかったあなる。
今もびっくりするくらい昔と変わらずめんまが好きなのに、そのめんまの姿を見ることができるのがじんたんだけという“状態”が耐えられなかったゆきあつ。
ゆきあつをずっと想い続けながら、その気持ちに固く蓋をして、死してなおゆきあつの心を捉えて離さないめんまへの敗北感と、常にゆきあつの理解者だったあなるに対する羨望にまみれた人生を、黙々と歩んできたつるこ。
そしてあの日、めんまが彼岸へと旅立つまでの一部始終を目撃しながら、結局何もできなかった不甲斐ない自分への許しを求めて、誰よりもめんまの成仏にこだわっていたぽっぽ――。
めんまの成仏に自分勝手な思いを重ねていたのが自分だけではなかったと悟ったじんたんは、ゆきあつの言う通り自分だけがめんまが見えることが嬉しかったこと、本音を言えばめんまを成仏させたくないこと、けれどもめんま自身は超平和バスターズの全員とちゃんと話がしたくて、だからきちんと成仏して生まれ変わりたいと考えていることを、淡々と告白します。
これを聞いて発奮する一同。
めんまと一緒に、今度こそ全員が本気でめんまの本当の願いを叶えようと気勢を上げます。
私たち6人で超平和バスターズなんだものね――つるこの、涙声ながらもしっかりとした総括の言葉に背中を押されるように、勢いよく駆け出すじんたん。
「すぐめんま連れてくる! 秘密基地で集合だ!」
やっと動き出せたことへの興奮と充実感につき動かされ、息せき切ってたどりついた我が家で、しかしじんたんは辛い“現実”と直面することになります。
ぐったりと力なく畳に横たわっためんま。
慌てて駆け寄ったじんたんにめんまは告げます、めんまのお願い、もう叶っちゃってたみたい、と――。
そんなわけで、ついに終わってしまいましたあの花。
正確には終わりの始まりというか、この先もじんたん達の人生は続いていくことが、Cパートの中でささやかに提示されます。
けれども、ひと夏の得難い経験が彼らの心を、生き方を、そして関係を、ほんの少しだけ変えたことはまぎれもない事実。
塔子が死の間際に抱いた願いは「じんたんを泣かせたい」でしたが、それは自身が病床に伏して以降感情を内に内にこもらせるようになってしまった愛息子を解放するための“呪文”に他ならず、託された側のめんまもまた、一見無邪気なようでいて、その実塔子の遺志を実現すべく必死に心を砕いていたことが判明したラストには、大いに胸を打たれました。
なぜこのタイミングでめんまが期限付き復活を果たすことになったのかという根本的な謎については、結局最後まで種明かしされませんでしたが、恐らく作り手にとってそこは瑣末な問題にすぎず、地に足のついたどこにでもいる普通の人達の物語に、たったひとつファンタジー要素を盛り込むことによって、わけあって淀んでいた空気が涼やかに晴れ渡っていく様を描ければ、それで良かったのだろうと考えている次第です。
……うむ、だんだん自分が何を書いているのかわからなくなってきたぞ(笑)。
個人的に、ぽっぽの抱えていた闇が、あの日めんまの死の瞬間を目撃してしまった――そして、もしかしたら助けることができたかもしれなかったのに、自分が怖気づいてしまったせいでみすみす見殺しにしてしまった(と少なくとも彼自身は考えている)というエピソードについては、おおよそ想定の範囲内でしたが、一方でつるこが本当に嫉妬し、同時に羨望の念を抱いてやまなかったのが、めんまではなくあなるだったという告白は非常に衝撃的でした。
というより、めんまに関しては端から勝負にならないとあきらめていて、ならばせめてゆきあつにとって必要不可欠な相談役になろうと目論んでいたら、そのポジションすらもあなるに奪われてしまった(もちろんあなる本人にその自覚はゼロ)ために、人知れず深く絶望していたとつるこ。
その卑屈さが、つるこをして一流の皮肉屋に仕立て上げ、十年一日の思い人であるところのゆきあつにも胸の内を気取らせなかったと思うと、しみじみ涙を禁じ得ません。
そして、このつるこという、単なるクールビューティの一言で片づけるにはあまりにも複雑怪奇にして面倒くさい(苦笑)性格のキャラクターを体当たりで演じて下さったのが、個人的にデビューの頃からずっとファンをしている早見沙織さん。
そんな早見さんの、私が把握している範囲では十二分に新境地といっていい抑制のきいた熱演ぶりを堪能できたこともまた、このあの花に出会えて良かったと思える要因のひとつです。
この後、つるこの気持ちを知った――知ってしまったゆきあつと、彼女はいったいどんな関係を築いていくのでしょうか。
すべての発端であり、また全11話の脚本を書いた岡田麿里さんの頭の中に、この慎ましやかな物語の“今後”があるのかどうかは神のみぞ知るですが、もし存在しているならば、いつか何かの機会に開陳していただきたいと心の底から願ってやみません。
そして月並みな表現で恐縮ですが、岡田さん、長井監督、キャラクターデザインの田中将賀さんを始め、本作に携わったすべてのスタッフの方々に、改めてこの言葉を贈りたいと思います。
近年まれに見る緻密な群像劇を描き切って下さって、本当にありがとうございました&お疲れ様でした!!