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『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』

2018-04-08 20:49:31 | 映画・DVDレビュー

本日観て来ました。観る前にも後からも、歴史的事実の詳細や製作にまつわる情報等は(パンフで得られるものくらいしか)特に入れていないのでとりあえずの感想だけです。

『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』公式サイト

時はベトナム戦争終結前の1971年。大統領はリチャード・ニクソン。亡き父そして夫の跡を継いで有力紙ワシントン・ポストの社主(発行人)を務めるキャサリン・グラハムは株式公開を前に多忙な日々を送っていた。一方、彼女自身が引き抜いた編集主幹ベン・ブラッドリーはニューヨーク・タイムズの敏腕記者シーランが最近現場に姿を見せないことを不審に思う。もしや大スクープが、との予想通り、タイムズは元軍事アナリストで後にシンクタンクのランド研究所に勤務していたダニエル・エルズバーグから極秘文書を入手していた。
元国防長官ロバート・マクナマラの指示により作成されたその文書とは、ニクソン以前の4人の大統領がベトナムに於ける軍事行動について、国民に対し虚偽の報告をし続けてきた事実の詳細な記録であった。
世に言うペンタゴン・ペーパーズである。
ベトナム戦争に大義も勝利もないと知りつつ軍事行動を遂行、拡大し続けたことにより、多くの命が失われたのみならず、様々の不正や隠蔽工作などがあったことを記す文書の存在は、同年6月ニューヨーク・タイムズ一面に掲載される。
ニクソン大統領がタイムズに対する記事の差し止め命令を連邦裁判所に要求する傍ら、ワシントン・ポストでは、エルズバーグの元同僚であり現在はポストの編集局次長のベン・バグディキアンが、4000ページにも及ぶコピーを入手していた。差し止め命令が出る前にと掲載を急ぐブラッドリー。しかし、たとえ掲載されたとしても、ポストが、そしてキャサリンやブラッドリーも罪に問われることは確実であった。キャサリンはまた、マクナマラの長年の友人としても苦渋の選択を余儀なくされることとなる。社主として、また報道の自由を守る者として、彼女が下した決断は──

スティーブン・スピルバーグ監督は、近々公開される『レディ・プレイヤー1』も抱えながら、驚くほどの急ピッチでこの作品を完成させたと伝えられます。撮影監督ヤヌス・カミンスキーをはじめ信頼できるスタッフに恵まれていたとは言え、「今まさにこの時」だからこそ、この映画を世に問わなければならぬという使命感や気迫が感じられる作品でした。
ニクソン大統領とワシントン・ポストの関係と言えば、翌1972年のウォーターゲート事件の方が歴史的には名高く、ペンタゴン・ペーパーズの一件はその前哨戦とも言えますが、文書また新聞をも意味する「ペーパーズ」の意義を問うところに「今この時」の危機感があるのでしょう。アメリカのみならず日本も他人事ではない話なのですが……
しかし、そこはスピルバーグ。ただ深刻なだけではなく、上質なエンターテインメントとしても見せてくれます。ポストが文書を入手するまでのスリルとサスペンスを盛り上げるカメラワーク。映像の力。エルズバーグが文書を持ち出すくだりや、文書がタイムズの記者たちに届くまでのシークエンス、バグディキアンがエルズバーグに電話をかけるシーンなどハラハラドキドキの連続です。キャサリンとブラッドリーそれぞれの内線電話を駆使した「電話会議」も面白かった。
メリル・ストリープにトム・ハンクスというアメリカを代表する名優二人による、恋人同士でも夫婦でもない男女の信頼関係や敬愛がまた良いのです。40代半ばまで専業主婦で、現在の自分の立場にまだどこか戸惑いを覚えているようなキャサリンを軽んじも貶めもせず、と言って余計な「保護」もせず、上司としてまた戦友として遇するブラッドリーは好い男です。キャサリンが「決断」に到るシーンの表情の変化。ストリープの演技もそれを捉えたカメラも素晴らしく、忘れ難いシーンでした。

ところで、ウォーターゲート事件を扱った映画で名作と名高いのがアラン・J・パクラ監督による『大統領の陰謀』(1976)。

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この映画にも当然ながらワシントン・ポストの編集局が出てきます。しかしペーパーズが女性記者や職員たちの存在や活躍も描いているのに対し、こちらには彼女たちの姿は(ほぼ?)なかったと思います。社主キャサリン・グラハムも名前くらいしか出なかったはずで、それに関しては時代が良い方向に変わった一例かもしれません。
この作品で、ベン・ブラッドリー役ジェイソン・ロバーズはアカデミー賞助演男優賞を受賞。ペーパーズのトム・ハンクスの演技には随所で「ジェイソン・ロバーズみたい」と思ったものですが、同じ人をモデルにしているのだから当然ですね。スピルバーグ監督自身がブラッドリーの友人でもあったそうです。
ペーパーズの初めの方で、ロバート・レッドフォード出演作『明日に向かって撃て』のポスターがちらっと映るのは、ちょっとしたお遊びかなと思いました。
リーアム・ニーソン主演『ザ・シークレットマン』は未見ですが、ウォーターゲート事件関連映画として観ておこうかしら……

なんだか締まりのない終わり方になりそうですが、「今この時代」に作られたこと、そしてわたくしたちがそれを観ることに意義ある作品だと繰り返し述べておきます。

──報道の自由を守るものは報道しかない。(ベン・ブラッドリー)

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