ニュージーランド南島のクライストチャーチで22日に起きた大規模地震で、一夜明けた23日も行方不明者らの捜索が続いた。富山外国語専門学校(富山市)の邦人生徒らを含め100人以上が閉じ込められたとみられる「CTVビル」は、完全に倒壊するなど、ひときわ甚大な被害に見舞われた。専門家は、全壊理由について“ねじれ状”に建物が動き、被害につながった可能性を指摘する。ビル跡の生存者の有無については、絶望視する現地報道が目立ってきた。
建っていた姿が想像できないほど、無残ながれきの山と化してしまった、地元テレビ局カンタベリーテレビのオフィスが入るCTVビル。隣の建物は壁の一部が崩れ、ガラスが破損した程度で、6階建てのこのビルの崩壊だけがひときわ目立つ。今回、最も大きな被害を受けたともされるビルは、邦人生徒らをのみ込み、なぜ崩れ落ちてしまったのか。
東工大の和田章教授(建築構造学)は、構造的な問題があった可能性を指摘する。「壁が少ない上、柱も日本の鉄筋コンクリートの建物よりも少なく、柱自体も細いようだ」という。
さらに、教授が注目するのは、ほぼ全壊した建物の中で、倒れずに残った細長い「エレベーター部分」(語学学校元生徒)だ。エレベーター部分は通常、建物の中で構造的に強いのが特徴。教授によると「これが建物の一方の端だけにあると、地震により、この部分を中心に建物が動く『偏心』と呼ばれる現象が起きる可能性がある」という。エレベーター部分を要にし、建物が大きく揺れ動いたことが、全壊につながったと推測。逆に、強い構造部が両側にあれば、建物が支えられる形で揺れず、地震に対しても強くなるという。
地震が多いニュージーランドは、1980年代に世界初の耐震ビルを建てるなど、その分野では“優等国”。だが、建築基準が厳しくても、老朽化した建物の補強が追い付いていないケースがあるとみられる。CTVビルの築年数については、「50年ほど」「十数年」など現地の声はバラバラで、08年に改定された耐震基準を満たしていたかどうかは不明。和田教授は「もし最新の基準を満たしていたのに壊れたなら、基準が不十分だった可能性がある」と、基準そのものの見直しの必要性も指摘していた。

同ビルのがれきの中には、邦人を含め100人超が閉じ込められているとみられる。二次災害を警戒し、捜索は一時中断されたが、23日夜(日本時間夕)に再開された。ただ現地報道では、「ビルの下に生存者がいる望みはない」との捜索当局の話を伝えるなど、悲観する見方が強まっている。