まちかど逍遥

私ぷにょがまちなかで遭遇したモノや考えたコトなどを綴ります。

翠明荘(旧高谷家別邸)和館 2

2020-05-19 22:49:49 | 建物・まちなみ
2019年10月の弘前の続き。

木蓮(もくれん)・蘇芳(すおう)は二部屋つながった大広間。ダブルの折上げ格天井、金粉を撒いた壁紙、花頭窓・・・
ここはいちばん豪華絢爛と言っていい。昭和期の増築部分である。


ガラス棒を吊った和風シャンデリア。控えめながら凛とした日本の美意識を体現しているデザインがとても好きだ。


そしてやはり圧巻は、冨士山を裾野まで描いたこの一刀彫の欄間。「余白」が大きいのが日本画的。


天然の木目が絶妙な位置にかかっているのはもちろん計算の上だろう。流れる風まで感じられるようだ。


奥に海棠(かいどう)という小さな部屋が附属している。


冨士山の欄間と対照的に書院の欄間は繊細。梅、紅葉、萩などの草や、鶴、橋などが描かれている。


廊下側から見る。


廊下からお庭を眺めるとつくばいやあずまやが見え、やはりこの座敷からの視線を重視しているのだろう。


シャンデリアとお揃いの廊下のブラケット照明。


この先が1895(明治28)年の建築。奥座敷は忍冬(すいかずら)、岩鏡(いわかがみ)という2室があり、その奥には土蔵が。


忍冬の床の間。


組子の欄間。




天袋の引き手。


岩鏡との間の欄間は波に千鳥の透かし彫り。
古い棟は比較的おとなしく落ち着いた座敷である。銘木を多用し華やかな装飾の昭和期の増築部との違いは明確だ。


平成の増築部分、山楂子(さんざし)と紅梅(こうばい)は現代的な部屋だった。

この横にあるこのトイレは変わっている。手洗いシンクの横に床の間があるのだ。


もともと「婦人着替え室」だったところを改装したらしい。


美容院になっている洋館の奥からお庭の方へ続く通路の入口。


木造の通路が続く。


苔むした茅葺きのあずまやの向こうに木蓮・蘇芳の座敷が見える。


この翠明荘は、旅館として営業したあとマンション建築の計画が持ち上がったのだが、弘前の文化的遺産を残すため、
現所有者である(株)ムジコ・クリエイト名誉会長の新戸部満男氏(当時はマルエス自工(株)社長)が買い取って料亭にしたという。
何という英断!!これがなければ弘前の至宝は無残にがれきと化し、弘前城の目の前にありきたりなマンションが建っていたのだ。
そして横山白汀の欄間がせいぜい数枚博物館に保存されるぐらいだっただろう。
あぁ本当に素晴らしいな!!こういうパトロン的な気概を持った企業や人がいることもまた弘前の誇りだろう。


実は3日間の弘前滞在中に翠明荘で食事をしようとしたのだが、茶道の大会か何かがあってどの日もダメだった。
それで女将さんが同情して下さってイベント終了後の時間帯に少し見学させて頂けることになったのだった。
わずかな時間で駆け足だったけど親切なご対応に感謝感激。。次回は是非ともゆっくり食事をしたいな!


続く。

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