経済なんでも研究会

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ガリレオは いないのか : 月例経済報告

2019-05-25 07:16:59 | 景気
◇ 政府は「緩やかな景気回復」に固執 = 政府は24日の経済関係閣僚会議で5月の月例経済報告を了承、公表した。最も注目された基調判断は「緩やかな景気の回復が続いている」という表現で、従来からの認識を変えていない。月例経済報告は、政府の最終的な景気判断。第2次安倍内閣が発足した13年7月以降、ずっと続けてきた「景気回復」の判断を今回も踏襲した。茂木経済財政相は「戦後最長の景気回復が途切れたとは考えていない」と強調している。

しかし中国経済の不調に米中貿易戦争の影響が加わって、日本の輸出と生産は明らかに減退しつつある。景気動向指数も「景気は悪化」という診断を下した。このため今回の月例報告では、輸出と生産についての判断を先月の「一部に弱さがみられる」から「弱さが続いている」に修正した。にもかかわらず「回復中」なのは、雇用と企業収益が堅調だからだという。だが雇用が堅調なのは、人口が減少しているため。企業が儲けを出してきた海外の景気も下向きになっている。

客観的にみれば、現状で「回復中」と判断するには無理がある。しかし政府・与党としては、7月の参院選あるいは同日選挙を控えて「景気は危ない」とは、口が裂けても言えないのだろう。10月に予定する消費増税についての反対論も強まるに違いない。また政府自身が警戒論を打ち出せば、政策的に対応する必要性も出てくる。だから、ここは「緩やかな回復」で、押し通すしかない。

その結果、景気対策が遅れてしまったことは、過去に何度も経験している。現在の世界経済あるいは国内経済の動向から判断して、5月の月例経済報告の内容には疑問が残る。政府部内にも、そう考える人は少なくないのでは。17世紀の大学者ガレリオ・ガレリイは地動説に賛成し、ローマ法王庁から糾弾された。そのため謝罪文を書いたが、周囲の人たちに「それでも地球は回る」と叫んだという。いまの霞が関に、ガリレオはいないのかしら。

       ≪24日の日経平均 = 下げ -33.92円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】   

米中双方の アキレス腱は?

2019-05-24 07:55:07 | 貿易
◇ 中国は失業増、アメリカは株価下落 = トランプ大統領は、中国からの輸入品すべてに25%の関税を課すことになった。中国側もこれに対抗して、アメリカ製の600品目に最大25%の報復関税をかける。両国はまだ交渉を続けているが、解決の糸口はいぜん見えない。こうした関税引き上げ競争はすでに両国の経済に悪影響を及ぼしており、互いに我慢比べの様相を濃くしてきた。

高関税の影響は、まず貿易面に現われる。中国税関総署が発表した4月の貿易統計をみると、アメリカ向けの輸出は前年比13%の減少。アメリカからの輸入は26%と大きく減った。しかし中国の総輸出額に占めるアメリカの割合が19%なのに対し、アメリカの中国向け輸出は8%ほどなので、痛手は中国側の方が大きいかもしれない。

またIT関連を除けば、中国の輸出品は価格競争力が弱い雑貨・家具・玩具などが多い。これらの製品の多くは、中国側が上乗せ関税分を値引きして負担しているようだ。一方、アメリカの輸出品は自動車やIT製品が多く、報復関税はそのまま上乗せされ、市場価格は上昇しているという。

ただ程度の差はあっても、両国ともに打撃は受けている。たとえばトランプ政権も、中国向け輸出が激減した大豆生産農家に対しては補助金を支給した。こうして両国とも、いまは我慢比べの態勢。そうしたなかで習政権が最も恐れるのは経済成長率がさらに低下し、失業者が増大すること。一方のトランプ政権が恐れるのは、株価の下落で選挙を前にして大統領の支持率が落ちること。FRBに「1%利下げしろ」と迫っているのも、そのためだ。

       ≪23日の日経平均 = 下げ -132.23円≫

       ≪24日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

減り続ける 中国向け輸出

2019-05-23 08:18:08 | 貿易
◇ 代わってアメリカ向けが急増 = 財務省は22日、4月の貿易統計を発表した。それによると、輸出は6兆6600億円で前年比2.4%の減少。輸入は6兆6000億円で6.4%の増加だった。この結果、貿易収支は604億円の黒字となったが、前年に比べると90.3%も縮小している。大きな特徴は、中国向けの輸出が減少した一方で、アメリカ向けの輸出が急増したことだ。

中国向けの輸出は1兆2300億円で、前年より6.3%減少した。米中貿易戦争の影響が色濃く表れており、品目でみると半導体製造装置が41.0%、金属加工機械が32.0%減っている。中国製の電気・電子製品がアメリカで売りにくくなったことから、中国のメーカーが設備投資を手控え始めたためだろう。

その半面、アメリカ向けの輸出は1兆4100億円。前年比で9.6%も伸びた。品目をみると、半導体製造装置が83.2%、自動車も8.4%増加した。これまで中国から輸入してきた半導体を、自国で生産するアメリカのメーカーが増えているためだと考えられる。だが日本にとって、こうした傾向が定着することは決して望ましいことではない。

まず輸出の減少は、景気の足を引っ張ることになる。次に中国のアメリカ向け輸出が減退することは、中国で生産している日本企業の対米輸出も困難になることを意味している。さらにアメリカ向けの輸出が増加すると、これから本格化する日米貿易交渉でアメリカ側の立場が有利になる。現に4月の対米黒字額は7232億円で、前年比17.7%の増加となった。

       ≪22日の日経平均 = 上げ +10.92円≫

       ≪23日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

企業決算に 中国の影が

2019-05-22 07:21:23 | 利益
◇ 2年連続で減益になる予想 = 上場企業の3月期決算発表が終了した。日経新聞の集計によると、金融を除く全産業の純利益は2.8%の減益だった。このうち製造業は7.9%の減益。非製造業は4.5%の増益となっている。製造業も前半は好調だったが、後半になって急ブレーキがかかった。これは中国経済の変調によるもので、自動車や電機の業績が悪化している。商社・通信・サービス・不動産など、中国と関係が少ない非製造業は堅調を持続した。

20年3月期の見通しでも、全産業の純利益は1.4%の減益になる見込み。やはり製造業は5.8%の減益で、非製造業は4.1%の増益になる。そうなれば、2年連続の減益ということになるが、これは現時点での見通しにすぎない。米中貿易戦争が今後どう展開するのか、中国経済の不調はいつ止まるのか。あるいはイギリスのEU離脱問題、円相場の動向など、環境の変化で企業の業績は大きく動きそうだ。

アメリカでも企業業績はピークを過ぎた。調査会社リフィニティブの集計によると、主要500社の1-3月期の純利益は4.7%の減益になった。減益は11四半期ぶりのこと。トランプ政権による法人減税の効果が一巡したこと、自動車など中国向けの輸出が減少したこと、それにエネルギーや人件費が経営を圧迫したと説明されている。

このほかヨーロッパやアジアの主要企業も、減益決算となったところが多い。要するに、世界的に需要が減退し始めたのだろう。その大きな要因は、中国の成長鈍化。その鈍化の程度を決める要因が、米中貿易戦争という構図になっている。したがって今後の企業業績は、やはり米中交渉の帰趨にかかっていると言うしかない。

       ≪21日の日経平均 = 下げ -29.28円≫

       ≪22日の日経平均は 予想 =上げ≫

毒まんじゅう型の GDP成長率

2019-05-21 08:14:22 | 景気
◇ 政府は毒を無視するのか =内閣府は20日、1-3月期のGDP速報を発表した。それによると、実質成長率は年率換算で2.1%。民間の事前予測は平均マイナス0.3%だったから、予想外に高い成長率を達成したことになる。昨年10-12月期の1.6%成長に続いて、2四半期の連続プラス成長。このように見た目には美味しそうなまんじゅうだが、実は中身には猛毒が・・・。

発表の中身をみると、いずれも年率換算で個人消費はマイナス0.4%、企業の設備投資はマイナス1.2%。内需を支える2本柱が、ともにマイナス成長だった。個人消費は暖冬と食料品の値上げ、設備投資は中国経済の不調による影響が大きい。その半面、住宅投資が4.5%の増加、公共投資も6.2%増加した。これで消費と設備投資のマイナスを、なんとか補った形となっている。

成長率を大きく引き上げた要因は、外需にあった。輸出は9.4%も減少したが、輸入が17.2%と予想以上に減退した。この結果、GDPは計算上プラスになったが、輸入の減少は内需の伸び悩みを反映したもの。つまり個人消費と設備投資、それに輸出が減少。しかも内需の停滞を反映して、輸入が大幅に減った。これらの現象は、景気の悪化を的確に示している。

政府は今週24日に、5月の月例経済報告を発表する。政府首脳の発言から推量すると、今回も「景気は緩やかに回復している」という従来からの景気判断を踏襲しそうだ。参院選あるいは同日選挙を前に、弱音は禁物だと考えるからだろう。だが、その根拠に1-3月期の2.1%成長を持ち出すとすれば、まんじゅうの毒に目をつぶり国民をだますことになる。

       ≪20日の日経平均 = 上げ +51.64円≫

       ≪21日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

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