経済なんでも研究会

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パウエル議長の 胸の内は?

2022-11-15 07:41:27 | アメリカ経済
◇ 「株高は引き締めに邪魔なんだ」 = 先週10日のこと、消費者物価の上昇率が予想を下回ると、株価は急騰した。これでFRBによる金融引き締めのテンポが緩むと、市場が期待したからである。さらに市場では年明け早々に利上げは終了、政策金利の最終的な高さも予想より低くなるという推測までが飛び出した。パウエル議長としては「市場ははしゃぎ過ぎ、冗談じゃないよ」と言いたいところだろう。

消費者物価の伸びが鈍化したと言っても、まだ前年比7.7%も上昇している。これが2%台の上昇にまで沈静化するには、相当の時間を要するだろう。12月の政策決定会合までには、11月の雇用統計や物価も発表される。だから「それらの数字を見てからFRBの姿勢を決めるのは当然だ」「その数字によっては、利上げ幅を0.5%に抑えることは考えてもいい」というのがパウエル議長の胸の内だろう。

中間選挙の前は、インフレ退治を声高に叫ぶ必要があった。しかし選挙が終わったために、FRBは政治的な配慮なしで行動できるようになった。したがってインフレ退治を急いで、3倍速の利上げを続けてもホワイトハウスから文句は来ない。逆に引き締めのテンポを緩めても、何ら問題はない。要するにFRBは、自由に行動できるようになった。「このことは投資家の皆さんも覚えておくべきだ」とパウエルさんは言いたいに違いない。

最大の問題は、おそらく賃金インフレが収束するかどうかだろう。物価上昇率が賃金上昇率を下回れば万々歳だが、金融政策にはそうする力がない。また「株価の高騰も、金融引き締めを阻害する。資産効果で消費が増えてしまい、物価を押し上げるからだ」「要するに、株式市場のはしゃぎ過ぎはFRBにとって迷惑なんだ」--パウエル議長の本音かもしれない。

        ≪14日の日経平均 = 下げ -300.10円≫

        ≪15日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

インフレは長く続く / アメリカ

2021-12-07 07:39:32 | アメリカ経済
◇ FRB議長が豹変した理由 = 「持続的インフレのリスクは高まっている」「物価上昇は一時的と言ったが、撤回する時期だ」「資産の購入を数か月早く終えることを検討する」--パウエルFRB議長の口から、こんな発言がポンポン飛び出した。驚いた市場では、株価や商品相場が急落。短期金利は急騰した。一般の国民も、いまの物価高は長く続くのかと、ため息を漏らしている。

パウエル議長は、これまで一貫して「物価高は一時的なものだ」と説明してきた。だから金融緩和政策の修正を急ぐ必要はない。国債などの購入は来年6月ごろに終了すればいい。そう言い続けてきたFRB議長が、豹変したのはなぜだろう。最大の理由は、物価の上昇が予想以上に大きくなっていること。たとえば10月の消費者物価は、なんと30年ぶりの上昇率となっている。

オミクロン変異株への警戒感が強まっているいま、金融を引き締めたら景気は悪化するのではという心配もある。だがコロナ禍でも消費需要は強く、むしろ供給面への悪影響の方が強い。パウエル議長は、そう考えたのではないか。だとすればインフレ対策を先行させた方がいい。対策が遅れると、インフレは手を着けられないほど加速してしまう危険がある。

FRBは、アメリカの物価安定と雇用の維持に責任を持っている。その雇用の状況をみると、11月の失業率は4.2%で前月より0.4ポイントも改善した。完全雇用に近づいており、人手不足は続く。これも強力なインフレ要因になりかねない。したがって従来の考え方を捨てて、インフレ対策を急ぐ。パウエル議長の心中を覗いてみれば、こういうことになるのではないか。

        ≪6日の日経平均 = 下げ -102.20円≫

        ≪7日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

金融緩和の縮小開始は 11月 : アメリカ

2021-08-11 07:58:33 | アメリカ経済
◇ 利上げは来年後半になる? = 金融緩和政策の縮小については「今後、複数回の政策決定会合で議論し決める」--アメリカの中央銀行であるFRBは先週、こんなナゾナゾのような声明を発表した。次の決定会合は9月だが、そこでは決めない。10月は休みだから、その次は11月になる。つまり緩和政策の縮小は11月からだ。市場はこう読み解いた。だが株価はほとんど動かなかった。というのも投資家の多くが、すでにそう考えていたからである。

中央銀行がここまで手の内を明かしても、株価が動かない。これはFRBが時間をかけて、市場に説明を続けてきた成果だろう。たとえば物価や雇用情勢、金利と緩和政策の関係など。市場は十分に洗脳された。物価にしても雇用にしても、重要なのは9月の状態。それが判明するのは10月になるから、11月に政策を決定するのは当然だと考えるようになった。

追い討ちをかけるように、クラリダ副議長が金利引き上げの時期についても言及した。講演で「22年末になれば、利上げの条件は整うだろう」と予想したのである。緩和政策の縮小を完了するまでには、時間がかかる。だから約1年後には、利上げで引き締め政策に転換する。そのころには、景気も順調な上昇過程に入っているだろうというわけだ。

これもFRBの市場説得作戦。いまから来年後半の利上げを、納得させようとしている。だが1年後のことになると、コロナの勢いとも関連して景気の状態がどうなっているのか不鮮明だ。さらにFRB内部でも「インフレに備えるため、利上げは急ぐべきだ」と主張するタカ派と「雇用の回復を図るため、急ぐべきではない」と考えるハト派が対立していることも確か。だから市場もなかなか洗脳されない。FRBは今後どういう説得作戦を展開するのだろうか。

        ≪10日の日経平均 = 上げ +68.11円≫

        ≪11日の日経平均は? 予想 = 上げ≫         

2つの顔を持つ アメリカ経済 (下)

2019-01-09 08:15:52 | アメリカ経済
◇ FRBの政策にも二面性 = 先週末4日のニューヨーク市場では、ダウ平均が750ドル近くも反発した。材料は2つ。まず朝方に発表された12月の雇用統計で、非農業雇用者の増加数が31万2000人にものぼったこと。また平均時給も3.2%増加。予想以上に景気がいいことを裏付けた。次いで午後には、パウエルFRB議長が講演のなかで「金融政策を柔軟に見直す」と言明。これで株価は大幅に上昇した。

株価がこれ以上に下落すると、消費が落ち込んで景気が悪化するかもしれない。パウエル議長はその心配もあって、市場に助け船を出したのだろう。だが、このパウエル発言も複雑な側面を持っている。もし株価が上昇に転ずれば、FRBは金融引き締めを継続する。実体経済は予想以上に堅調で、物価の上昇の方が心配になるからだ。これが、その裏の意味。

さらに利上げを停止すれば、FRBが本当に景気の先行きを心配し始めたと感じる人は多いだろう。このようにパウエル議長の簡単なコメントひとつを取っても、その解釈はさまざま。強気派と弱気派が自分のいいように解釈して、株価は乱高下することになる。では、強気派と弱気派のどちらが優勢になって行くのか。

成長率や雇用、企業業績や小売りの面からみれば、現在のアメリカ経済は堅調である。だが、これ以上によくなるとは期待できない。その半面、ことしの夏にはトランプ大減税の効果が切れる。米中貿易戦争の影響でアメリカ国内の物価が上がり始める。イギリスのEU離脱で、世界経済に混乱が起きる。中国の成長率がさらに鈍化する。こうしたマイナス面は、これから影響力を増して行く。どちらが優勢になるかは、明らかだと思う。

       ≪8日の日経平均 = 上げ +165.07円≫

       ≪9日の日経平均は? 予想 = 下げ≫ 

2つの顔を持つ アメリカ経済 (上)

2019-01-08 08:49:23 | アメリカ経済
◇ 二面性に揺さぶられた株価 = テレビで駅伝の中継を見ていたら、ひとりの選手がペースを落とし始めた。すかさず解説者が言う。「これまでのペースが速すぎたので調整し、追い込みに備えているのでしょうか。それとも疲労が溜った結果でしょうか」と。この解説で、つい年末年始の株価を思い出してしまった。特にニューヨーク市場のダウ平均は大きく乱高下。一日で600ドルも700ドルも下げながら、史上最大となる1000ドル以上の急騰も記録した。

ダウ平均は昨年初から史上最高値を付けた10月初めまでに、およそ2100ドル上昇した。そして、そこから先週末までには3400ドル近く下げている。この反落を上げ過ぎ訂正の下落とみるか、それとも株価は中長期的な下降局面に入ったとみるか。それによって投資家は大きく楽観派と悲観派、あるいは強気派と弱気派に分類される。現在はその両派の葛藤が続いている状態と言えるだろう。

株価の水準を決める基本的な要素は、企業の業績である。アメリカの企業業績は長らく好調を持続しており、昨年10-12月期の状態も悪くはなかった。そんな状態で株価が下がるとPER(株価収益率)が低下し、割安感が増加する。だが仮に企業業績が悪化に転じると、割安感は減退してしまう。現状の割安感に注目するのが強気派、将来の割安感を重視するのが弱気派とも言えるわけだ。

将来の企業業績は、景気の動向に左右される。そこでアメリカの景気動向に目を転じると、これがまた実にはっきりした二面性を持っている。たとえばGDP成長率は3%を超える勢い。雇用情勢も絶好調で、クリスマス商戦も活発だった。だが一方では自動車の売れ行きが伸び悩み、GMやGEなどの大手企業が工場閉鎖を余儀なくされている。住宅着工戸数も減少に転じた。どちらの側面を重視したらいいのか。中央銀行であるFRBでさえも、迷い出したように感じられる。

                              (続きは明日)

       ≪7日の日経平均 = 上げ +477.01円≫

       ≪8日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

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