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NPO法人POSSE(ポッセ) blog

『POSSE vol.11』発売!特集テーマは「〈3・11〉と労働」です!

雑誌『POSSE vol.11』が5月末に販売開始になります。
今回のテーマは、「〈3・11〉が揺るがした労働」です。東日本大震災、原子力発電所、そして復興政策を、労働問題の観点から特集します。

震災を機に、日本字論からメディア論、危機管理、エネルギー政策まで、日本社会のあり方が、さまざまな局面から問われています。
そのなかで、「労働」や「貧困」という切り口は見過ごされがちです。

しかし、例えば原子力発電所の事故をとっても、原発がなぜ、福島や福井といった過疎的な地域に積極的につくられてきたのでしょうか。
なぜ、連日報道されているように、あまりに緩い安全管理の被曝労働が、特に下請け労働者に押し付けられ、野放しにされてきたのでしょうか。

そこには、雇用形態や企業規模による差別や、指揮命令、安全管理など労働の質をめぐって争ってこなかった企業主義的な労働運動の限界があります。
そして、社会保障や地域産業が軽視された結果、地域社会が長期的には衰退していくにもかかわらず、大企業誘致型の産業政策とその補助金に依存せざるをえなかった開発主義の問題があります。
いずれも、今回の原発事故によって表面化しただけで、これまでの戦後日本社会が抱え込んできた労働や貧困をめぐる根源的な問題の象徴ではないでしょうか。
一方で、「脱原発」政策においても、再生エネルギーにおける雇用や、放射性廃棄物の管理など被曝労働の長期的な課題が、労働問題として残されています。

さらに、震災の影響、あるいはそれに便乗した解雇や労働条件の切り下げ、内定取り消しなどが問題になりはじめています。
ただでさえ、企業が法律や社会的規範を無視した「ブラック企業」化していたなか、「震災だから仕方ない」という「非常時」の圧力により、若者を中心にますます労働者の発言は封じ込められてしまっています。
これもまた、日本の労働社会の矛盾が、ますます露呈されているという問題です。

そして、これからの被災地の復興やボランティア活動に関しても、労働や社会保障の観点を見過ごすことはできません。
必要性の低い大規模な公共事業の発注や、農林水産業への新規参入のための規制緩和など、大企業の「利権」を第一に目標とした「復興」ばかりが、現在叫ばれています。
これでは結局、戦後ずっと続けられてきた開発主義の焼き直しを、弱体化した被災地に対して、より悲惨なかたちで繰り返すことになりかねません。
被災地の住民の生活実態や産業構造を踏まえ、持続的で自立的な経済や社会のあり方こそ、優先することが必要です。

一方でここ数年、地域の「自立」や「分権」の名の下に、労働条件や生活水準を切り下げる雇用・社会保障政策が進められています。
もっぱら社会保障の削減を補完するために「新しい公共」が掲げられ、ボランティア、NPOが活用されたりするなど、露骨に新自由主義的な政策が構想されています。
しかし、こうした政策こそが、被災地支援を不充分なものにさせ、これからの「復興」を不安定なものにさせています。
ナショナルミニマムが守られてこそ、非営利活動と行政の連携や地方自治が、現地の生活の復興につながるかたちで実現するはずです。

このように、〈3・11〉が問う震災、原発、復興の問題は、これまでの日本が軽視してきた「労働」や「貧困」問題の一つの結末であるといえます。
そうした社会からの転換こそが、いま根本的に問われているのではないでしょうか。本特集では、そのための論点整理、そして労働運動の方向性を検討していきます。


注文はこちらから受け付けています!
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(在庫が一番豊富なため、在庫切れで発送が遅れる心配がなく、確実に入手可能です)

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書店でのご注文は、合同出版までご連絡ください。
http://www.godo-shuppan.co.jp/index.php

以下、目次です。

■特集 〈3・11〉が揺るがした労働

「フクシマの犠牲と「人間の責任」」
高橋哲哉(東京大学教授)
震災・〈フクシマ50〉の「犠牲の論理」
福島出身の哲学者が原発の差別構造と「責任」を問う

「東電の暴走と企業主義的統合――労使癒着によるチェック機能の喪失」
木下武男(昭和女子大学特任教授)
産業別労組の敗北から「会社人間」の誕生へ――
原発推進の背景には、日本の「労働運動ゼロ地帯」があった

「「創造的復興」が地域社会を破壊する」
岡田知弘(京都大学大学院教授)

原発・電力・復興・防災政策、「災害ファシズム」……
循環可能な地域経済をつくるための転換を

「原発が葬り続けた被曝労働者たち」
樋口健二(フォト・ジャーナリスト)
原発事故の復旧作業で注目される原発労働者。
しかし、原発は日常的に彼らを被曝させていた――

「被災者支援から問い直す「新しい公共」」
仁平典宏(法政大学准教授)

NPO、ボランティアの役割と限界
公的セクターとの相補関係による「支援」こそ必要

「ドイツの反原発運動とユニオニズム」
斎藤幸平(ベルリン自由大学大学院生)

政権を原発撤退に転換させたドイツの脱原発運動――
労働組合は被曝労働やエネルギー政策にどう取り組むのか

「現代労働問題の縮図としての原発――差別の批判から、社会的基準の構築へ」
今野晴貴(NPO法人POSSE代表)
派遣労働や過労死に通じる構図
不明確なリスクを社会化せよ

「震災が露呈した「ブラック企業」 
「震災だから」が正当化する非正規雇用の「便乗解雇」」

川村遼平(NPO法人POSSE事務局長)
「被災者じゃないから我慢」? 泣き寝入りさせられる若者たち

「震災が露呈した「ブラック企業」
会社の責任は問われない? 計画停電下の理不尽な命令」
本誌編集部
這ってでも出社しろ?「自宅待機」命令で欠勤扱い?

「震災が露呈した「ブラック企業」
復旧・復興と過労死――地震・津波の被害状況と復興の展望」
増田正幸(弁護士)
震災後の労働で予想される過労死を防ぐには?
阪神・淡路大震災での事例を振り返る

「逃げられない家族へ、無関心なあなたへ」
本誌編集部
福島出身のPOSSEスタッフによる原発事故下の実家に向けたエッセイ

「被災地からの報告―地震・津波の被害状況と復興の展望」
仙台POSSEスタッフ
自らも被災した仙台POSSEスタッフによる
震災直後の被災の報告、そして復旧・復興に向けた見通し

原発から労働・貧困問題を考えるためのブックガイド
本誌編集部


「労働と思想11 シェイクスピア演劇と労働の力学――「以降」の思想のために」
本橋哲也(東京経済大学教授)
「近代ヨーロッパ」の揺籃期に描かれた「労働」の変容
「野蛮」な「詩」はいかに現実と向き合い、希望を語りうるのか

「実践的労働法入門 震災を口実に解雇されたり、危険な労働を命令されたら?」
萬井隆令(龍谷大学名誉教授)


「連載 われらの時代の働きかた 就職の「成功度」を規定するもの」
熊沢誠(研究会「職場の人権」代表)

検証・格差論
「「雇用のミスマッチ」――過去に何が語られてきたか」
後藤和智(同人サークル「後藤和智事務所Offline」代表)

労働相談ダイアリー 〈3・11〉の二次災害、どう乗り切るか
川村遼平(NPO法人POSSE事務局長)


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NPO法人POSSE(ポッセ)は、社会人や学生のボランティアが集まり、年間400件以上の労働相談を受け、解決のアドバイスをしているNPO法人です。また、そうした相談 から見えてきた問題について、例年500人・3000人規模の調査を実施しています。こうした活動を通じて、若者自身が社会のあり方にコミットすることを 目指します。

なお、NPO法人POSSE(ポッセ)では、調査活動や労働相談、セミナーの企画・運営など、キャンペーンを共に推進していくボランティアスタッフを募集しています。自分の興 味に合わせて能力を発揮できます。また、東日本大震災における被災地支援・復興支援ボランティアも募集致します。今回の震災復興に関心を持ち、取り組んで くださる方のご応募をお待ちしています。少しでも興味のある方は、下記の連絡先までご一報下さい。
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NPO法人POSSE(ポッセ)
代表:今野 晴貴(こんの はるき)
事務局長:川村 遼平(かわむら りょうへい)
所在地:東京都世田谷区北沢4-17-15ローゼンハイム下北沢201号
TEL:03-6699-9359
FAX:03-6699-9374
E-mail:info@npoposse.jp
HP:http://www.npoposse.jp/
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