ホーヘンスの相談室（森川隊員-2)

で、1年毎に過去へさかのぼると地球に異変が発生したのは、2232年であることがわかりました。
地球中の人間がただ倒れていく。上空から見ていると、何というでしょうか、生きていくという意志をなくしたように。約15日間で、地球から人類が姿を消しました。

西暦2220年に戻り、渡辺社長に報告しました。あと、12年しかありません。しかし、人類滅亡の原因がわかりません。どうしたものか。ほとんど力のない地球連邦ですが、いざ人類の危機となれば、いまだにいがみあっている各国も一致団結するのでは。私は一刻も早く地球連邦へ報告すべきだと社長に訴えました。
でも、社長の返事は意外でした。

23世紀になっても、いまだに世界大戦はないにしても、小さな戦争はあちらこちらで起こり、互いに殺しあっている。人類はどうもこうもくだらないのだ。白馬にのった聖者が天から降りてくるのをただ待っている。
死んだあとは天国に行けると、ただ拝んでいる。科学の進歩が人を幸福にすると信じている。

ぼちぼち、地球を支配する生物の役をおりたほうがよいのでは。
これから12年後に人類が滅亡する　と報告しても、各国であーだこーだと意見もまとまらず、月に移住といっても、月面基地は未だ建設されていない。
地下に隠れるといっても、原因不明だから、効果がないかしれない。
ほかの人間は何も知らないほうが幸せでは。

うーん。私も考え直しました。だが、このまま、社長と二人で秘密を抱えたまま、生きていくのは苦しい。
それで、日本がまだ日本であった2013年にホッピングし、二度と過去へも未来へもホッピング出来ないよう、
SmartHopper2を破棄しました。えー、今は九州の人口が100万人を割った地方都市でひっそりと暮らしています。

社長は何も言いません。私は、二人だけ生き延びていいのか。21世紀にホッピングしたのは、間違いではなかったか。たとえ、地球連邦が何一つ対策をたてられない。それでも、皆と共に静かに死んでいった方がよかったのでは。と、しばらくは悩みました。
しかし、SmartHopper2はありません。

私は、これまで政治には無関心でした。ただ、2050年に日本という国が分断されてしまうことを知っています。
それをただ待っていていいのか。この時代で見た "ターミネータ2" のサラ・コナーの様に戦うべきではないか。
運命は変えられる。そーです。今からでも遅くない。

今、私はアルジェリアにいます。フランスの外人部隊の新兵訓練中です。軍事訓練はパトロール隊員中に、
受けているので、それほど苦にはなりません。ネックはフランス語です。発音が難しい。
でも、私は諦めません。ここで、実戦の経験をつんで、日本に戻り、対日本分断活動を始めたいと思います。

最近、ルモンド紙の記事で日本のJiJiという最近ブレークしている女性シンガーには予知能力があるということを
知りました。
ひょっとしたら、彼女は23世紀からの時間旅行者ではないか。
それを確かめたいという気持ちと、ひょっとしたら彼女も人類の最後を知っていて人しれず悩んでいるかもしれない。

まー、今は訓練に専念します。
日本に帰国したら、JiJiにアプローチしてみるつもりです。