貫之集 619
はぎのはの いろつくあきを いたづらに あまたかぞへて すぐしつるかな萩の葉の 色づく秋を いたずらに あまた数へて すぐしつるかな 萩の葉が色づく秋を何度も数えて、無駄に過ごし
貫之集 609
すみのえの まつにはあらねど よとともに こころをきみに よせわたるかなすみのえの 松にはあらねど 世とともに 心を君に 寄せわたるかな...
貫之集 606
いろならば うつるばかりも そめてまし おもふこころを しるひとのなき色ならば うつるばかりも そめてまし 思ふ心を 知る人のなき...
貫之集 602
あきののの くさばもわけぬ わがそでの ものおもふなへに つゆけかるらむ秋の野の 草葉もわけぬ わが袖の もの思ふなへに 露けかるらむ...
貫之集 590
をしからで かなしきものは みなりけり うきよそむかむ かたしなけれは惜しからで 悲しきものは 身なりけり 憂き世そむかむ かたしなければ...
貫之集 581
あはれてふ ことにしるしは なけれども いはではえこそ あらぬものなれあはれてふ ことにしるしは なけれども いはではえこそ あらぬものなれ...
貫之集 558
かざすとも たちとたちにし なきなには ことなしぐさも かひやなからむかざすとも 立ちと立ちにし なき名には ことなし草も かひやなからむ...
貫之集 554
たむけせぬ わかれするみの わびしきは ひとめをたびと おもふなりけり手向けせぬ 別れする身の わびしきは 人めを旅と 思ふなりけり...
貫之集 540
なみにのみ ぬれつるものを ふくかぜの たよりうれしき あまのつりぶね波にのみ ぬれつるものを 吹く風の たよりうれしき 海人の釣舟...
貫之集 493
はるがすみ とびわけいぬる こゑききて かりきぬなりと ほかはいふらむ春霞 飛びわけいぬる 声聞きて 雁来ぬなりと ほかはいふらむ...
貫之集 389
同年閏七月、右衛門督殿屏風の料、十五首正月元日、人々遊びしたるところの庭に梅の花咲けり...