「停滞」が画面を支配する。本来、告白は物語を転がす推進力となるはずだが、この女の独白は「停滞」を引き起こす。女がしゃべり続けるているあいだ、物語は閉じられた時空でぐるぐると自転している。まるで、ずっと止まったまま空回りしていた女の60余年の人生のように。
桃井かおりは、初老の娼婦の意思をセリフで語るのではなく、言葉を吐き続ける六十女の姿そのもので示そうとする。なぜなら、この女の人生に意思などなく、あるのは「停滞」のなかで消費されてきた「存在」そのものだから。これは、演出家ではなく生身の肉体を駆使する役者の素直な本能ならでは発想だ。こんな「停滞」し続ける映画は、桃井かおり以外には誰にも撮れないという点でオンリー・ワンの傑作なのだ。
ときおり挿み込まれる、存在の危うさを象徴するかのような破線で描かれた筆使いのイラストも効果的。
(8月30日/イメージフォーラム)
★★★★★
桃井かおりは、初老の娼婦の意思をセリフで語るのではなく、言葉を吐き続ける六十女の姿そのもので示そうとする。なぜなら、この女の人生に意思などなく、あるのは「停滞」のなかで消費されてきた「存在」そのものだから。これは、演出家ではなく生身の肉体を駆使する役者の素直な本能ならでは発想だ。こんな「停滞」し続ける映画は、桃井かおり以外には誰にも撮れないという点でオンリー・ワンの傑作なのだ。
ときおり挿み込まれる、存在の危うさを象徴するかのような破線で描かれた筆使いのイラストも効果的。
(8月30日/イメージフォーラム)
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