ぽんしゅう座

優柔不断が理想の無主義主義。遊び相手は映画だけ

■ 夜明けの夫婦 (2021)

2022年08月06日 | ■銀幕酔談・感想篇「今宵もほろ酔い」

コロナ禍で母をなくした姑(石川彰子)の孫が欲しいという願望と、それに応えるべく奮闘する律儀な嫁(鄭亜美)の焦燥は、夢とも妄想ともつかぬ幻視となって「現実」を攪拌する。二人は雌の本能として“生命連鎖”の危機を察知しているのかしれない。それにつけても男たちの呑気なこと。

二世帯住宅の一階で交わされる会話と、二階で実践されるセックスの虚しい距離。 リモート勤務から出社を経て単身赴任に至る夫(泉拓磨)と妻の距離。コロナ禍で会えなかった不倫相手の性生活を詮索し距離をはかる愛人。遠巻きに観察しながら急に距離を縮めてくる職場の先輩。嫁を飲みに誘って一気に距離を縮める舅(岩谷健司)。久しぶりに再会する教え子や故郷で暮らす妹。遠すぎたり近すぎたりと、みんな「距離」に翻弄される。

この二組の夫婦のコメディは、人と人の「距離」と、その“あわい”についてのスケッチだ。子づくりだって、精神的にも物理的にも、相手との距離を可能な限り埋めて“密着”しないと成就しないのだ。

(7月31日/新宿ピカデリー)

★★★★


【あらすじ】
コロナ禍も治まり始めた東京。一階にリタイアした両親、二階に息子の康介(泉拓磨)と、さら(鄭亜美)夫婦が暮らす二世帯家族。転勤が決まった康介に同行せず家に残るという嫁に、初孫が欲しくてたまらない義母の晶子(石川彰子)はやきもきしていた。無神経に“子づくり”に干渉する晶子に、息子夫婦のプライバシーに立ち入るなと正論を通す夫(岩谷健司)にも不満が募る。ついに、嫁は韓国人だらか気持ちが伝わらないのかもと口にするしまつ。そんな義母のプレッシャーに応えようと、さらは健気に康介に“子づくり”を迫るのだが・・・。CM畑出身で劇作/演出家でもある山内ケンジの純粋社会派深刻喜劇と銘打った脚本/監督作。(135分)

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