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ぽんしゅう座

優柔不断が理想の無主義主義。遊び相手は映画だけ

■観客に媚びないという厳しさ

2009年05月19日 | ■銀幕酔談・雑感篇「映画の近所にて」
先日の連休。暇にまかせて部屋の整理をしていたら、昔、観た映画を記録していた古いノートが出てきた。タイトルと劇場名、観た日付けが15年分書きとめてある。部屋の整理は中断して、これまた暇にまかせてパラパラとページをくった。75年に封切られた「祭りの準備」という映画を、76年の3月、4月、6月とたて続けに観ている。さらに翌77年と79年の4月にも。全部で5回。他にも繰り返し観ている映画が何作品もあった。

レンタルビデオすらない時代、当然すべて映画館で観ている。当時、私にとって映画館といえば封切り館ではなく、2~3本立てで上映する名画座だった。それを思い出して「祭りの準備」の併映作品をみてみると、確かにすべて違う映画だった。繰り返し観た映画が多いわけだ。同じネタの組み合わせを替えては、何とか新味を出して客集めに普請していた館主の苦労も想像できるというものだ。

かつてスクリーンという媒体しか持たなかった映画は、そこに集う観客の時間を消費しながら、何年もかけてゆっくりと自らのエネルギーも消費していった。しかし、映画がパッケージ化され、個人単位で貸し借りや、所有できるようになって以来、鑑賞者の消費効率は飛躍的に高まり映画のエネルギーの消耗スピードも驚くほど早くなった。経済効率としては正解なのだろう。しかし、鑑賞作品の選択権を完全に消費者に握られてしまった「映画」にとって、生き残り競争が厳しいことは想像に難くない。

この厳しさが吉と出るか、凶と出るか。
今年の前半に公開された日本映画などをみていると、観客への露骨な媚が臭う企画が散見され少し嫌な予感がする。
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■スラムドッグの憂鬱

2009年05月15日 | ■銀幕酔談・雑感篇「映画の近所にて」
「スラムドッグ」子役たち~家撤去で路上生活に

今、手元にある2009年5月15日の朝日新聞夕刊(12面)に、こんなタイトルの記事が載ってるのを見つけた。以下に記事の趣旨を要約抜粋して転載する。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 インド紙タイムズ・オブ・インディア(電子版)によると、ムンバイ市当局が映画「スラムドッグ$ミリオネア」で子役を演じた約20人の子供たちが住むスラム街の住居を撤去した。
 中心人物の子供時代を演じたアザルディン・イスマイル君(10歳)は「行く場所がなくなり、暑い中、路上にいるしかない。今日は食事も食べられるかどうか分からない」と沈んだ様子で話した。
 地元州当局は、主役級の子供たちに住居を提供する約束したが、実現していないという。
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先日、映画「スラムドッグ$ミリオネア」を観たが、どうにも暗澹たる気分になった。そのことは、「CinemaScape-映画批評空間-」にも書いた。

端的にもう一度書くと、映画「スラムドッグ$ミリオネア」は、カースト制という階級制度の悲劇をいとも単純に「運命」というファンタジーに置き換え、あたかも「希望」がスクリーンに存在するかのような錯覚により商業的成果を追求し、インド当局もまた制度撤廃の掛け声とは裏腹に、階級の存在を既成事実として(つまりは既得実利として)容認しているように感じられたのだ。

この新聞記事が、間違えであれば善いと願う。
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■下北のジャニス

2009年05月01日 | ■銀幕酔談・雑感篇「映画の近所にて」

「クローズ ZERO II」(三池崇史監督)を観た。私が参加させてもらっているCinemaScapeという映画レビューサイトで、繊細な感性とユニークな視点で素敵なコメントを寄せている女子コメンテーターさんが、「あっくん!あっくん!」と熱を上げている(ようすの)金子ノブアキを初めて見る。シャープな身のこなしのなかに、野性と知性を感じさせ、今風のお坊ちゃんイケメンとは一線を画す独特のムードを持った男だった。

で、調べてみて驚いた。親父はバックスバニーのドラマー・ジョニー吉長で、なんと母ちゃんは金子マリかよ!!。そうなのか、この二人が金子ノブアキの素(もと)かよ!。大好きでした「金子マリ&バックスバニー」。数十年の時を超え、記憶の底に埋もれていた青春の私的伝説が鮮明によみがえりました。そう、あれは大学3年のゼミ合宿。山中湖畔の別荘で・・・・鈴木のチエちゃんが・・・。いや、この話は長くなるので、また別の機会にしましょう。

で、金子マリ姐さん、今でも現役バリバリなのですね。恐れ入ります、知りませんでした。最近、ジャニス・ジョプリン好きをよいことに、大胆にも和製ジャニスを売りにする女性ボーカルがおりますが、彼女の歌を聞いたとき正直「どこがや、ケッ」と思いました(ファンの方々、悪しからず)。日本でジャニスを名乗るなら、まずは下北(沢)のジャニスこと金子マリ姐さんに、きっちり仁義を通してもらわねば・・・。

ところで、どう見ても「あっくん」はお父さん似ですね。
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■時代と格闘した喜劇

2009年04月23日 | ■銀幕酔談・雑感篇「映画の近所にて」

松竹の「釣りバカ日誌」シリーズが今年を最後に終了するのだそうだ。
スペシャル版を含めて年末に公開される作品で全22作になる。
シリーズは1988年12月24日に「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」の併映作としてスタートしている。

それは、とても微妙なタイミングであった。
映画公開から二週間後の翌89年1月7日に、昭和天皇が崩御した。
それまでの約半年間、日本はバブル景気に浮かれつつも
重苦しい自粛ムードが支配するという矛盾にみちた空気に支配されていた。
きっと、喜劇映画にとって幸福なスタート時期ではなかっただろう。

91年、バブル景気崩壊。失われた10年とも15年とも呼ばれる時代が始まる。
その後も、シリーズは波乱のなかで作り続けられる。
94年まで併映作として年末作品の看板であった渥美清が96年に死去。
渥美の不在と長引く不況は松竹本体をもゆるがす。
95年に開設されたテーマパーク「鎌倉シネマワールド」はわずか3年で閉鎖。
ついに、64年続いた松竹大船撮影所も2000年に閉鎖、売却されてしまった。

喜劇でありながら「釣りバカ日誌」シリーズには負の時代に翻弄されながも格闘し、
ときに停滞し、あるいは激変した時代性をしたたかに取り込んできた強靭さを感じる。

今年の年末は劇場で最終作を観てみようと思う。
それから改めて、シリーズ20余年をふり返ってみたいと思い始めた。
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■天国の駅、あるいは世の中との距離 ~3月18日から20日までのこと~

2009年03月19日 | ■銀幕酔談・雑感篇「映画の近所にて」
そのころはまだ学生気分が抜けず、「世の中」のどこにも自分のポジションが見い出せずにいた。いきおい私の時間は、まわりの人びとに支配され、来る日も来る日も仕事という名の無理難題が生む軋轢と膨大な雑務に忙殺された。ついには、誰とも口をききたくなくなった。一緒に暮らしていた女と会話することすら苦痛だった。ことの限界をさっした女は、人里はなれた山奥の温泉旅館で三日間過ごすことを提案してきた。

女が雑誌の特集でみつけてきた大正時代に建てられたというその旅館は、かつては粋とモダンを謳歌し、今は上品に枯れてひっそりと暮らす老人のような風情をたたえていた。「世の中」からしばし距離おくにはほどよい異空間だ。小百合さんも、津川さんも、ちょうど今朝帰えちゃたんですよ。残念でしたね。出迎えた仲居が興奮気味に言うには、この旅館を舞台に映画の撮影が行なわれ、俳優やスタッフらがおおぜい投宿していたが、数人を残して私たちと入れ違いに帰京したそうだ。

到着した日も、翌日も、何をするでもなくただ漫然と過ごした。憶えていることといえば、窓にはつららが垂れ下がり外はずっと小雪が舞っていたこと。淡々と食べては黙々と酒を飲み、ふらつく足で湯に浸かっては女と寝た。確か二泊目の深夜だったと思う。旅館にいくつかあるなかでも一番小さな風呂で俳優のNさんと鉢合わせになった。よりによってこんな山奥の、しかもいささか非常識な時間に、「世の中」では知らぬ人がないほどの人気者と互いに素っ裸で出会うなんてと思わず苦笑した。

まる二日間、テレビも見ず総ての情報から身を隠すように過ごして山をおりた。帰途の列車のなかで数日ぶりに目にした新聞には、大阪で起きた菓子メーカー社長の誘拐を伝える見出しが踊っていた。私たちが旅館にこもったちょうどその日の夜、社長は自宅で入浴中に何者かに裸のまま連れ去られたそうだ。社長は翌21日に開放される。奇しくも私とほぼ同じ時間、彼も「世の中」から姿をくらませていたことになる。事件はこの後、1年半に渡って「世の中」を騒がせることになるが、その間社長は「世の中」対して口を閉ざし続けた。

あれからずいぶん時がたった。最近、やっと映画「天国の駅」を観てみる気になった。
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