goo blog サービス終了のお知らせ 

詩の本+

日本近代象徴詩、モダニズム関連の書籍を紹介

現代詩の研究  白鳥省吾著  新潮社

2014年05月11日 19時08分54秒 | 案内書・詩論

Sirobon001_2

【書誌】
本体 縦181×横123ミリ 黄色。
本文 378頁 一段組。
表紙は茶のインクでデザインされた地が印刷されている。題名、著者名、発行所名、と共に「主目」として、目次が記される。背には、題名、著者名、発行書名。
【奥付】
印 刷 大正一三年八月二八日
発 行 大正一三年九月三日
定 価 一円五〇銭
著作者 白鳥省吾
発行者 佐藤義亮 
    東京市牛込区矢来町三番地
発行所 新潮社
    東京市牛込区矢来町三番地
    電話 牛込八〇六番 八〇七番
         八〇八番 八〇九番
    振替  東京一七四二番
印刷者 佐々木俊一
印刷所 富士印刷株式会社
    東京市小石川区西江戸川町
    電話小石川五九二番
【目次】
第一編 詩を作る基礎
 (一)韻文に於ける詩の位置 (二)詩の種類 (三)詩の概念からの解放
第二編 自由詩運動の前後
 (二)明治三十八九年の詩壇 (二)当時の詩形と佐々醒雪のリズム論 (三)明治四十年の詩壇 (四)岩野泡鳴の「自然主義的表象論」と片上天弦の「詩歌根本疑」 (五)前期の口語詩論 (六)川路柳虹の口語詩 (七)服部嘉香の「言文一致の詩」と島村抱月の「現代の詩」 (八)相馬御風の口語詩と詩論 (九)自由詩の進展 (十)新しい時代の詩
第三編 民衆詩の起源と発達
 (一)民衆詩の起源 (二)民衆と詩の本質 (三)日本に於けるホイットマン、カアペンタア、トラウベルの文献の径路 (四)「科学と文芸」「表現」「民衆」に就て (五)福田正夫の詩 (六)百田宗治の詩 (七)富田碎花の詩 (八)白鳥省吾の詩 (九)民衆詩の特質 (十)批難と主張 (十一)民衆詩 運動第二期 (十三)労働者自身の詩 (十四)詩と宣伝
第四編 新しき詩の要素
 (一)詩の現実的傾向 (二)室生犀星の詩 (三)川路柳虹の詩 (四)佐藤惣之助の詩 (五)千家元麿の詩 (六)第一歩と極致
第五編 象徴詩の本質に就て
 (一)象徴詩の起源 (二)神原有明の詩 (三)薄田泣菫の詩 (四)岩野泡鳴の詩 (五)伊良子清白 (六)北原白秋 (七)三木露風の詩 (八)三富朽葉の詩 (九)萩原朔太郎の詩 (十)西條八十の詩 (十一)日夏耿之助の詩 (十二)結論
付録 参考書一覧
 *「参考書一覧」冒頭に「主として本書中に論評参考に資したる詩書を挙ぐ」と記されている。

【所蔵】
国立国会図書館         ○
日本近代文学館         ○
京都ノートルダム女子大学図書館 ○

大学図書館所蔵〔東京大学総合図書館 金沢大学附属図書館 九州大学附属図書館 駒澤大学図書館 昭和女子大学図書館 奈良大学図書館 など〕

【解題】
 白鳥省吾は、本書で自身を「民衆詩」を書いた詩人として位置づけている。大正六年に詩壇の団結を図り多くの詩人が参加した詩話会が、大正一〇年に北原白秋らの脱会により分裂する。白鳥省吾も中核にあった詩話会だが、脱会者は民衆詩を支持する詩人が主導権を握っていると考えたのである。大正一一年には、白鳥省吾の詩「森林帯」を批判した北原白秋との間に『日本詩人』(詩話会篇・新潮社発行)誌上などで「詩とは何か」をめぐって議論が交わされる。
 民衆詩派には白秋の批判以前から「表現が粗雑、冗漫であり、詩の本質は別にあり」との批難があったことが、本書の第三編(十)にも紹介されている。第五編(六)では白秋について「本質的な象徴詩人ではなかつた」と辛い評価を与えている。本書は詩話会の発行物を担っていた新潮社発行の詩論書であり、白鳥省吾の民衆詩作者としての立場が色濃く反映されている。
 白鳥省吾が「新しい時代の詩」と見なすのは、「人間の複雑な感動をさながらに表現する内面律を主とした」自由詩および「感動そのものを在りのまゝに伝へる」口語詩であり、また社会的要素を含むものである。
 一方、同書で白鳥省吾は、自身の第一詩集『世界の一人』(大正三年)、第二詩集『大地の愛』(大正八年)を、象徴詩風の作品と認めている。白鳥省吾の考える象徴は、「物象そのもののみを信ぜず」、「不可見の基調を補足せん」とするため、「一角獣は神聖と力の象徴」と見なすような原始的な象徴表現に暗示を得た、近代における想像の表現である。
 したがって、象徴精神の理解に深浅はあっても、その影響を受けた表現の幅は広い。七五調を主体とした抒情詩人として括られる『文庫』派の詩人、伊良子清白、および河井醉茗、澤村胡夷の詩に、白鳥省吾は象徴詩らしい表現を見出している。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。