先日、10年ぶりにある方と電話で話しをした。
私はその方のことを「あんちゃん(兄ちゃん)!」と呼ぶ。
本当の兄のような存在の人である。
私より6歳年上、
とある飲料メーカーに勤めていて、
そこで話題となったCMを取り仕切った人物である。
有名俳優が料亭で美女をはべらし、
「たまらんなー」というCM。
固いイメージの社内では相当の議論があったようだ。
「あんちゃん、よくそんな企画が実現しましたね?」と尋ねると、
「清太さん、だって今必要な本質を突かなきゃダメでしょう!」
これが口癖だった。
「あんちゃん」はマーケティングの天才。
マーケティングの成績は1番だった。
当時、あんちゃんに
「お願いします。僕にマーケティングを教えて下さい!」と何度も懇願したが、
「何をおっしゃいます!清太さん、俺なんか教えられる程ではないよ」とこれも口癖だった。
でもある時あんちゃんは、
「清太さん、CMを観るときに、このCMが何を意味しているのか、
ターゲットは誰なのか、何を訴えようとしているのか。
これを考えてCMを観ていたら、一番勉強になるよ。
CMは必ずそのことを考えて作っているんだよ!」と教えてくれた。
それ以来、CMを観るときは、そのことを考えて観ることが私の習慣になった。
その習慣は今も続いている。
「あんちゃん」との出会いは、
ビジネススクールの入学合宿で同室になったこと。
緊張して向かった先に、その顔があった。
「清太さん、俺ももう凄く緊張してんだよ!飲まなきゃやってられない!」
そう言ってビールの栓を「プシュー!」と抜いていた。
その言葉にどれだけ救われたか。
「清太さん、あそこのお店にうちの商品が入っているんだ!ちょっと一杯付き合ってくれる!」
それも口癖だった。
ある時、グループ学習をしていて、
明らかに上司の顔をしていたことがあった。
「清太さん、あなたの意見の本気度を見ていたんだよ!」
そこには本当に暖かい眼差しの上司の顔があった。
10年ぶりの電話で久しぶりに声を聴いたが、
やっぱり「あんちゃん」には、
また、「マーケティングを教えて下さい!」と懇願しようと思う。
鈴木清太