以前、「Pink Noiz World」のページの隅っこに載せていた、男と女のラブストーリーです。GarageBandで作った「煙が目にしみて」を聞いているうちに、浮かんで来たものです。
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<noscript></noscript><script src="http://curemix.com/blogparts/music/music002/webpita_blogparts_music002.js" type="text/javascript" charset="utf-8"></script><script type="text/javascript"></script>男と女のラブストーリー~煙が目にしみて
その1
あるホルモン焼き屋のテーブルに、男と女が向かい合って座っている。「君、ライブでトチったから泣いているのかい。」、「いいえ、ホルモン焼きの煙が目にしみただけ。」男の言葉が図星だった女はこう言い訳した。そして男と女は 肩をよせ合い夜の街へと消えていった。
その2
とあるホテルの一室、男は女を優しく抱いた。波のように押し寄せる男に、女は素直に喜べなかった。それは昼間のライブの失敗が頭から離れなかったからだ。終わった男の横顔を見つめながら、女は眠ってしまった。
その3
浅い眠りから覚めた女は、隣に眠っているはずの男を手で追ってみた。しかし、男はもう そこには居なかった。「今夜くらいは一緒にいてほしかったのに。」そう思った女は、携帯を手に取った。
その4
「トゥルル、トゥルル・・・。」男はなかなか出ない。諦めて切ろうとした時、「私だ。」男は出た。「やっぱり、奥様のところへ帰っていってしまうのね。」女は小さな声でつぶやいた。「・・・・すまん。」男は一言そういうと携帯を切った。
その5
よく晴れた次の日曜日。女はある郊外のニュータウンにいた。そこは、男のマイホームの前。「どうしてここへ来てしまったのかしら。」と、女は後悔していた。と、その時、ドアが開き、小さい子どもを抱いた女性が出て来た。女は、思わず物陰に身を隠した。
その6
「あの人が奥さん・・・。」女は、強い嫉妬を覚えた。「パパー、早くキティーちゃんのところ行こう。」子どもが呼んだ。すると、今まで、女の前では見せたことのない笑顔で男は現れた。その姿を見た女は、センター駅に向かって走り出していた。「来るんじゃなかった。」女は心の中で何度もそう叫んだ。
その7
あるホテルの一室、女は男にこう聞いてみた。「この前の日曜日何してたの。」「朝から取引先と接待ゴルフさ。どうした、いつもそんなこと聞かないのに。」女は黙って目を閉じた。
その8
男と女の出会いは、ジャズ・シンガーである女のライブを、いつも一番前のテーブルに座ってバーボンのグラスを傾けている男がいた。ライブが終わると他愛もない会話を楽しむ、そんな何処にでもある出会いだった。
その9
今考えても、どうしてあんな失敗をしたのか分からない。ただ、いつもと違ったのは、あの日、5年付き合った、年下のサックス吹きの男と別れたこと。彼はミュージカルが好きだった。落ち込んだ女を「ホルモンでも食べに行かないか。」と男が誘った。いつもはこんな誘いには乗らなかったはずなのに。
最終話
男の夜の顔しか知らない女は、いつか、昼の顔も知りたくなっていた。もう、終わりにしよう。
時は流れ、女はいつもの様に唄っている。すると一番前のテーブルに、カクテルのグラスを持った男が座った。(おわり)
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