今年6月に行った修理のレポを、今更ながらまとめてみました。
ピアノは、某社が所有するスタインウェイB型。
製造されたのは1956年、つまり、56歳のピアノです。
過去に少なくとも2回、もしかすると3,4回オーバーホールされている形跡があります。
最後のオーバーホール(おそらく販売時に行われた修理)は、見たところ間違いなく海外で行われていることから、恐らく海外育ちのピアノだろうと推測出来ます。
今回の修理は、弦を巻き付けているチューニングピンという部品が、弦の張力に耐えられなくなっており、調律の保持が困難になっていたため、このピンのトルクを増すことが目的です。
こういった場合、一般的には、現状よりも一回り太いピンに交換すれば解決します。
ところが、前述の通り、このピアノは何度かオーバーホールされており、その度に太いピンに替えているので、通常よりかなり太いピンが使われております。
様々な事情があり、これ以上太いピンは出来るだけ使いたくありません。
とは言え、ピンが打ち込まれている板(ピン板と言います)を交換するには、予算と時間と設備が必要ですので、今回はピンスリーブを使用する修理で対応しました。
これは、一度ピンを抜き取り、薄板(スリーブ)を挟み込んで打ち込む方法です。
ピンの太さが変わらないことと、新しい部品が要らないというメリットと引き換えに、非常に面倒な方法でもあります。
しかし、今回の場合は、有効な方法だと判断しました。
ついでに、疲労により、心地良い振動が得らていない弦も全て交換することにし、折角なので、ダンパーフェルトも貼り替えることにしました。
ということで、まずは色々と記録をとりながら解体します。
ピンスリーブを使いながら、後は普通に弦を張っていきます。
とりあえず、全部張り終えたところ。
分かり辛いかもしれませんが、よく見れば、スリーブ(薄板)が挟まっているのが確認出来ると思います。
張弦後は、付随する諸々の調整を行い、予めフェルトを貼り替えたダンパーを取り付け、調律を繰り返す…通常のルーティンです。
本来ならこれで終わりですが、やはり職業柄、アクションを全く無視することは出来ません。
予定にも見積もりにも入っておりませんが、一通りの手入れはしないと気が済みません。
しかし、60年近く経っても衰えない音色に、技術者がよく口にする言葉を思い出し、しみじみと思い知らされました。
「腐ってもスタインウェイ。」
お問合せありがとうございます。
ハンマーのファイリングを行うと、必ずタッチも音色も変わります。
結果、好みでなかったご様子ですが、そのことは調律師さんにお伝えされましたでしょうか?
きっと、再調整に応じてくれるはずです。
ただし、ハンマーの形状や重量が物理的に変わりましたので、ファイリング前と全く同じ状態には戻りません。
>ハンマーアッセンブリしていただきたい
これは、ハンマーアッセンブリの交換をご希望ということでよろしいでしょうか?
YUAは特殊な構造です。
YUAのアッセンブリ交換を行う場合、私はノーマルタイプの部品を採用しますので、それこそタッチが激変します。
もちろん、使用するハンマーによっては、音色も全く違うものになります。
どちらも良くするつもりで取り組みますが、音もタッチも良し悪しの判断は奏者の主観(好み)によります。
少なくとも、音もタッチも元と同じには絶対になりません。
そして、修理代はそれなりに高額になります。
以上を御承知の上でご依頼頂けるのでしたら、喜んでお受け致します。
今一度、よくご検討された方がよろしいと思います。
尚、メールアドレス等ご連絡先を教えて頂ければ、もっと具体的な説明をさせていただきます。
必要でしたら、ネット上には公開しませんので、当コメント欄にご記入頂ければと思います。