半年ほど前のことですが、レスナーのお客様宅へ調律に伺った際、ソステヌートペダルの踏み心地についてご相談を頂きました。
どうやら、軽く感じるそうです。
ピアノはYAMAHAのC3B、約2年前にオーバーホールしたピアノです。
この時代のソステヌートペダルは、概ね踏み心地が軽く出来ています。
後発のモデルチェンジの際、このふわついた感触は改善されましたが、ヤマハの初期のソステヌートペダルは、全体的に軽い傾向が見受けられます。
これは、構造よりも、主に材質に起因すると言えるでしょう。
具体的には、天秤と呼ばれる部品の材質が、初期は木材だったのが、後に鋳鉄に変更されました。
そうすると、天秤そのものが重くなる為、ペダルの踏み心地も重くなります。
また、天秤の材質の変更に伴い、取り付けられているスプリングもより強度の高いものに変わりました。
その分、負荷も掛かるので、更に重くなったのです。
さて、このピアノの場合、木材の天秤による弱いバネのソステヌートです。
軽いのは当然でして、抜本的な解決はアッセンブリ毎交換するしかありません。
これは、その場で急に出来る作業ではない為、どうやって「誤魔化す」か、考えながら調律を行っていました。
その時、ふと隣のピアノに目が止まりました。
実は、このレスナー宅には、GPが2台あるのです。
そして、一台はまだ新しく、主に生徒さんが使用するピアノです。
そう、新しいピアノ……
勿論、こちらのピアノも三本ペダル。
期待を胸にすかさず天秤をチェックしてみると、予想通り、鉄製の天秤でした。
バネを外してみると、見た目にも分かるぐらい太くて長く、勿論、強度も強いです。
本当なら、天秤毎交換するのがベストでしょうが、微妙な部品の取り付け位置が合致せず、他の部品への干渉も生じる為、現地での作業は困難と判断し、バネのみを交換しました。
これだけでも、随分と踏み応えがあるようになり、お客様もご納得くださいました。
もちろん、これが十分な仕上がりとは思っていませんし、新しい方のピアノを少し犠牲にした面も否めません。
しかし、予め準備をしていない現場作業としては、なかなか良い判断が出来たかなと思っております。