Rondo Capriccioso ~調律徒然日記~

Piano Labo.(代表)竹宮秀泰によるブログ。
「ピアノ」を主題に気まぐれなロンド形式で綴ります。

UPオーバーホールの断章 ~ウィペンの手入れ

2012年09月26日 | 作業レポ

UPのオーバーホールを行う際、いつもアクションのウィペンというパーツの対処に悩みます。

ウィペンは、様々な部品で構成される集合体です。
しかし、直接音を出したり止めたりはせず、その補助的な役割を果たします。
また、鍵盤から伝わるエネルギーを受け止め、ハンマーに伝達する中継点にもなります。

もちろん、アッセンブリーを全て新品パーツに全交換するという方法もあります。
これは、作業を行う身としましては、交換後の調整の手間はありますが、手っ取り早くてリスクも少ない、言わば楽な方法です。
ただ、ウィペンの新品パーツは非常に高額な為、その分、お客様のご負担が大きくなってしまいます。

そこで、消耗の激しい箇所だけ交換することも多いです。
作業の手間は増えますが、部品代は圧倒的に安く済みます。

先日行ったオーバーホールも、この方法を採用しましたので、少し紹介します。

まずは、取り外したウィペンです。




この際、センターピン(2ヶ所)は無条件で交換しますので、ジャックとウィペンフレンジを外します。




このピアノの場合、ジャックスプリング、ウィペンヒールクロスという部品の消耗が激しいので、交換することにしました。
その為に、まずはこの二つを取り除きます。
ついでに、金属の部品(ダンパースプーン、バックチェックワイヤー、ブライドルワイヤー)は、スチールウール等で研磨します。




新しいスプリングとウィペンヒールクロスを取り付けます。
ウィペンヒールクロスは、自作の治具で裁断します。




最後に、ジャックとウィペンフレンジを取り付けて、完成です。




実際には、これが88個あります。
当然ながら、全て同じ精度で仕上げないといけません。

ついでに、レギュレーティングレールを外し、レギュレーティングボタンクロスというパーツも交換します。
古いパーツを刃物で取り除き、新しいクロスを貼り付けるだけです。
※ジャックストップレールフェルトもこのタイミングで張り替えることが多いのですが、今回の修理ではそのまま使用することにしました。




あとは、アクションを上下逆さまに固定し、一つずつ順番通りに取り付けていきます。
左右の間隔や傾き等は、フレンジに薄紙を貼り調整します。




先に取り付けてあるバットという部品との兼ね合いも大切です。





最後に、レギュレーティングレールも取り付けます。




ウィペンの状態により、どういった方法で修理を行うか、その見極めはとても大切です。
今回の方法も、その一例に過ぎません。

 


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