以前、行き場所の無いALS患者さんを僕のような一応脳外科を自称している者が診たことがありました。診たというよりも在宅が難しいので病院療養管理といったところだと思いますが。
************************
ALSの義母、呼吸器着けず死亡…医師は詳しい説明せず
京都府長岡京市で開業する神経内科医が、全身が動かなくなる筋委縮性側索硬化症(ALS)の女性患者に対し、日本神経学会治療ガイドラインで定められているインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)を行わないまま、延命のための人工呼吸器を装着せず、女性が死亡していたことがわかった。
女性は医師の妻の母親で、医師は経緯について医学雑誌「神経内科」5月号に投稿し、「呼吸器装着可否の決定を、患者すべてに一律に求めることは妥当なのか」と問題提起している。
医師の説明などによると、女性は2003年に59歳でALSを発症した。総合病院で病名の告知を受けたが、人工呼吸器の使用などについて詳しい説明は受けていなかった。
その後、医師が在宅治療の主治医となり、家族らが〈1〉女性にインフォームド・コンセントをしない〈2〉人工呼吸器を装着しない――などと決めた。女性は06年10月に死亡した。
医師は読売新聞の取材に対し、「批判も多くあると思うが、家族全員が悩んだあげく、目の前の患者にとって最良の道を考えた」と話している。
指針作成に参加した国立病院機構宮城病院の今井尚志・診療部長の話「指針に拘束力はないが、一般論として患者自身の知る権利は、『周囲の知らせない権利』よりも優先するべきだ。医師に任せたいのか、自分で決めた医療を受けたいのかも、患者の選択肢といえる」
(2007年8月2日21時15分 読売新聞)
************************
参考資料;ALS治療ガイドラインの関連部分
この件に関しては患者さんが主治医の義母だったということもあり、
民事訴訟にはならないと思いますが、ガイドラインができてしまっている以上、
例の法医学会のガイドラインができたことによって都立広尾病院事件
が発生したように、告知しないことにより
いつ刑事事件になってもおかしくないのでは?
と思います。
告知によりいくら患者さんが苦しもうが、
病気を苦に自殺してしまおうが(これも訴訟へ?)
告知の問題ともALSの問題ともちょっと違いますが終末期医療のガイドライン
とそれに関する、aruga先生;緩和ケア医の日々所感
の記事を掲載させていただきました。
************************
終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン
終末期医療及びケアの在り方
① 医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行い、患者本人による決定を基本としたうえで、終末期医療を進めることが最も重要な原則である。
② 終末期医療における医療行為の開始・不開始、医療内容の変更、医療行為の中止等は、多専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきである。
③ 医療・ケアチームにより可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、患者・家族の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療及びケアを行うことが必要である。
④ 生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は、本ガイドラインでは対象としない。
2 終末期医療及びケアの方針の決定手続 終末期医療及びケアの方針決定は次によるものとする。
(1)患者の意思の確認ができる場合
① 専門的な医学的検討を踏まえたうえでインフォームド・コンセントに基づく患者の意思決定を基本とし、多専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチームとして行う。
② 治療方針の決定に際し、患者と医療従事者とが十分な話し合いを行い、患者が意思決定を行い、その合意内容を文書にまとめておくものとする。上記の場合は、時間の経過、病状の変化、医学的評価の変更に応じて、また患者の意思が変化するものであることに留意して、その都度説明し患者の意思の再確認を行うことが必要である。
③ このプロセスにおいて、患者が拒まない限り、決定内容を家族にも知らせることが望ましい。
(2)患者の意思の確認ができない場合 患者の意思確認ができない場合には、次のような手順により、医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う必要がある。
① 家族が患者の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とする。
② 家族が患者の意思を推定できない場合には、患者にとって何が最善であるかについて家族と十分に話し合い、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とする。
③ 家族がいない場合及び家族が判断を医療・ケアチームに委ねる場合には、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とする。
(3)複数の専門家からなる委員会の設置
上記(1)及び(2)の場合において、治療方針の決定に際し、・医療・ケアチームの中で病態等により医療内容の決定が困難な場合・患者と医療従事者との話し合いの中で、妥当で適切な医療内容についての合意が得られない場合 ・家族の中で意見がまとまらない場合や、医療従事者との話し合いの中で、妥当で適切な医療内容についての合意が得られない場合等については、複数の専門家からなる委員会を別途設置し、治療方針等についての検討及び助言を行うことが必要である。
解説編
************************
具体的なレスピレーターの話や、昇圧剤に関して
つっこんだ話がなされていないので
いつ司法地獄に突き落とされるかわからないような
ガイドラインです。
今年6月21日からの岡山での日本緩和医療学会では、この問題が熱かったようです。
学会記(1)治療の中止は・・・
-2007/6/25
(2)臨時シンポ
-2007/6/26
(3)ガイドラインと李先生の講演
-2007/6/27
(4)延命の中止。ネジルとハーバー
-2007/6/28
(5)殺人罪での告発は愚かな方策
-2007/6/29
(6)司法と医療との狭間で
-2007/6/30
最後まで読んでくれてありがとうございます。
ALSって難しいなと思った方、
中途半端なガイドラインって恐ろしいなと思った方、
ポチッ↓をお願い致します。
************************
ALSの義母、呼吸器着けず死亡…医師は詳しい説明せず
京都府長岡京市で開業する神経内科医が、全身が動かなくなる筋委縮性側索硬化症(ALS)の女性患者に対し、日本神経学会治療ガイドラインで定められているインフォームド・コンセント(十分な説明に基づく同意)を行わないまま、延命のための人工呼吸器を装着せず、女性が死亡していたことがわかった。
女性は医師の妻の母親で、医師は経緯について医学雑誌「神経内科」5月号に投稿し、「呼吸器装着可否の決定を、患者すべてに一律に求めることは妥当なのか」と問題提起している。
医師の説明などによると、女性は2003年に59歳でALSを発症した。総合病院で病名の告知を受けたが、人工呼吸器の使用などについて詳しい説明は受けていなかった。
その後、医師が在宅治療の主治医となり、家族らが〈1〉女性にインフォームド・コンセントをしない〈2〉人工呼吸器を装着しない――などと決めた。女性は06年10月に死亡した。
医師は読売新聞の取材に対し、「批判も多くあると思うが、家族全員が悩んだあげく、目の前の患者にとって最良の道を考えた」と話している。
指針作成に参加した国立病院機構宮城病院の今井尚志・診療部長の話「指針に拘束力はないが、一般論として患者自身の知る権利は、『周囲の知らせない権利』よりも優先するべきだ。医師に任せたいのか、自分で決めた医療を受けたいのかも、患者の選択肢といえる」
(2007年8月2日21時15分 読売新聞)
************************
参考資料;ALS治療ガイドラインの関連部分
この件に関しては患者さんが主治医の義母だったということもあり、
民事訴訟にはならないと思いますが、ガイドラインができてしまっている以上、
例の法医学会のガイドラインができたことによって都立広尾病院事件
が発生したように、告知しないことにより
いつ刑事事件になってもおかしくないのでは?
と思います。
告知によりいくら患者さんが苦しもうが、
病気を苦に自殺してしまおうが(これも訴訟へ?)
告知の問題ともALSの問題ともちょっと違いますが終末期医療のガイドライン
とそれに関する、aruga先生;緩和ケア医の日々所感
の記事を掲載させていただきました。
************************
終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン
終末期医療及びケアの在り方
① 医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行い、患者本人による決定を基本としたうえで、終末期医療を進めることが最も重要な原則である。
② 終末期医療における医療行為の開始・不開始、医療内容の変更、医療行為の中止等は、多専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断すべきである。
③ 医療・ケアチームにより可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、患者・家族の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療及びケアを行うことが必要である。
④ 生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は、本ガイドラインでは対象としない。
2 終末期医療及びケアの方針の決定手続 終末期医療及びケアの方針決定は次によるものとする。
(1)患者の意思の確認ができる場合
① 専門的な医学的検討を踏まえたうえでインフォームド・コンセントに基づく患者の意思決定を基本とし、多専門職種の医療従事者から構成される医療・ケアチームとして行う。
② 治療方針の決定に際し、患者と医療従事者とが十分な話し合いを行い、患者が意思決定を行い、その合意内容を文書にまとめておくものとする。上記の場合は、時間の経過、病状の変化、医学的評価の変更に応じて、また患者の意思が変化するものであることに留意して、その都度説明し患者の意思の再確認を行うことが必要である。
③ このプロセスにおいて、患者が拒まない限り、決定内容を家族にも知らせることが望ましい。
(2)患者の意思の確認ができない場合 患者の意思確認ができない場合には、次のような手順により、医療・ケアチームの中で慎重な判断を行う必要がある。
① 家族が患者の意思を推定できる場合には、その推定意思を尊重し、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とする。
② 家族が患者の意思を推定できない場合には、患者にとって何が最善であるかについて家族と十分に話し合い、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とする。
③ 家族がいない場合及び家族が判断を医療・ケアチームに委ねる場合には、患者にとっての最善の治療方針をとることを基本とする。
(3)複数の専門家からなる委員会の設置
上記(1)及び(2)の場合において、治療方針の決定に際し、・医療・ケアチームの中で病態等により医療内容の決定が困難な場合・患者と医療従事者との話し合いの中で、妥当で適切な医療内容についての合意が得られない場合 ・家族の中で意見がまとまらない場合や、医療従事者との話し合いの中で、妥当で適切な医療内容についての合意が得られない場合等については、複数の専門家からなる委員会を別途設置し、治療方針等についての検討及び助言を行うことが必要である。
解説編
************************
具体的なレスピレーターの話や、昇圧剤に関して
つっこんだ話がなされていないので
いつ司法地獄に突き落とされるかわからないような
ガイドラインです。
今年6月21日からの岡山での日本緩和医療学会では、この問題が熱かったようです。
学会記(1)治療の中止は・・・
-2007/6/25
(2)臨時シンポ
-2007/6/26
(3)ガイドラインと李先生の講演
-2007/6/27
(4)延命の中止。ネジルとハーバー
-2007/6/28
(5)殺人罪での告発は愚かな方策
-2007/6/29
(6)司法と医療との狭間で
-2007/6/30
最後まで読んでくれてありがとうございます。
ALSって難しいなと思った方、
中途半端なガイドラインって恐ろしいなと思った方、
ポチッ↓をお願い致します。
患者さんの持つ自己決定の尊重をどう考えるかという問題提議をしてくれたニュースだなあと感じました。義母の方に、知らないでおくことへの自己決定(悪いニュースは知りたくないから家族で決めてほしいというような希望を自ら伝えておくこと)の確認もできていないような印象を受けました。専門誌への自らの投稿ということは、問題がなかったという自信があったのでしょうね。こうしたケースで議論になるのは、小児の場合が多く、親が治療を決定してしまい、子供に生きるチャンスを与えなかったとして虐待ではないかと倫理的に問われることがあります。医療ケアチームのメンバーとなったとき、私たちはどうすればいいのだろうか・・とふと思うのです。
>小児の場合が多く、親が治療を決定してしまい、子供に生きるチャンスを与えなかったとして虐待ではないかと倫理的に問われることがあります。
米国の場合この点では合理的な議論の上、法整備が為されていて
うらやましく思います。
Taichan先生のブログ↓
http://blog.m3.com/Neurointervention/20070621/1
曖昧さを残しているのも日本の医療のいい部分でもあり悪い部分でもあります。米国型訴訟が増えることを考えると、自己決定権に関してきちんとした議論が為されてきちんと法整備を進めて欲しいと思っています。