今月の売れ筋商品(試食感想等)・流通革新レポート

PosBankシニアアナリストの村上が、座長を務めます。(尚、POSBANKは、商標登録済みです)

五、MDSを支える販売時点情報(POSシステム)

2010年08月23日 | 流通革新             
五、MDSを支える販売時点情報(POSシステム)

マーチャンダイジングの精度を高めるうえで、POSシステムは小売業にとって、なくてはならない存在になってきているが、現在の課題は、

① ハード・ソフトのコストが高い
以前に比べてハードの部分については、コスト面ではかなり安価になっており、パフォーマンス性においては、日々向上している。結果的に、コストパフォーマンスが上がっていることになる。使い勝手や性能面でも、格段の進歩をとげているが、長時間、あるいは、24時間稼動が前提となっているため、バックアップを二重三重に考慮する必要があり、その費用を入れると初期費用としては、以前よりも高めになっている。これは、新技術を取り入れたことによるものなので、いたしかたないが、問題はソフトウェアの部分である。基本ソフト(Windows 3.1 ・Windows 95 ・Windows NT ・Windows 98 ・Windows XP・Windows 7・ その他DBソフト等)が、めまぐるしく変化する中で、業務システムの開発が行われている。店舗でそのシステムが稼動するときには、OS(オペレーティング・システム)のバージョンがあがっていたり、また、OSが新しくなっていたりするため、メーカーがこの変化に対応できず、フォローする体制が整えられないといったことや新規に業務システムの開発が行われることになっても、アプリケーション(プログラム)をメーカー側で請け負うことは難しくなっている。ひと昔前の汎用機を中心としていた時代には、業務面の知識を勉強して、第一線でコンピュータシステムのシステム設計やプログラミングを行ってきた訳だが、「リストラ」でSE自ら会社を辞めたり、会社都合によって辞めさせられたりし、また、「パソコン」の普及によって汎用機を中心とした仕事に携わってきた人にとっては、すんなりと入り込めない時代となってしまった今、業務システム・エンジニアと呼ばれる人がいなくなっているため、すべてと言って良いほど外注に業務(設計・プログラミング)を委託している始末である。そのため、ソフト開発費用が高くなってしまうことには、我慢できるが、悪いことにシステムの品質が以前より低下していることに対しては、頭を悩ますところである。また、修正対応に必要な期間と費用が、以前に比べると数倍かかっており、ユーザーにとって、システムを維持する費用(運用費用含む)が大きな負担となっている。先を見たユーザーは、メーカー系ではないS・I(システム・インテグレーション)企業や専業メーカー(まだ業務システム・エンジニアがいる)とのタイアップなどで対策をたてている。

② 小売業自身もリストラの結果、業務のわかるシステム・エンジニアがいない
メーカーだけの責任ではなく、小売業も営業に関係ない部門の人員配置や人員整理を行った結果、必要最低限(現行稼動している汎用系の業務フォロー)の要員しかいないため、新規業務や修正業務については、外注(外注先も専属ではなく、業務知識のない会社)に頼まざるを得ない状況になっている。会社の方針で、本業にあまり影響しない(養成に時間がかかる部分を)業務に関しては、外注化を推進し、それらの投資コストを見込んでいる場合は良いが、逆にシステム予算が絞り込まれているところでは、システムの改善や新規業務が予算にしばられて、中途半端なシステム開発に終わっている。

③ POSを稼動させるための前提条件を整備していない
POSを稼動させるための前提条件として、店舗側では、EOSの定着化、売価の徹底(値下げ含む)、PLU(プライス・ルック・アップ)を徹底させることであり、本部側では、商品の正確な登録および修正、品揃えの徹底、店舗への指導(活用ガイドとPR)等があげられる。さらに仕入先では、ソースマーキング商品の対応、本部への商品変更の連絡等があり、これらの運用次第でPOSデータの精度が良くもなり、悪くもなる。

であり、これらの課題次第で、データ活用にも影響がでてくる。
とくに、店舗におけるPOSシステム導入の目的を明確にしておかないと、単なる省力化のツールや商品部の仕事を手伝っている程度の感覚でしかなくなってしまう。少なくとも、そういった感覚を持った従業員が今なお見受けられる。
POSシステムの導入による主な狙いは、

① 売れ筋商品の欠品防止(販売量とフェース管理)
② 売れ筋上昇傾向商品の拡充体制
③ 死に筋商品の早期排除と新商品の導入フェース確保
④ 売れ数下降傾向商品の縮小体制

であり、単品管理(図表5 ─ 51)の精度向上とあわせて、自店を現状分析(位置付け、ニーズとのギャップ)したり、オペレーションを検証するための道具として利用する。それによって、ストアロイヤリティを高めていき、地域の消費者に信頼していただける店舗をつくることが目標となる。そのためには、働く人全員が、データや数値を読み取る力をつけて、経営感覚すなわち利益感覚(営業数値)を身に付け、さらに店舗が目指している方向との検証で問題点を明確にし、早期に解決していく姿勢を身に付けなければならない。
パートさんに、担当部門の数値(発注データ、仕入データ等)を見て下さいと頼むと、「すいませんが、今忙しいので」とほとんどの人が断る。「簡単だから」といっても「ほんとは、数字に弱いので」と言う理由で断ってくる。「では、家計簿をつけていますか」と聞くと「つけています」と言う。「じゃ、大丈夫ですよ」と言って、数値の説明(家計簿を例にして)をしてあげると「意外と簡単ですね」と安心した顔になる。
「データや数値」の見方がよくわからない。あるいは、理解への不安が先に立ち、冒頭のような発言になってしまう。これは、データや数値の見方の説明が不十分だったことや店舗の数値類はパートさんには関係がないと勝手に思い込んでいたためである。
どこの小売業でも、パートさんの戦力化(社員なみ)を目指している中で、意外と数値教育を行わない企業が多い。やはり、社員並みであれば、売り場担当とバックルーム担当のパートさんにも数値教育(練習問題をだす)をおこなって、少なくとも利益感覚を身に付けてもらうようになれば、会社に対する帰属意識も高まり、仕事への取り組みも意欲的になる。
数値の意味するところが理解できてから、データ活用の手順を教育しなければ、自分勝手な解釈をしたり、わかっているものと思っていたことが、実は理解されていないと言うことがよくある。
データ活用の手順としては、

① 現状分析(問題点の提起)
・ 各々の帳票に出力項目ごとに比較データ(基準値)の設定と数値の把握
・ 業界基準、企業基準、部門基準、店舗基準、担当者基準
・ 計に対する構成比、時系列(前月比、前年同月比、予算比)
・ 現場の実態
 販  売…基本オペレーション、顧客ニーズや変化の対応
 商  品…品揃え、鮮度、在庫、発注等
 イメージ…宣伝、店舗内外装、照明等
・ 問題点の洗い出し
* 従来は「カン」や「思いつき」で問題提起が多かった

② 問題点の整理と対策案(仮説)
・ 真の原因の追求(現象面の洗いだしに終わっていないか)
・ 解決案の作成 (優先する立場を見失わないこと)
・ 優先度と実現性のチェック(計画をたてる)

③ 実施
・ 行動しなければ、何も解決しない

④ 検証
・ 該当する帳票の出力項目のチェック
・ ①に戻る

等があり、社員全員が自主的にマーチャンダイジングに参画する意識を身に付けることが大事である。
今や、パソコン・POS機器のハード性能は、一時期の大型汎用コンピュータと同様に年々性能が倍々に向上している(コア2からI3、I5、I7と言う具合に)ので、ソフトウェアの方の進歩が低迷している(各命令のスピードを意識しないで良い)が、運用面で入力の正確性や使い勝手、楽しさに重点がおかれている、CMと商品(ブランド)との効果分析等が充実してきている(CM総合研究所・CM DATABANK…http://www.cmdb.jp/を参照)。

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