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a green hand

ハルということ

かつてと言ってもそんなに昔ではない、6月のことだった。
結婚記念日と夫の誕生日を兼ねて米沢の「すみれ」という
時の宿を訪れた時である。

そこは、原則二人の宿であり、テレビも時計も置いていない。
そういうコンセプトの宿である。
二人でないとだめなのである。兄妹、親子、友達、恋人同士、夫婦
なんでもいいが二人だけである。

本棚を見た。
その中でとても印象に残った背表紙、それが「ハル」である。
手にとってみると緑のきれいな柔らかな色で出来たその本は
安らぎさえ感じさせた。

そのタイトルに惹かれたのは何より大きい。副題として「哲学する犬」
とついている。
部屋に持ち込んだ。。
もうひとつの興味深いことは、蓮池薫が翻訳者だったことだ。
拉致被害者というだけで特別な感情をもっているわけでもなかった。
だが、その時は、拉致被害者という特別の感情が沸き起こっていた。

韓国語でハルとは「いちにち」という意味だという。
短い文の中に可愛い犬のイラストがあり、その犬が短い言葉でつぶやく
その言葉に哲学しているな~の感があった。

あとがきの部分で、蓮池さんが日本語に訳すにあたっての
とても真摯な思いが述べられていた。

人生とは皮肉なものである。蓮池さんの中に、
韓国語という選択肢は普通に生きていれば、なかったのではないだろうか。

今では、韓国の文化を我々日本人に伝えるメッセンジャーとなっているのである。

私は一番好きで一番難しい哲学する犬の詩が「ハリネズミの愛情」である。

ここからじっとながめています。
あなたに痛みをあたえないように、
おたがいが、おたがいの刺に傷つかないように、
ぼくは、あなたと
のあいだに距離をおくんです。

好きだなんて言いません。
でもすきだからそうするのです。

ただじっとここからあなたを見つめています。
あなたに痛みをあたえないように・・・。


今日、ハルに電話した。
今週の木曜日に迎えに行くことにした。
きっと「ただいま~」と帰ってくる。

「行ってきま~す」と帰っていったのだから・・。
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