復興カフェ スクラム

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復興バブル?

2012-01-16 16:29:41 | 日記
<東日本大震災>復興バブルに困惑 工事費上昇1.5倍
毎日新聞 1月16日(月)13時30分配信


 東日本大震災の被災地で建設工事費が高騰し、復興の足かせになっている。建設バブルで人件費や資材費が上昇、複数の建設業界関係者が「工事費は震災前の水準の1.5倍になった」と話す。被災した中小企業が、工場再建を図ろうとして計画以上に膨らんだ自己負担に苦しむ一方で、公共工事は震災前と同水準の価格で推移しているため、建設業者が敬遠している。被災地では「これでは復興が進まない」と危惧する声が強まっている。

 宮城県南三陸町で水産加工業を営む会社社長は津波で工場を失い、鉄骨2階建ての新工場建設を決めた。設計会社と相談し、建築費を2億9000万円と見込み、昨年6月、うち75%の補助を受けられる県の制度に申請して認められた。

 ところが、同10月に建設業者3社に見積もりを頼んだところ、全社から4億円以上を提示された。業者からは「震災で人件費や資材価格が高騰している」と説明された。建材節約などで3億3000万円に圧縮したが、「高騰分」の4000万円は補助対象外で、自己負担となる。「ある程度の高騰は予想していたが、ここまでとは……。再建に二の足を踏む業者もあるはずだ」と社長は嘆く。補助が決まったのに建設費高騰などで「着工を延期したい」などと県に相談してくる被災企業もあるほどだ。

 同県内の建設業者によると、建材やトラックのチャーター代、作業員の賃金など建設にかかわる「人」「もの」すべてが値上がりし、集めるのに苦労しているという。ある業者は「建設費を決め、工事をする数カ月の間にも価格高騰は進む。その分うちがかぶらざるを得ない。高騰が急すぎる」と話し、建設業者側も困惑している。

 一方、宮城県の公共工事は昨年4~11月に入札した建設工事591件のうち137件が応募がないなどの理由で不成立だった。不成立の割合は23%で前年度(3%)から大幅に上昇し、工事費が民間発注より低水準に抑えられていることも背景にあるという。

 小規模工事ほど応札がなく、県は複数工事を組み合わせて大規模にしたり、参加資格を広げたりして入札を繰り返している。4回目でも決まらなければ特例として随意契約に切り替えることも決めた。

 このままだと被災地の復旧に支障をきたす恐れもあり、県契約課は「工事急増で建設会社も混乱している。多くの業者が入札に参入しやすくなるよう規制緩和を国にも求めていきたい」としている。




東北は空前の建設好景気――蠢くゼネコン、復興バブルの足音
東洋経済オンライン 2011年12月1日(木)10時56分配信


「6月から新車の販売が動き出した。多かったのは、土建屋、コンクリ屋、ゼネコンの下請け。7~8月にはこれら中小企業のオーナーが買い始めている。東日本大震災の復興需要で仕事が入り、ずいぶんカネ回りがいい。節税対策も兼ねているようだ」。仙台市内にある自動車ディーラーの支店長は熱く語る。

 輸入車販売最大手のヤナセ。仙台支店の販売は、2011年9月期の上期が49台、下期が現時点で104台だった。10年9月期が上期46台、下期63台だったのを考えると、いかに前下期から膨らんだかがわかるだろう。グループの他の拠点と比べても伸び率は最高だ。売れ筋は1台500万円前後で、ボリュームゾーンのベンツ「C」クラスだという。

 自動車だけではない。仙台三越は8~10月、高額品の販売金額が1・5倍から、モノによっては3倍もハネ上がった。5月から前年実績を上回り、結婚式や銀婚式などのメモリアル・ジュエリーを求める“絆消費”は目立っていたが、夏以降は特に動きが顕著だ。同じ市内の百貨店、さくら野や藤崎でも、高額品の販売は好調に推移している。

 日本百貨店協会によれば、仙台地区の10月の売上高は前年同月比9・7%増と、5月から6カ月連続プラスだ。美術・宝飾・貴金属に限っても6.5%で、「大震災後の生活が落ち着き、ぜいたく品に目が向いてきた」(さくら野百貨店幹部)。全国では10月が0.5%減だからやはり際立つ。ある宝飾製造品卸は「富裕層は店頭ではおおっぴらに買わない。だが外商ルートが中心の展示会では100万円以上の品を買っていく」と打ち明けた。

 一説には、旺盛な消費には「義捐金や保険金が充てられているのでは」との指摘もあるが、定かではない。むしろ目立つのは、復興に伴う建築・土木や産廃など、本業が儲かっている業者だ。被災地といっても一律でなく、津波が襲った沿岸部とは対照的に、好況なのはインフラ復旧の早かった都市部である。仙台市内のホテルは目下、建設関係などの長期滞在者でフル稼働が続く。

 「特に仙台は完全にバブル。水商売のお姉さん方は手が回らず、休む暇もないと悲鳴を上げている」。大震災から半年後の9月、被災地を訪ねたある消費コンサルタントは、その光景に自分の目を疑った。

■「ガレキ」「原発」「除染」、 ゼネコンが得られる果実

 ところ変わって東京・永田町。

 11月21日、11年度第3次補正予算案がやっと成立した。歳出総額は12兆1025億円と、リーマンショック後の09年度第1次補正に次ぐ規模だ。このうち大震災の復興経費は、年金財源への補填をのぞく、9兆2438億円に上る(表参照)。

 ここから業界の受注対象になる金額は、ざっと6兆円と推測される。「復興はガレキの片付け、原発補強、土壌汚染処理が三本柱」(水谷敏也・三菱UFJモルガン・スタンレー証券アナリスト)。他の公共工事と違い、復興関連は業者の言い値で支払われる例も目立ち、価格競争に陥るリスクも比較的少ないという。

 実際に公共事業は東北地方から動き出している。5月の受注は宮城県が前年同月比78%増、福島県が23%増。東北全体でも6月にはプラスに転じた。

 復興事業の三本柱で、最も早く着手されたのがガレキ処理だ。7月から業者の選定が始まり、宮城県の石巻ブロックでは2000億円近い計画が始動。いずれもメインで選ばれたのは鹿島などスーパーゼネコンだった。基本は地元業者優先だが、膨大なガレキを分別し、焼却処理やリサイクル、搬出入まで考えれば、「調整力ある超大手でないと務まらない」(川嶋宏樹・SMBC日興証券アナリスト)。

 「われわれがメインで受注した石巻の分は916億円ある」。11月10日の中間決算発表で、鹿島の山内秀幸・常務執行役員は説明した。鹿島は12年3月期の受注高(単体)について、700億円増の1兆1350億円に上積み。東北地方に限ると上期は前期比6.4倍だ。

 鹿島に限らない。スーパーゼネコン5社(鹿島・清水建設・大成建設・大林組・竹中工務店)のうち、今期は4社が営業増益見込み。21%増益を見込む大林組も、「期末に閉めれば想定通り」と白石達社長は自信を隠さない。自動車や電機が軒並み総崩れの中、ゼネコンは健闘しているといっていい。

 業界の主要指標である建設投資も上向いてきた。1992年度の84兆円をピークに、10年度は41兆円まで半減。それが11年度は44.6兆円、12年度も45.9兆円と2年連続増の見込みだ(建設経済研究所調べ)。「第3次補正で足りなければ、12年度予算は結構な額になりうる」(丸谷浩明・同研究所研究理事)。高台移転で人工地盤を造るようになれば、膨大な土木工事も必要で、こうした“カンフル剤”が各社を潤すのは間違いない。

■震災で目覚めた天災需要、カンフル剤はいつまで効く

 これまで建設業界は文字通り、瀕死に喘いでいた。09年に準大手のフジタが米ゴールドマン・サックスの傘下に入るなど、かつての“危機モード”は脱したものの、それも市場に合わせてリストラを進めて縮小均衡を保ってきたに過ぎない。

 その代償として、建設業の許可業者数は60万社から49万社へ、就業者数は685万人から498万人まで減少。相次ぐ談合事件に加え、いわゆる3K(きつい・汚い・危険)のイメージ悪化から、若年層が就職を敬遠し、現場では高齢化も進んだ。いまや3人に1人が55歳以上だ。

 だが、幸か不幸か、大震災が風向きを変えるかもしれない。

 地震や津波による未曾有の被害は、防災への意識を日本中に浸透させた。液状化対策から防潮堤の建設まで、「いざという時」の備えは改めて注目されている。高度成長期に造られた道路や橋が老朽化を迎え、維持・更新の投資も必要性を増す。「今後は全国的に防災機能の強化が高まろう」(有馬長郎・日本建設業連合会事務総長)。

 ただ業界の構造改革が簡単でないのもまた事実。公共事業の低入札に見直しの機運が上がるほど、叩き合いの体質は課題になっている。ボリューム自体も減り、11年度予算では復興財源を確保するため、当初5%の執行留保がかけられた(10月に解除)。「西日本では予算が止められたことで『なぜ東北だけ優先するのか』と本音もあった」(業界関係者)。官需に頼る地方の景気は悪いままで、東北と東北以外の格差も窺える。

 建築中心の民需も甘くない。東京駅周辺では大規模再開発が進行中だが、デベロッパーからの条件は厳しく、請け負うゼネコンにとって、決して採算はよくない。それでも、「シンボリックな超高層ビルは名誉だから獲る。儲からなくてもやめられない」と、清水建設の幹部は苦笑いする。

 ここ20年近く、雌伏していたゼネコン各社。果たして復興バブルは本物か。それとも徒花か。

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