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since2004~PANTA、頭脳警察をメインに音楽のこと。開設から来年2023年で19年目になります。

『地図にない国からのシュート』~サッカー・パレスチナ代表の闘い~

2005年02月19日 | レビュー
地図にない国からのシュート-サッカー・パレスチナ代表の闘い-

岩波書店

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●「1998年、日本初出場で沸いたフランスでのワールドカップ直前に、例外の国がひとつ増えた。
パレスチナだった。」

世界じゅうの国々の数って?実際のところはいくつあるのでしょうか?私は、もともと学生時代から地理は苦手で、方向音痴で、地図もうまく読めないですし(笑)

世界史は、嫌いという訳でもなかったでしたが、特別に好きというほどでもなかったように思います。ただ、中学の頃?の先生が、面白い授業の仕方をしてくれていて、その頃のその時期の世界史は確か、点数良かったような気がします。
やはり、なんでも、興味が持てるかどうか?どのようにして、興味を呼び込んでくれるか?

いきなり、余談になりました。
でも、勉強の中では国語ぐらいしか取り得のなかった私(笑)
世界史も、特別自ら勉強に励んでいた訳でもないまま、こんな齢(よわい)になりました。(^^ゞ
世界情勢にしても、新聞の記事とネットのニュースサイトで、おおまかに読み流す程度です。

そして、今回この本を手にして。
「地図にない国」当然、このタイトルには、昔から愛着はあります!!
大好きなPANTAの曲名ですから。

しかし、果たして、「地図にない国」って、どのぐらい存在しているの?
そもそも、子供の頃は、図鑑やら何やらの付録にひととおり国旗がカラーで掲載されているようなのがあって、これが世界の国旗だよ!!って言われて、ふーん。世界の国は、全部でこれだけなのか?
だなんて、それ以外には、国も国旗も存在しないと思い込んでいました。

まあ、多少歳とって、大人になっても、よくわかりませんで(笑)
ときおり、オリンピックで、初めて聞く様な国の名を知ったり。(^_^;)
「〇〇〇って、どこの国のこと?」
「そ、そりゃ、〇〇〇っていう国のことさ」(^_^;)
なんて、おかしな会話をしてしまいます(^^ゞ

オリンピックやワールドカップがあって、メディアで全国、いや全世界に注目されてこそ、確かに、いまさら初めて知る、その名を聞く国も多いです。

世界地図を見ても、地球儀を見ても、たまたま、わが祖国の日本って、実にわかりやすい「島国」ですよね。
だけど、他の国々のそのほとんどは、日本のように島国で、単体の島が、これ、わかりやすく、ひとつの国なのだよ!!という訳にもいかないから、難しいです。

世界地図も、目をこらさないと、ひとつひとつ、どこがどの国で、どこが国境なのかは、すぐには読み取れません(^_^;)

どこから、どこまでが、どこの国?
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「国の存在を認証する国際機関は、いくつもある」
「まず国際連合。(中略)191カ国が加盟している。」
「次に国際オリンピック委員会がある。メンバーとなっているのは200の国と地域」
「ところが、さらに上をいくのがFIFA(国際サッカー連盟)だ。2002年の時点で204ものメンバーがあった」

★「サッカーというスポーツには国連とは異なった"国"の概念があるからだ」

本文によりますと、たとえば、イギリスといっても、ひとつの国ではなく、サッカーというスポーツでは、四つの国の連合した王国である、正式名称「グレートブリテンおよび北国アイルランド連合王国」は、その四つの「国」が別々の国であるということです。

そして、1998年、パレスチナという例外の「国」が国際サッカー連盟に加盟
例外の「国」パレスチナ。

だから、「地図に無い国」なのか
だから、「サッカー」なのか
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この本の冒頭から、私には、かなり勉強になりました。(^^ゞ
さらに、本の冒頭にある地図を見て、パレスチナが「ヨルダン川西岸地区」と「ガザ地区」に分断されていることを知りました。パレスチナなのに、移動にはイスラエルの地を必ず踏まなければならない?分断国家、パレスチナ。

永年続く、「中東問題」

そんな中、「サッカーという例外の"国"の概念から見ていく」という視点でこの本は描かれています。

中東問題を取り扱った著書は、他にも数多いでしょう。あまりに永くも、厳しい問題。

元々、知性も教養も無い私(笑)には、重すぎる問題、おおまかなイスラエル・パレスチナの問題の経緯を知るには、『アドルフに告ぐ』だけで、平凡な主婦の私には充分、という気がしてました。(^^ゞ

でも、この本の視点の中心は、あくまでも「サッカー・パレスチナ代表」でした。
切り口は、あくまでも「サッカー」。こういう観点からの本ならば、私にでも、読める?か・な?(笑)
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度重なる丁寧な取材の元に、冒頭に掲げたように、その経緯や歴史もわかりやすく綴られていました。

●「それぞれの国のサッカー代表の、国という概念を超え、民族自決への果てることのない思い」

著者は、パレスチナという、あまりにも遠い、果てない国に、「単身」で、何十回となく足を運び、そしていったい何人もの現地の人々と会話してきたのでしょうか。

パレスチナ代表チームの監督や選手のみならず、その家族や、ときには、路上で出会った人であり、道端でボールを蹴る子供たちであり、釣り人であり、老婆であり・・・。

・・そこには、あくまでも、平らな視線で、ルポライターらしく、冷静に忠実に、人々の声が伝えられていました。

私が思うに、たとえば、たった一度の渡航、数日(数十日?)程度の取材だけでも、やろうと思えば、今では、この情報網の発達ぶりですから、上手く既存の情報、最新の情報も含めて、関連資料だけの収集に勢力を注ぎ込んで着色すれば、その後は机上だけでも一冊の本は、書こうと思えば書くことも可能だった筈だと思います。

・・・しかし、この本は、違いました。

数年がかりで、その期間、全てを投げ打って、しかも、単身で幾度となく、自分の納得いくまで、自分の足で歩いて、話しかけてきたという「軌跡」がそこにはありました。

だからこそ、読んでいくうちに、なんだか読み手も現地に行けたような気分にまでさせられる程の、現地の風景も描かれていました。
そして、現地の人々の心情も、生身の声も、届きました。

●「われわれパレスチナ人にとっては、メディアの助けが必要なんだ。どんどん取材をして、原稿を書いてくれ。世界中の人に、パレスチナのサッカーのことを伝えてくれ」

・・・著者が取材をした、パレスチナ初代監督、アルゼンチン人のリカルド・カルガッティ氏の言葉でした。

・・・その後、本を読み進めていく中で、著者は、そのカルガッティ氏の「死」を知らされました。(原因は練習中の心筋梗塞とのことでした)

他にも、長く取材していく中で、著者は何人かの死にも遭遇していました。

そして、悪くすれば、著者自らさえも「死」に追いやられる、やもしれないような地に、何故に、単身で何度となく(二十回近くも!?)、足を運べたのでしょうか。。。

・・・ひとつ、やると決めた仕事に妥協を許さない、あくなき「執念」と「情熱」を感じずには居られませんでした。

これは、まさに「入魂」の一冊でした。


イスラエルーパレスチナの問題は、やはり重々しく、深いです。
私が、当初、この問題を、浅く知ったとき、(って、今も深くは知りえてませんが)(^^ゞ

不憫なのは、かつて、ナチの残酷きわまる迫害を受けてきたユダヤ人、そのユダヤ国家のイスラエルが、今はアラブ国家、パレスチナに向けて、それに近いことを仕向けているという事実・・・

その背景には、民族間や宗教や、さまざまなしがらみ、せめぎあいがあるのでしょう。簡単に、どちらがどうとは、私には言えませんが。

子供には、「自分がやられて嫌だ!!と思うことは、人にはしてはいけないよ」「自分が、もし、同じことをされたらどう?どんな気がする?叩かれたら痛いよね?そんなこと、もし自分が人に言われたら、嫌だよね?」そういう風に、教えてきました。

自分たちが、やられて嫌だったことを、辛かったことを、どうして、逆手に繰り返すのでしょう。
「目には目を?」
「ウラミハラサデオクベキカ・・・」
でしょうか?

よく、ドラマや、それこそ現実の中でも、かつて、「いじめ」を受けていた側の子が、逆に立場を逆転させて、「いじめる」側になってしまう、ということも、あります。(-_-;)

そして、さらに、いまや、親も子も無く、先生も生徒もなく、同級生だ友達だと言っていても、虐待やら殺人が横行してしまう世の中ですね。。。

この平和だと思っていた「日本」でさえも。

心が痛みます。

そういう、小さい次元をとっても、殺戮、諍い、争いごとは、絶えませんね・・・

世界情勢に目をやれば、
「我々はテロには屈しない」
「報復は正当な行為だ」
どこかの大統領から、こんな言葉も聞こえてきます・・・・

戦争だ 戦争だ 戦争だ・・・・・・・・

うむむむむ。
しかし、また、例によって、話が横道ですわい(^^ゞ
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話を著書に戻します。

しかし、やはり、この本の中にも、著者も書かれておりました。

「壁を作るイスラエル」
●「差別を受けた経験のある者が、それを他人に強いる。差別がいかに愚かしく呪われるべきものか、民族の歴史として、それを最もわかっているはずの人々が差別する側となる」

「怒りよりも人間の馬鹿馬鹿しさに呆れてしまうしかない」

現地で、肌でそのことを実感している著者の言葉は、重いです・・・・

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●『われわれは可能な限り、国際大会に参加する。そこでわれわれ、パレスチナが「存在」していることを世界に知ってもらわなければならない』

●「とにかくワールドカップに出ることだ。そこでパレスチナの姿を世界に知ってもらう。俺たちはまだまだ闘いつづける」

内戦状況のさ中であろうが、戒厳令がひかれようが、パレスチナの選手たちはボールを蹴る、蹴ろうとすることをやめない・・

パレスチナの「存在」を世界に知ってもらうため

まだ「国」でない「国」が、「国」になれるため

著者の熱意に感銘し、また、パレスチナ代表選手のあくなき姿勢に胸を熱くして本を読み終えました。

いつもながら、まとまりのない駄文で、カテゴリーに、この記事のためにわざわざ「レビュー」なんてコーナーも作ってしまいましたが、あんまり、「レビュー」などと言えるシロモノでもない出来です(^^ゞ

しかし、本当に、良い本を、読ませていただいて、ありがとう。
なかなか、きっかけが無いと、私もいろんなことに、「食わず嫌い」が多いので。(^^ゞ
この本は、ほんと、良かったです。

私のように、「食わず嫌い」している人も、ためしに、ここを読んで、少しは気になっていただけたら、読んでみてくださいね。
ほんと、なかなか、ここまでの本には、出遭えませんよ。



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