隨著風遠行

隨著風遠行

を思デルだ

2017-05-25 12:00:58 | 日記

音羽はヴィーナスという単語に、はっとした。

「ヴィーナス……?ええ、好きな絵の一つです。それは、患者に似ているという事ですか?でも確か、患者は男性ですよね?」

「ああ。二人ともとても美しい兄弟だよ。ドナーになる弟の方は、二十二歳で世界中を飛び回っているモそうだ。最初にドナーとして目の前に現れた時は、驚きのあまり年甲斐もなく息を呑んだ。あれは、言うなれば奇跡の存在だね。初めてモルフォ飲食業 招聘蝶を間近で見たときのように、言葉を失ったよ。」

引っ越して行ったとき、チビのあの子はまだ8歳くらいだった。生まれたてのひよこみたいにほわほわした少ない髪の毛しか生えてなくて、みっともなかった。
顔中そばかすだらけで、アトピーで関節は象の皮膚みたいに硬くなって血がにじんでいた。
音羽は脳内で、目だけは宝石みたいに輝いていた、みにくいあひるの子の成長した姿い浮かべてみたがうまく想像できなかった。

「博士。レシピエントとドナーの名前は?……もしかすると、彼らはわたしの知人かもしれません。確か長い間、原発性の肝臓病の治療をしていたはずです。」

「ああ。難病で治療法がなかったからね。脳死肝移植よりも定着率が良いという事で、兄弟間sculptra 價錢での移植に踏み切ることにしたんだ。日系4世で「ウエダ」という名前だ。」

「ウエダ……上田。そうか……、オスカル、大変だったんだな……。」

年齢を確かめたら、自分より二歳年上で符号があった。このドアの向こうにあっくんがいるのだろうか。高まる期待と興奮に、音羽の胸が跳ねた。
果たして、ぐったりとベッドに横になったのは音羽よりも幾つか上の兄の方だった。力なく視線が、音羽と博士に向けられた。

「オスカル……。」

思わず、懐かしいあだ名が口を付いて出た。

「違~う。彼はそんな名前ではない。日本人は、金髪と黒髪が並ぶといつもその名を口にする。彼は上田厚一郎、わたしの名は、ルシガだ。」

背後からアンドレが語気を荒げて否定する。こちらも変わりはなかったが、看病疲れだろうか。少しやつれて見えた。

「そうでしたね、上田さんでした。日本から来た秋月音羽です。デリンジャー博士と共に執刀チームに入らせていただきます。」

「……知って……る。医者になったことも……、肝臓専門医になったことも……あいつに……聞いた……か、ら。頼んだんだ……。」

少しずつ呼吸を整えながら手を差出し、握手を求めた。美貌の男装の麗人は長い闘病に華欣自由行やつれ、少し黄疸の出た顔すら凄絶に美しかったが、それは花が散る寸前の命の輝きにも見えた。

帰りれになった

2017-05-10 10:58:34 | 日記

「余には、その方等がいるから良い。だが……帝は御所で多くの者に囲まれていても、いつも孤独であった。ご立派な御陵に入られても、またお一人だ……さぞかし寂しかろうな。出来るなら、肥後が供物の人型となって冥府まで供をして差reenex 膠原自生し上げたいと思う。……皆は許してくれるだろうか?」
「殿……?何を……?」
「……戯言……だ……」
「殿―――っ!」

葬儀が終わると、容保は張りつめた糸が切れたように倒れた。

一睡もせず帝の傍に居た容保の病状は重く、脈を取った医師は、これ以上のお役目には就かれまいと首を振った。

「これではとても、御政務は務まりますまい……ひたすら養生していただかねば、お命に係わります。」
「それほどまでに……殿は命を削って御奉公してきたのか。」

胸と鳩尾当たりの鈍い痛みに苦しみ、ぜいぜいと浅い息は荒く、呼吸すらしかねている様子だった。

重臣たちは何とか容保を役目から放ち国許へ帰れるように手を尽くすが、幕府にとって虎の子の容保を手放すはずもない。
将軍慶喜も長州藩の官位復旧建議を理由に、脅したり宥めたり、時には涙を浮かべたりして容保を引き留めた。
慶喜の腹は見えていた。このままでは自分一人が責を負わねばならない、それだけは避けたかった。

長州征伐を履行しなかった幕府は、最後まで責任の所在を明らかにする気はない。
長州藩、寝返った薩摩藩等、討幕派が息を吹き返しつつある今、会津藩に引いてもらってはalmo nature 狗糧困るというのが本音だった。今や幕府が頼みにするのは会津と、容保の弟が養子に入った桑名藩しかいない。

その上、幾多の面倒を押し付けて居ながら、長州が復権してくると、これまでの容保の働きにさえ、居並ぶ幕閣からねぎらいの言葉すらなかった。
江戸からは京で孤軍奮闘する会津藩の姿は見えていなかった。

いつしか尊王攘夷派は名を変え、討幕派となって、じわじわと幕府を追い詰めようとしていた。
容保の帰郷に関し、会津藩では幾つもの条件を提示したが、それでもすぐにお役御免という訳にはいかなかった。
国許へは、容保の様子を知らせる早飛脚が何度も送られ、心配の余り、ついには国家老が会津より上京する。
長年の京都守護職の役目により、疲弊した会津藩の実情を伝え、藩内軍制改革のためにも、是非お戴きたいのですと、必死に帰郷の期日指定を求めたが叶わず、仕方なく養子に迎えた慶喜の弟だけが帰郷することになった。
国許でも、末端に至る藩士までが皆、容保の身を案じていた。

「ずっとお熱が下がらぬらしい。」
「先の帝が薨去されたことで、殿は落胆されたのだろう。ずいぶん、信を得almo nature 狗糧ていたそうだから……。」
「しかし、帰郷を許されぬとは解せぬ。我らの京都でのお役目は、天子様がお隠ことで終わっていると思うのだが。」
「左様。長州も息を吹き返しつつある今、長居は無用と思うが、その方はどう思う?」
「引き際を誤れば、ますます泥沼に足を取られることになるだろうな。幕府のお許しは何故出ないのだろうな。」