隨著風遠行

隨著風遠行

かな初雪に

2017-02-27 12:16:06 | 日記


「こうやって捕まることは考えなかったのかい?捕まってしまったら、お隣のお兄さんと契る前に、ぼろぼろにされちまうだろうに、そんなことも判らなかったのかい。まあ、それでもお前が骸(むくろ)になる前に捕まって良かったよ。」

初雪は深々と頭を下げた。
楼主との約束をたがえた以上、何らかの詫びを入れなければならないとも判っていた。だが、足抜けdermes 脫毛の厳しい折檻を受ける位なら、いっそこのまま死んでしまった方が幸せかもしれない。

よその郭では足抜け男女郎(おとこえし)に対する折檻は熾烈を極め、時には命を落とすこともあった。
子供の歌う童謡「かごめ かごめ」の本当の意味を知ってしまったら、一見華や世界に見える色町に広がる闇に気が付くだろう。
籠の中に固く閉じ込められて、ひどい折檻を受ける。子供のざれ歌は、的確に残酷な売春を歌っていた。

*****

「雪華花魁。楼主のお父さんのお言いつけです。その禿を渡して貰いやしょう。」

「あっ。」

初雪はそれから花菱楼の男衆の手で剥かれて、改めて亀甲に縄目を受け、土激光脫毛中心間に転がされた。
手拭いに一つ、結び目をこしらえた枷を咥えさせられたまま倒れ込んでいる横に、雪華太夫はぺたりと座り、楼主に向き直ると土間に額を擦り付けた。

「お父さん。この通りでございんす。どうぞお許しくんなまし。こなたの子の不始末は、兄たるわっちの監督不行き届き。こなたの上は、きちんと言って聞かせんすから、今回ばかりはどうぞ堪忍してやってくんなまし。どうぞこの通り、お願いするでありんす。」

毅然としたその姿は、土間に土下座しようと、打掛が半分脱げかけていようと咲き誇Laser脫毛る白木蓮の潔さにも似て穢れなく美しかった。

盗ま度と会

2017-02-13 15:00:23 | 日記


急いで財布を拾い、逃げ出そうとした涼介の行く手を片割れが阻む。

「子供がそんな大金持ってちゃだめでしょ~?大体、こんな路地裏に入り込むこと自体、盗ってくれっていうようなもんじゃん。」

「そうだよ。気を付けないと、都会には怖い人がいっぱいいるんだからね~。」

「離せよっ!今すぐ電話しなきゃならないんだから。大事な用があるんだよ!」

血相を変えて鞄を取られまいとした涼介だったが、相手は背蘇家興も高く容易く奪われてしまった。

「今時、こんなガラケー持ってるんだ。こんなに金有るんだから、さっさと機種変すりゃいいのに。おっと~。」

男は涼介の生命線の携帯電話をわざと落とすと、かかとで踏みつけた。ぐしゃと潰れて鈍い金属音がする。

「駄目だ!そっちは……お父さんの携帯っ!返せっ!」

「タレこまれちゃ迷惑だしな~。俺等、まだ監察中なんだわ。ごめんね~。」

足元で粉々になる二台の携帯電話を、涼介は呆然自失となり見つめていた。奪われてゆく金よりも、父と二えなくなる気がして、涼介はその場にぺたりとへたり込んだ。男たちが肩を抱いて、涼介の顔を覗き込む。
男たちはその場で蹲ったまま肩を震わせる涼介の財布から、殆どの金を奪って逃げだした。携帯を壊されて、もう母に連絡を取ることもできない。
世界の果てに置いてきぼりにされた迷子のような心細さを抱いて、涼介はその場でひとしきり泣いた。警察には駆け込もうと思わなかった。
あの恐ろしい男には、きっとそんな正義が通用しないと本能が告げる。自分を逃がした後、求はどう蘇家興なっただろう。財布をれたと知って、求がどれほどの目に遭ったかと思うと身体が震え歯が走った。
涼介が月虹と出会ったのは、それからしばらくしてからの事だった。
のろのろと立ち上がった涼介は、路地を出て再び繁華街の大通りに彷徨い出ていた。
行き交う者が時折、涼介の顔を覗き込んでは驚いたように離れた。連れの居るものは訝しげに囁き合った。

釦のとんだシャツの上に羽織った、脱げかけたスエット。殴られて腫れた頬。
幼さの残る貌は、この町に似つかわしくなかった。
それでも、時折誰かが声をかけ、その度に涼介は怯えて身をすくめた。誰を信じていいかもわからない。
奪われた懐の寂しさが、余計に涼介を心細くさせた。
一人ぼっちの涼介の頭上から、太陽が消えてゆく。

*****

恐ろしい毒牙を優しい笑顔の下に隠して、その男は途方に暮れた涼介の目の前尿道炎に忽然と現れた。正面から真っ直ぐに、涼介を見つめた。

「坊や、訳ありかい?昨日からこの辺りをふらふらしてるね。どうしたんだろうって、見て居たんだよ。気になってね。」

「お金……盗られたから……。」