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短編小説〜 送り船 〜 ①

2024-03-14 14:36:00 | 短編小説

ある意味で、ここがリアルなこの世とあの世の狭間と言えるだろう。

 僕と年老いた両親の三人は、係の人が押す棺の乗ったストレッチャーについて行く。

  荘厳で厳かな空間。

 そこにいる誰しもが無口で言葉少なく、深妙な面持ちでいる。

 その中を、まるで凪いだ水面に浮かぶ船の様に、棺は静かに滑らかに、小綺麗な大理石の床の上を進んで行った。

 特に儀式めいた読経やら最後の別れも無く、火葬場の竈の中に棺は収められ、扉は閉められた。

 焼き場に着いて五分で火葬。

 まるでアダルトビデオのタイトルの様な言葉が頭に浮かび、僕は思わず不謹慎にも笑ってしまいそうになった。



一月ほど前、 仕事終わりにスマホを見ると、親父からの着信が六件ほど溜まっていた。

 嫌な予感しかしない。

 親父からの連絡が来る場合は大抵の場合はメールであり、それなりに重要な場合でも一、二回の着信で終わり、後は僕が家に帰ってからでいいかと諦める場合が多い。

 それが前にスマホを確認してから数時間の間に六件である。

 もはや最悪の状況を想定せずにはいられなかった。

 

 「何かあったの?そんな苦い顔をして」

 

 話しかけてきたのは遅番の僕から引き継ぎを受けたばかりで、夜勤の業務に入ったばかりの山田さんだった。

 特別養護老人ホームで介護士になって一年の僕に、勤め始めの頃、指導担当についてくれた五歳上のお姉さんだった。

 

 「嫌な感じで、親父からの何度も着信がありまして……」

 「すぐに折り返しなさいよ」


 山田さんの勧めもあり、気乗りしなかったのだけど折り返すとすぐに親父が出た。


 「なんかあったの?」

 「……あった。良い話じゃない。帰ってきたら話す。今日は帰ってくるんだろ?」


 そこに住んでいるのだから帰るのは当たり前なんだけど、などと思いつつ、すぐに帰ることを伝えて通話を切った。

 

 「どうだったの?なんかあったの?」

 「良い話じゃ無いことがあったそうで、家に帰ったら話すと言って内容は言いませんでした」

 「怖いね。何があったんだろうね。想像つくの?」


 山田さんに言われて思いつく事はいくつかある。

 ■親父が仕事をクビになった。

  親父もすでに七十三歳である。個人事業主の大工であるとは言え、元請けの会社から、もう来なくて良いと言われればそれまでである。転職してまだ一年の僕の手取りは夜勤をして十七万。親父の収入がなければ暮らしていけない。

 ■弟が死んだ。

  糖尿病の持病を持ち、合併症で心不全と網膜剥離を患う二つ下の弟がいる。昨年末にはコロナに感染して入院した。親とは絶縁しているので病院からの電話が僕のところに来て、いろいろ対応しなければならなくなったと言う面倒な弟。その時に医者から最悪の場合を考えて、延命治療をしますかと聞かれ、何もしなくて良いですと私が答えたのに、死にたくは無いので延命治療をお願いしますと医師に伝えたらしい。その弟の持病が悪化して死んだというのは考えられる。




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