大島康紀☆雪月花

Artist COKY.OSHIMA
Painting,Drawing
Arts & Essay

桜の絵とNさんと

2015-11-16 | Essay

桜花大樹(oil/canvas s12)N氏蔵

ある年の個展の初日、会場に入るとNさんご夫妻が待っていてくれた。
いつも個展の案内を楽しみにしていてくださり
奥さまのお気に入りの作をお買い上げいただいた。

早春の枯れ野に花を咲かせる桜の木に魅せられて・・・などとお話にも花が咲いた。
その奥さまが数年前に亡くなられ縁が途切れてしまうかと思いきや
ご主人が引き継いで懇意にしていただいてきた。
そして昨日、ご主人の訃報を知った。
いつも見ない地方紙のお悔やみ欄にNさんの名前があった。
葬儀の会場に駆け付けた時はすでに告別式が済んだ後だった。
喪主の長女さんにお会いすることができ、遅ればせながらお焼香もさせてもらうことができた。

Nさんのお宅には何度かお訪ねしたこともあり
玄関、居間、客間どの部屋にもわが愚作が飾ってあった。
とてもお世話になった恩人なのである。

桜の絵、素敵よね。
個展会場の絵の前で頬を染めながら語っていた奥さまの笑顔が思い浮かぶ。
浅間山麓の山中にアトリエを移したり
「桜のオオシマ」といわれるようになったのもNさんのおかげだと
心より感謝して、ご冥福を祈ります。(合掌)






















青春の一頁

2015-11-02 | Essay
悠然と泳ぐ深海の鮫を描いた青い絵
二十代半ばの作、当時グラフィックデザイナー、イラストレーターの仕事を生業としていた頃、
新宿の外れに小さなアトリエを構えてポスターやカレンダーの仕事に勤しんでいた。
注文仕事に追われる中で唯一描き上げた依頼のない自分仕事。
我が心情は自由に大海を泳ぐ魚のイメージと重なり
シュールリアリズムの影響を受けながら好んで描いたものだった。

この青い鮫の絵が先日手元に帰って来た。
所蔵していただいていた恩人が山のアトリエに絵を届けに訪ねてくださった。
当時クライアントとしてお世話になっていた服部さんとはプライベートのおつきあいもあって
夜の町にもしばしば繰り出した記憶がある。
しばらく疎遠になっていた交流もNetのおかげで再会が叶い昔の話に花を咲かせた。
服部さんがこの絵は作者の元に置いた方が良いだろうというのだ。
絵が邪魔になりましたか、なんてうそぶきながら
数十年の歳月を越えて再会した作は傷一つなく
額装されたまま大事に持っていてくれたのだと思うと嬉しかった。
君の原点でもあるよね。
服部さんの言葉が心に響いた。





やがて、デザインの仕事から徐々に遠ざかり
油絵の心象風景などを中心に描く画家としての一本道を歩いてきた。
画風やモチーフは時代とともに移っても
心の底の理想の世界を追い求めて描く画家であり続けたいと願うばかりだ。