信州小諸、浅間連山の高峰・三方ヶ峰の山麓にある水石集落。
標高1000mの小さな村にあるアトリエ。
古民家を譲り受け、自前でリフォームを始めて十数年。
すっかり田舎暮らしにも慣れて、もはや都会では暮らせない体質になった。
元の家主は農家で酪農を営んでいた。
戦後の開拓期、寝る間も惜しんで土を耕し、牛を飼っていた。
「空に向かって鍬を振る。」「月に向かって土を起こす。」
先人の言葉を聞きながら、この地で空を耕す想いで画業を全うしたい
と、アトリエの屋号を「天耕房」と名付ける。
母屋と牛小屋と納屋のある大きな家だ。
当初は東京と長野を頻繁に往復。夏場のアトリエだった。
初冬のある朝、初めて観る霧氷の銀世界。
この感動が永住のきっかけになった。
母屋の補修が済んで、牛小屋を壊そうか思案していた時、
地元の絵画講座で出会った受講生やら知人が手を貸してくれて
改造リフォームが進み、展示画房ができた。
自然と対峙して暮らす。
究極の風景画は、自然の空気感を表現すること。
自然の花は折らずに、咲いている場所に出向いて描く。
谷川の渓流に住む岩魚を描くために釣りをする。
馬の大きな命の塊りと美しい体形に魅せられ、庭で馬を飼う。
山を描き、花を描き、馬を描く。
すべての暮らしが「CANVAS」の中に塗りこめられる。
風の色を見つめ、土の声を聞きながら・・・。
日々、創作の起点の一歩をあるく。