NPO地球環境・共生ネットワークというEM広報のNPOが、毎月会員に向けて『「善循環の輪」通信』という会誌を発行しています。
そこには各地のEMサークルの活動や様々なEMの効用が紹介されているのですが、今月(平成25年3月19日)発行の第243号の内容がちょっとひどかったので、ここで改めて紹介したいと思います。
今回の243号には、昨年の7月から9月にかけて茨城県鉾田市の小学校で行われた、校庭内の放射線低減化のためのEM散布の結果が報告されていました(→参照PDF)。
そこでは9月14日の測定で、EM散布区と非散布区との間で大きな差が現れ、EM散布の効果が現れたとしてそのデータとグラフが示されています(クリックで拡大)。↓
このデータは鉾田市公式HP内の『災害情報』というページの〔測定結果〕の項目、【平成24年4月から平成24年11月までの測定結果について 】というPDF資料の3ページ目の、地表から1メートルの距離で測定されたデータを基に作成されており、このデータを見る限りでは確かに9月14日はEM散布した該当の学校の値は下がっています。
しかしこの資料をもっと詳しく見てみますと、紹介された小学校以外にも、旭西小学校(0.138→0.129)・旭北小学校(0.156→0.135)・大竹小学校(0.164→0.134)・串挽小学校(0.124→0.107)・上島西小学校(0.114→0.074)など、他にも数多くの小学校の線量が下がっているのが確認できますが、果たしてここは皆、すべてEMを散布していたというのでしょうか。
「善循環の輪通信」の中では、これらのデータは市の教育委員会が測定し、信頼性の高いデータであるとして紹介されています。
しかし同じ鉾田市HP内をよく見てみますと、〔最新情報〕というページには【鉾田市内の学校等の放射線量測定結果について(3/26)】と題して、市が測定した別のデータも掲載されています。
こちらは先のデータより長期間の測定結果が載っていますが、分かりやすく比べられる様に該当小学校のデータを同様に表とグラフで表してみました(単位は上と同様のため省いてます。クリックで拡大)。
先の図と比べて見ると、こちらでは9月には9月14日を挟んで上旬と下旬で2回測定が行われてますが、これらのデータにはそれほど極端な動きは現れていない事が分かります。
ただこちらの放射線量自体は全体的に高めの数値を出していますが、これは測定に使用している機器の違いによるものと思われ、いずれにせよここで問題になっているのは放射線量の推移であって、そこが注目すべき重要なポイントです。
「善循環の輪通信」によりますと、EM散布は7月下旬から9月中旬にかけて実施とありました。しかし市の測定結果ではその間の8月24日に大きな変化がありますが、それはEM散布・非散布とも同様な動きをしているし、それ以後はいったん上がってまた下がるという動きをしていて、EM散布と非散布との極端な変動の差は見受けられません。
9月下旬にEM散布の当間小が下がっていますが、ここはそれまでずっと上がったり下がったりを繰り返しており、また同じEM散布の徳宿小などは逆に高くなっていたりします。
全体的な特徴としては、こちらのデータではEM散布・非散布に関わらず、日が経つにつれて全体的に徐々に線量が下がりつつあるという傾向が見てとれます。
もしEM散布が効果を発揮したと言うのなら、散布を始めた7月頃から目に見えるデータの変化があるはずです。
特に、元々放射線量が低いEM散布の鉾田小(水色線)と、高めでEM非散布の諏訪小(黄色線)の挙動が、放射線量の違いこそあれ、同様の軌道を描いているのに注目です。
これらの事から、9月14日の変化はこれまでのEM散布によるものではなく、気象条件など何らかの要因による一時的なものである可能性が高いと言えます。
放射線量というのは日々一定という訳ではなく、その日その日の天候などによりかなり左右されます。
福島県のデータを見てみても、その日その日ではまるで株価の様に上がったり下がったりを繰り返していて、全体的な推移傾向を俯瞰的に見てみた時に、徐々に減りつつあるという事が分かるのです(→参照)。
ある一時期だけ放射線量の急な変化がある時は、まずは雨や風などの気候条件を考慮してみるべきで、こちらを見てみると鉾田市では、測定日の2日前の9月12日に雨が降った事が分かります。
これが市全体なのか局地的なのかは分かりませんが、他の小学校のデータを見てもこれが何らかの影響を与えているであろう事は容易に想像がつきます。
しかし逆に放射線量が上がっている場所も見られますから、やはりこういうデータは様々な観点から分析する必要があるでしょう。
ちなみに福島県では、気象観測と放射線量を同時に観測する計測器も導入されています(→参照PDF)。
そしてこの資料中には、「これまでの空間線量率の変動は,降水による水の遮蔽効果による空間線量率の減少が顕著に観測された」との記述もあります。
ただこれまで何とか放射線量を下げようとEMを散布した人達にとっては、こういうデータの変化をEMの効果と思い込んでしまうのは理解出来る事でもあります。
このエントリーのタイトルにもある「ひどすぎる」というのは、これらのデータに対する比嘉さんのコメントです(以下引用)。
EMで放射能(セシウム137)が完全に消えることは、これまでの実験でも明らかです。したがって10月以降の数値の上昇は外部からかぶってきた(中国のPM2.5 のように)現象であり、数値が上がってきた場合は、散布を繰り返して対応する必要があります。
EMで放射能が消える事はありません。それはこれまでの実験結果を都合良く解釈していたからに他なりませんし、10月以降の数値上昇の理由については単なるこじつけに過ぎません。
そしてユーザーに対してさらなる散布を繰り返す様アドバイスしていますが、こんなちょっと調べれば分かる様なデータの変化をEMの効果とし、あげくEMで放射能が消えると堂々と述べるなど、これでは効能を宣伝するため都合の良いデータばかりを提示し、その効果を信じ込ませて高額な商品を購入させる悪徳商法と何ら変わらない、という批判を受けても仕方がないほどのひどさと言う他ありません。
善循環の輪通信242号(→PDF)によりますと、今まで代表を務めていた浜渕隆男氏がこの度退任し、新たに比嘉照夫さんが理事長に就任しました。
以前は内容に間違いがあった時などはちゃんと訂正記事を載せたりしていましたが、比嘉さんがここの理事長となり、今後果たしてこの「善循環の輪通信」にはどんな内容が掲載されるのか、今後とも眉に唾してじっくりと拝見させてもらおうと思います。
「セシウムが消える」=「β崩壊して放射線(β線)を出しバリウム137に変わる」以外の現象はありません。
洗い流す、吹き飛ばされるなどの物理的除去を除いて。
酷い云々を言うのであればまずその点を指摘するべきでは?
データや数字以前に、論拠としているモノの性質の認識を違えているのですから。
セシウム137の放射能、乃至セシウム自体が消失するという事はセシウムが崩壊を起こしているということですから、そのEM自体も放射性物質でなければいけません。
この人たちは放射線源をばら撒いているんでしょうか?